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暁の水平線  作者: NBCG
本編
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61話 変革

西暦1934年 6月5日 メラシア帝国 コロドコ設計局


「パーラメント連邦がカルロ=フィン王国と戦争をし始めたようですね」


「彼らは私たちや文華民国を警戒して、戦争へ足を踏み出せなかったはずでは?」


「文華民国の方は今、内戦が起こっているらしいからその配慮は無視したのだろうが……我々の方は戦力を軽んじて評価したのか、それとも……」


途中でその言葉を止めた研究員は机の上に出された二枚の設計図に目を向けた。


一枚はある戦闘機を解析して逆算して生み出された設計図、もう一枚はそれを参照して自国で生産できるように、そして自国で優れていた部分を組み込んで再設計した図だ。


「浜綴と我々の間で緊張感を増していると感じた連邦政府、または軍がこちらの方に注目しなくてもいいと判断したんだろう」


「そういう見方もできますね……。実際は、そこまでヒリついた緊張感はないですが、ね」


「こっちの軍部も意見が二分しているからな。浜綴はこちらを明確に敵視して、侵略しようとしているとする意見を持つ者、パーラメント連邦の防波堤としてある程度我々の戦力強化に与しようとしていると考える者」


「正直、私には後者であるような気がします」


「私にもそう感じるよ。だが軍部は全ての可能性を考えなければならんからな」


「軍というのは、難しいものですね。あの後、浜綴は我が国との友好的な条約締結の提案や武器の貸与、共有の話もあったというのに。共有の話もこちら側がほぼ浜綴側の武器を供与されていると言ってもいいものなのに」


「それも含め、文華民国やパーラメント連邦と与して侵攻しようとする戦略だと考えているらしい。特に、眠れる獅子と勢いづく新興国が手を組めば、我らを討ち滅ぼすことも出来ると考えているらしい。あの二国のことを詳しく知っていると、そんなことが起こり得る可能性が低いことは分かるが、今まで雄州を注視し、彼らについての知識が足りない軍人たちが集まっている派閥ではその見方が一般的であると考えられているからな」


「軍が早まった判断をしないといいですが……」


「そうだな。我々も軍に早まった……というか、浜綴に対して硬直した対応をさせないためにもある程度強い機体が出来るように詰めないとな」


「Кд-19……ですか……。ある程度は完成が見えてきましたが、複雑な気持ちです。我々の今までの努力が足りなかったと自分が担当した設計部分に言われているようで……」


「そう感傷的になっても仕方ないさ。素直にいいものを作れたことを喜んでおけ。それが無理なら酒でも飲んで明日には忘れてしまうことだ。その気なら、俺も酒場に行くが……どうする?」


「勿論行きます。呑まなきゃやってられませんよ」


「そうこないとな」


同月17日 大浜綴帝國 浜綴航空技術研究所 専用飛行場


「あれが制式化された、新型攻撃機、『星影』ですか」


「量産型……それも低率量産型でもない、本当の初期生産型、というものですが」


「戦闘機としても開発できたら良かったのですが……」


「機体がまだ新型の発動機に耐え得るものではないというのと、燃費の問題から局所防空用……それも一撃離脱のみの戦法以外が現在とれませんからね……。その戦法なら、噴式試験機、鏡水を戦闘機とした方が有用とさえ考えられていますから」


「そちらも是非に頑張っていただきたいものです。実験機以外に偵察機と攻撃機が出来ただけでも取り敢えずは良しとしましょう。文華民国やパーラメント連邦、若しくは団州か伊銀田あたりがこちらに銃口を向ける前に完成さえすれば……。そういえば、攻撃機や偵察機といっても、航続距離の問題があるのでは?特に攻撃機なんかは、重装備で飛ぶこと自体ができても、燃料の重さを抜いてしか飛べなくなるという話だったのでは?」


「それについては、離陸後に空中給油という方法で解決をするということに決まりました」


「空中給油?」


「はい。空中で給油させるという考え方です。今までのレシプロ発動機なら燃費のことで宮中給油する必要はないと考えられてきましたが、此度の問題から新たにそういった機体を作る必要があるのでは、と考えまして」


「それも……、例の発動機の機体を用いて?」


「いえ、レシプロ発動機で」


「速度は足りるのか?」


「浮蘭詩王国の航空機開発に携わるPernetという企業とこちらの企業が合同で開発している、『星影』に搭載される機構とはまた別の機構がそれなりの速度……少なくとも『星影』の巡航速度をだせるため、そちらで行う予定です」


「その速度が出せるなら、そちらの機構でも良かったのではないかね?」


「いえ……そちらはレシプロ方式ですので出せる出力には限界が見えてますし、なにより整備が難しいので……。『星影』の発動機と同方式での空中給油機の開発は、その発動機が安定して、尚且つ燃費よく巡航できるようになってから、ということになりますね。まあ、そちらの機構はオートジャイロやまた別の研究中の航空機に応用できるかも、と期待されてはいますが、未だその見通しは立っていません」


「そうか……なら『星影』ともう一つ……、偵察機の……確か……」


「『暉雲』ですね」


「おお、そうだった。取り敢えず、それらの戦力化を速やかにして欲しいものだな」


「ええ、我々もより一層努力してまいります」

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