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暁の水平線  作者: NBCG
本編
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52話 極夜、未だ明けず

西暦1934年 1月1日 メラシア帝国 マダガン沿岸部 上空


新型機のロールアウト式典の展示飛行中に緊急招集と迎撃。


敵はメラシアの航空機よりも性能が上回る航空機を運用する、浜綴という国だ。


目下、海上は旧式艦艇や哨戒艇が出航できるように煙を立ち上らせている。


直線的に来ているとするのならばもう間に合わないのかもしれないが、何もしないよりかはマシだろう。


そしてこちらの目の前には、いつかの情報で見た気がする、浜綴の攻撃機である気がする。


若干、違うように見えるのは見間違えなのだろうか。


確か浜綴語で“星霜”という意味を持っていたという話だ。


直訳した意味であるため、“星の霜”というのは意訳するとどういう意味があるのかは分からないが、浜綴の攻撃機には星関連の文字が使われているらしいため、星にまつわる意味なのだろう。


その攻撃機に向け、照準を合わせる。


「今は無理か……」


位置はほぼ、ねじれの位置。


それもこちらが見上げるように向かい合っているという状態だ。


狙ってもすぐに照準器の外へ行ってしまう。


「後ろから狙う!ついて来い!」


『『了解!』』


浜綴の攻撃機や爆撃機は基本、前方機銃は固定式で、後方機銃は旋回式であるため、敵の弾幕を考えると正面からやり合うのが安全性は高い。


しかし、やはり戦術機動を考えると後ろを取った方が撃ちやすいというのはある。


それに今は、正面からの射撃位置を逃したという状況でもあった。


だからすぐに上昇するように、宙返りの要領で方向転換を行う。


浜綴の攻撃機もこちらの意図を理解してか旋回し、逃げるように方向転換している。


「逃がすかっ!」


戦闘機と攻撃機。


どちらの旋回半径が短いかなど、問うまでもない。


射程圏内。


「―――ッ!」


カチッ。


ズガガガガンッ!!!


曳光弾が空の闇を切り裂く。


「チッ……」


しかし、逃げる攻撃機は機首を下げ、その位置エネルギーを進む力に変えて逃げ足を早めた。


射撃は恐らく当たらなかったが、次は当てられると意気込んだ。


こちらは上方に位置し、攻撃機は下だ。


比較的優位な位置で、狙いやすい。


攻撃機は先ほど逃げるために高度を下げたが、戦術のマージンを考えるに、これ以上高度を下げる逃げ方はしないだろう。


『隊長!こちらの機体が追えません!早すぎます!』


『隊長、指示を!』


暫くKd-17で最高速を維持するような速度で飛んでいたため、Kd-14(Кд-14)を駆る部下がこちらに指示を請うてきた。


「降下しながら速度を稼いで追え!少しは自分の頭で考えろ!」


『す、すいません!』


『了解しました』


部下を直線的に追わせ、攻撃機の目をそちらに引き付けさせる。


「このあたりで……これでいいか……」


体内時計で距離を測り、速度計と高度計で答え合わせをする。


「よっ……と」


機体をロールさせて反転し、微かに見える攻撃機に目を向ける。


「……今だ」


海面を頭上にして、そのまま桿をこちらに引いて、機体を逆落としにさせた。


「……」


頭に血が昇っているが、未だ冷静を保っている。


そして、引き金を引いた。


―――。


「……また失敗した、クソッ!」


こちらが撃つと、まるでブレるように攻撃機が流れ、弾が外れた。


攻撃機の方は、一糸乱れぬ編隊飛行で回避した。


機体をなんとか戻し、海面に機体をぶつけないように操縦桿を目一杯引いた。


あたらなかった攻撃機を目の前にして、スロットルも全開に。


乱れ狂う重力とエンジンの加速から、最後は背中からその両方の力を浴びた。


頭がおかしくなりそうだったが、敵を落とすという執念で、それらに必死に堪えた。


「もうすこし……もうすこし……」


機体が出せる最大出力を出し、上昇しながら加速する。


「……そ、んな……」


狙っていると攻撃機も機首を上げて上昇を始め、また加速もしたようだった。


「間に……合わない……」


機体の出力の差。


それを如実に実感させられる。


こちらは先ほどロールアウトしたばかりの戦闘機。


飛行機の技術を先んじられているとはいえ、「大国」の歴史として考えれば新興国に類する国の攻撃機だ。


それが、このザマ。


“飛行機の技術を先んじられている”ということが、我が国と浜綴の間にどれほどの距離があるのか。


先ほどの戦闘機動のせいか、この事実を受け止めてしまったせいか、頭がクラクラするようだった。


「敵機、逃げられた。逃走速度と追尾速度から追尾不可と判断。これにより、敵戦力の撃退に成功したと判断する。……帰投する」


脱力し、倦怠感のある頭と体からなとか力を引き出して、声を出した。


『『了解』』


無線から帰ってくる声に、疲労しているような印象はなかった。


前世代機を駆る2人は、その機体性能から最新鋭機を扱うに堪える体力を使う必要はないため、そのための疲労はないのだろう。


彼らの機体では私が感じる苦痛を味わわないことに、多少の苛立ちと、自らへのやるせなさをひしひしと感じてしまうのだった。


そのやるせなさの一部は、国家が背負うはずのものであったはずであるのに。

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