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暁の水平線  作者: NBCG
本編
76/97

68話 介入

西暦1934年 9月3日 カレロ=フィン王国領海 ギュオラダ半島周辺海域 ウィレム海

パーラメント連邦赤色海軍 北方艦隊


「我々は、帰ることが出来るでしょうか」


「さぁな」


「帰るって言ってくださいよ」


「確証を持って言うことは出来ん」


「士気向上のためにも、多少確証は無くても言っておいてくださいよ……」


「ここで変なことを言ったら、それで“点数”を減らされるやも知れんからな」


「士気向上を怠ることも、その“点数”を減らされるやも知れませんよ」


「退くも退かぬも行き詰まり、か。この艦隊も同じようなものだな」


「とはいえ、この艦隊には最新の戦艦も、帰るための砕氷艦も同行しているじゃないですか。パーラメント連邦海軍が他大国よりも小規模とはいえ、我が国よりも小規模の艦しか無い海軍に対して負けるとは思えません。運悪く被弾して死ななければ、生きて帰ることは出来ると思いますが」


「楽観的だな」


「そうでしょうか?」


「“戦闘”で勝っても、“戦場”で生き残れるとは限らんのさ」


「冬の寒さを言っているのですか?我々だって、その寒さに耐えてこの北方艦隊に配属されたものばかりだと思っていますが」


「あのなぁ……。いくら俺たちが寒さに慣れているからと言って、人間の活動限界ってものがあるだろうが。その限界を超えて活動は出来ないし、その限界になるまでに港に戻れると分かったもんじゃない。お前、砕氷船のことは憶えていても、氷の上をどうやって戻るか、どれほど時間が掛かるかを忘れてるだろ?」


「あっ」


「やはりな」


「砕氷船で氷海を割って帰るには……」


「ああ、とてつもなく時間が掛かるな。それまでに凍え死ぬ乗組員が居てもおかしくはない話だ。それに最近、母港ミハエルスクは国家……それも軍上層部にのみ伝えられている謎の研究が進められていて、我々が帰った時にまだ拘束されずに寮に帰ることが出来るかは分からん」


「何です?謎の研究って」


「俺もよく分からんから謎の研究だ。本当に謎の研究と言うしかない。なにせ、新型の武器の開発なのか、新たな国家管理などの研究なのか、はたまた今までにない概念の仕組みの研究なのかさえ知られていない、ということだ」


「は、はぁ。……って」


男は何かに気づく。


「どうした?」


「……始まったようです。配置につきます」


「あ?あぁ、俺も持ち場に戻るとするか」


もう一人の男は最後の名残惜しさに海に一度目を向ける。


「サンポ級……コルタイネン・モルシアンか……」


遠くの艦影から、艦を識別してから持ち場に戻るのであった。


同日 バンデル国 首都ベアリーン 議会


「……次の議題ですが、カレロ=フィン王国とパーラメント連邦との戦争などについてです。同二国の戦争により、雄州国家群の支援要請が入っています。詳細については資料に記載されていますが、概要のみを語ると、新造船の発注をしたいということが大きく一つ。そしてもう一つ、輸送路の一時的な開放を要求してきています。輸送路に関しては、陸海空問わず、ということらしいです」


「支払いの比率は如何ですかな?今までの国債の比率のままでは、先ほどまでに述べた通り、国家経済の負担が大きい。いくら我が国が敗戦国とは言え、無いものは無いからな。金銀などの鉱物資源とはいかずとも、せめて食料や衣料、インフラの整備などで代替してはもらえんか?」


「国債の比率は今まで通りの要求で、他資産、資源による支払いは基本的に拒否、とのことです」


「こちらにも限界というものがあるのだがな……。これでは、敗戦間際にストライキや革命が起こったときの轍を踏むことになる。実際、政治家は非合法な党軍や民兵を備えなければ別の党団体や市民団体からの攻撃を受けることは現在でも必至で、それらを制限する法は最早形骸化している。国軍の制限も理由の一つであるが、こういった治安悪化が黒い国防軍の蔓延を促していると言えよう」


「……兎も角、話を戻そう。海空の輸送路開放は既に大規模にしている分、今まで以上に開放してもないと見えます。我が国が所有、管理している大型艦船は少ないため問題なく、また空も問題は無いと思われます。しかし、問題は陸路ですね……。既存の列車では国際輸送のために分配できるだけの分配率にはそれこそ限界がある。自動車も、舗装路には限りがあり、輸送量もこれ以上増やすことは難しい……。まあ、大きな問題は……」


「新造船の発注……ですな」


「なんとしても造船所に対して支払う金銭の確保はしなければならない。金額不足を訴え、人員が流出するなんてことなどあってはならない。それが一度でも起これば、それを埋めるために一人当たりの支払い当たりの仕事量が増え、更なる人員の流出を招きかねないからな」


「どうにかしも、陸海空路の開放に国債の返済を充て、金銭的な受領を造船所へ充てられるよう、交渉してみよう」


「お願いします。ついでに、陸路要求に関しては、インフラ整備を対価として請求できるかもまたお願いします」


「善処しよう」


「それでは、その方針とのことで。次の議題ですが、イギンダ連邦の資金投入によって景気と返済の停滞から脱却が行われましたが、資金の投入先が公共事業のみということで、どうにか民間事業にも―――」

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