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「第一試合……始めッ!」
審判の合図と共に、ガストンさんの流星錘が唸りを上げた。石畳を砕き、砂塵を巻き上げる暴虐の質量。だが、相手はエリートAランク氷結の魔剣士アイガ
「遅い。……『氷河の足枷』」
魔剣が床を叩いた瞬間、ガストンさんの足元が凍りつき、その巨体を固定した。
「う、動けねぇ……っ!」
「チェックメイトだ。野蛮人」
首筋に冷たい魔剣の刃。ガストンは悔しげに拳を握りしめ、「……参った」と絞り出した。
「すまねぇ……。股関節のストレッチが足りなかった……」
「気にするなガストン、お前の大臀筋は最高に輝いていたぞ!」
続く第二試合。バジルさんは、盾騎士ドルドスの鉄壁の防御魔法を前に、なんと愛用のモーニングスターを投げ捨てた。
「馬鹿め、丸腰で何ができる!」
突撃するドルドス。だが、バジルの巨大な掌がその鎧の隙間をガッチリと掴む。
「まずは腰を落として、背筋は真っ直ぐに。腹圧をかけ、脚と腰の連動で一気に引き上げる……これがデッドリフトの基本です!」
「な、何!? 浮い……体が、浮いてええぇぇ!?」
バジルさんは盾騎士の巨体を、重いバーベルを扱うかのように軽々と「クリーン&プル」そのまま脳天から地面に叩き落とす『フィッシャーマンズ・バスター』を炸裂させた!
…けど勝ったはずのバジルさんが膝をついたしまったのです。
「……そこまで! 両者ダウン、引き分け!!」
バジルさんの脇腹には、投げられる瞬間にドルドスが放った短剣が深く突き刺さっていた。昨日の追い込みすぎによる筋肉疲労が、一瞬の隙を生んだのだ。
「……クソ。一敗一分け。……次、ティミ嬢、頼みました…」
バジルさんが血を吐きながらも親指を立てる。
「はい……。……行きます」
私は『ジェットバット(杖)』を握りしめ、舞台へ上がった。
対峙するのは、ミスリルの翼の紅一点。高飛車な天才魔女、リリア。
彼女は私を一瞥し、鼻で笑った。
「ふん、そんな野蛮な棒を持って、魔女を名乗るなんて。その貧相な体、私の魔法で消し飛ばしてあげるわ」
……ムカつく。
何よりムカつくのは、彼女の圧倒的な美貌とスタイル。
私よりも背が高く、魔法使いのくせに引き締まった「くびれ」、そして豊かな「胸」……。
(……許せない。あの女……全然バルクが足りてないじゃない!! そんな華奢な体で魔法が支えられると思ってるの!?)
怒りで視界が赤く染まる。
私は釘バットのグリップを握り直し、腰を深く落とした。加速魔法のスイッチに指をかける。
——お父さん、お母さん。
私は今、魔法への情熱よりも「あの上品なスタイルを粉砕したい」という筋肉の嫉妬に突き動かされています。
やっぱり、私は選択を間違えたのかもしれません……。




