13rep
「第3戦……始めッ!」
審判の声が響くや否や、リリアの超高速の風魔法が私を襲う。
「ほら、無様に踊りなさい!」
(……遅い。見える……見えるよ! 皆の高速スクワットに比べたら、この程度の連弾、止まって見える!)
私は無意識のうちに、最短の動きで風の刃を回避していた。
「な、なによ小娘! 目だけは良かったようね……じゃあこれはどうかしら? 『灼熱炎天』!」
リリアの頭上に作り出される、小さな太陽。まともに喰らえば、塵すら残らない。
「あわわわわわ……あ、あの、今更謝っても遅いですか……?」
「ええ、遅いわよ! 溶けて消えなさい小娘!」
「わ、わーん! ごめんなさいいいぃぃ!ふぎゃっ」
私は逃げようとして、第一試合でガストンさんがボコボコにした床の穴に、見事に躓いた。
かつての私なら、そのまま顔面から転んで終わっていただろう。
だが、今の私は違う。
スクワットで鍛え上げられた脚が、反射的に地面を強く蹴り出した。
私は目を瞑り、半ば自暴自棄になって『加速魔法』を全開にし、ジェットバットを横一閃に振り抜いた!
——グシャッ!!
「ぎっッ〜〜〜ああああぁぁぁぁぁぁ!!?」
鈍い音。そしてリリアの、この世のものとは思えない絶叫が木霊した。
「……うわぁ、エグいな。あれ、折れてるよな?」
「なんか血で見えないけど白いの見えてね?開放骨折じゃねぇか……」
観客席から、敵であるリリアへの同情の声が漏れる。加速魔法による超高速スイングは、彼女の華奢な脚を魔法障壁ごと粉砕していた。
「……勝負あり! 勝者、釘バット……じゃなかった、ティミド・マッソォ!」
「え、勝てたの? やったぁぁ!」
担架で運ばれていくリリアが、涙目になりながら私にずっと中指を立てていたが、勝てば官軍である。
続く決勝戦。
仲間を、そして私を侮辱されたアドニスさんは、もはや一切の加減をしなかった。
開始五秒。ミスリルのリーダー、ミランを爽やかな笑顔で「人間サンドバッグ」へと変え、試合会場を半壊させて圧勝。
「「「勝者、『ゴッドハンズ』!!!」」」
割れんばかりの歓声の中、ギルドマスターが演壇に立った。
「その栄光を讃え、ゴッドハンズを今日からSランクに昇進させる! そして……」
ギルマスの目が、「頼むから、この街を壊さないでくれ」と泣いていた。
「Sランクは大陸の英雄! 今すぐ魔王討伐へ旅立つべし!!」
「「「うおおおおおおお!!!」」」
「ま、ま、ま、魔王討伐!? 冗談ですよね!?」
「さあ、行こうぜ、豆苗! ティミ嬢! モヤシちゃん!魔王軍の新たな筋肉が、俺たちを呼んでるぜ!」
ガストンさんに「巨大な戦利品の袋」と一緒にひっ掴まれ、私はそのまま街の外へと引きずられていった。
——お父さん、お母さん。
私はついに、人類の希望である「Sランク」になってしまいました。
行き先は魔王の城。……でも、魔王よりも隣で「次は何をダンベルにしようか」と相談している三人のほうが、よっぽど魔王に見えます。
やっぱり、私は選択を完全に間違えたのかもしれません。
(第1章・完)




