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暁の水平線  作者: NBCG
本編
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72話 佐波鈴、屋端にて

明海三十九年 9月14日 大浜綴帝國 佐波鈴 屋端泊地 空母煙龍 第一会議室


屋端に到着して数日。


暫しの間、先に言われていた「救助作戦」の作戦概要や詳細を語られることなく、訓練のみを行う日々を過ごしていた。


そんなある日のこと、この会議室に集められた。


「諸君らに作戦の詳細を伝える」


部屋の空気がヒリついた。


「作戦は三日後の〇四〇〇時より開始とされる。本日は全部隊を通した全体の説明を、明日は各部隊、任務ごとの詳細な説明、明後日は作戦前の休養日とする」


会議室は疑問符のついた空気が現れる。


そこで静かに一つ二つ、挙手


「何だ?」


「なぜそこまで事前準備があるんですか?それに休養日まで……。戦時でないので休養日を取れるのは分かりますが、すぐに行動を起こさず、これまでに万全を期すのには何か理由が……?」


「それは……はぁ。後で言おうと思っていたんだが……。まあ、どうせいつか言うことになったから言うか……。それは今回の作戦の帰還率がかなり低くなると見積もられているためだ」


どよめき。


「今回の作戦について、作戦拠点の防衛及び戦闘機行動半径以外に於ける航空機作戦の全てで戦闘機の護衛を付けないという判断を下したためだ」


一体どのような作戦を立てたらそのようなことになってしまうのだろうか。


「他に質問は無いようなので、話を続けるぞ。救難自体は最新鋭攻撃機、星影を以って救難を行う。それは救助対象たるシクロフスキー氏らの所在地に関係がある。彼らは現在、煤羅射と払綿土の国境付近、それも払綿土側の土地に緊急着陸をし、近隣の廃村で過ごしているらしい。彼らをこちら側から助けるには、既存の救難機などに於いては救助が難しいほどの防空設備が備えられている。敵戦闘機などもそうだが、彼らは長い国境を守るため、無人防空装備を設置、設置した地域一帯を飛行禁止区域に指定しているほどだ。だが、攻撃機星影に於いてはこれらを掻い潜ることが可能であると調査の結果示された」


そこで一人、手が挙がり、指される。


「それでは偵察機暉雲では能力不足なのでしょうか?速度は寧ろこちらの方が上ですし、更に暉雲に機銃などを載せれば即席の戦闘機として扱えるのではないのではないのでしょうか?」


「勿論それについても検討された。だが、救難を行う上で完全複座機体である暉雲は適さないであろうという結論に至った。理由として、まず搭乗員が二人、一人の要救助者を載せることを考えると、席が狭く、長距離の移動で負荷が高いということと、二人乗りの機体として設計されているため、飛ぶだけならまだしも、旋回や着陸のことを考えると非常に難しいと想定される。座席のことを考えて操縦士一名のみで飛行する場合は救難時、扉の開閉を要救助者のみに託すこと、搭乗の介助が出来ないこと、一対一になってしまうため、脅迫を受ける可能性がある」


そして司令官は息を整えた。


「それらのことを考えると、救難機としては星影の方が優位であると考えられる。また、救難ではなく現地に於ける航法再参照のため、一機から四機ほど暉雲を同行させることも考えられるが、戦闘機として同行させることは非効率、非合理的であると上層部は考えたようだ。航空機燃料に限りがある以上、現地で充分に迎撃するための時間も取れないだろうし、機銃を備えることは重量の増加による航続距離の低下と、繊細な機体の重量変化による操作の難化が考えられ、機銃搭載で得られる利点と欠点は欠点の方が大きいと捉え、このような作戦が考えられた、ということだ」


「救難時についての質問です」


司令官は掌で指し、質問を拾った。


「救難時、扉の開閉と搭乗の介助について―――」


「ああ、そのことか。説明が足りなかったな、済まない。ネ式の搭載機はどうしても重量が出てしまうため、まずネ式の研究がなされているかどうか分からないくらいの払綿土では星影や暉雲の重量に耐え得る飛行場施設はないと考えられる。……というか、あんな山の中ではその研究施設でもなければ無いだろうからな。そのため、極低空低速飛行、若しくは接地滑走を行い救助することが現実的であるとされた。そのため、扉の開閉や搭乗の介助を搭乗者が行う方が安全性、確実性が高いと考えられた。他には?」


手を挙げ、質問していた男は納得したように頷きながら手を下げた。


「続けるぞ。以上の理由で使用する機体は救難機として星影、航法支援のために暉雲が参加するが、この作戦……煤羅射奥地、払綿土上空に到達させる機体はもう一種存在する。空中給油機の碧空だ」


まあ、そうだろうな。


……だが、この距離、碧空で数度給油したくらいで届くのだろうか?


司令官は続けた。


「そして、この機体がこの作戦の要だ。今回の作戦に於いて、参加させる碧空の数は参加する星影、暉雲のおよそ五倍から十倍ほどの機体数が投入されることとなる」


その言葉に部屋の全員が息を呑み、不思議なほどの静けさがこの空気を色付けた。

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