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暁の水平線  作者: NBCG
本編
42/97

38話 Hunter Killer

明海三十八年 8月31日 高砂島 高南飛行場 海軍庁舎 会議室


あの「第七柑子丸撃沈事件」から三日、事態は急変した。


あの事件中に実戦を宣言してしまったことと、生存者が多数居たせいで、試製哨戒機海邦の秘密は少なくとも高砂に駐留する海軍内では公然のものとなってしまった。


そして、哨戒機海邦のそもそもの欠点が明るみになった。


それは発電機の電力不足という問題と、搭載爆弾の少なさという問題。


そしてそれらを補うことの必要性が出てきた。


また副次的な問題として、機体の問題を解決する策自体は考えられたが、それを実行するには俺たちの“階級”が足りないらしい。


ついでに解決策を実行するにあたって、稼働機体が増えるため、それらを纏めるための司令偵察機の導入が決定されたようだった。


第七柑子丸が航行していた航路は浜綴にとって、雄州・伊州方面の貿易に於いて非常に重要な航路であり、今回の事件の他にあった沈没・行方不明事件も関連があるとみられ、多少北側や南側を回る航路を取ったとして、大した解決策にはならない。


その為、この作戦は決して下がることのないものであり、多少の機密が先行して洩れることはこの際問題とはされず、これらの解決策がたった三日で解決に向かって海軍全体が動き出した。


まず初めに昨日、全員この実験の功績という理由を付けられ昇格した。


因みに琴海隊も謹慎処分としてのあらゆる事項が取り払われることとなった。


仕事の内容としては現状とほぼ変わらないらしいが。


さて、海軍内で哨戒機海邦の情報がある程度漏洩しても良いと考え、海邦の発電機の電力不足という問題と、搭載爆弾の少なさという問題という欠点を解消する方法とは。


その答えは簡単だった。


哨戒機海邦には発電装置を更に搭載して長時間かつ高出力の探知を可能とし、爆撃自体は他爆撃機へと役割を移された。


哨戒機海邦は完全に探知をするのみの役割を担う機体となった。


これからの作戦で行われるのは、まず俺たちが対象となる海域で広域に磁気探知機によって潜水艦の位置を司令偵察機に伝える。


司令偵察機はその情報を鑑みて、俺たち哨戒機部隊が次にどこを調べればいいかを伝えるのか、それとも潜水艦の位置を特定し待機している爆撃部隊にそれが伝えられて対潜爆撃が伝えられる、という作戦となった。


この作戦に駆り出される機体は、司令偵察機鱗雲一機、哨戒機海邦四機、急降下爆撃を行える陸上爆撃機、大峯一六機。そしてその護衛となる戦闘機涼風二四機。


そこまで広くもない高南飛行場に司令偵察機とその護衛機以外の機体が集結しており、民間機の代用として運行されていた便は更に縮小され、連絡便が二週間に往復一便ずつ、輸送機が一週間に往復一便ずつ、輸送機に至っては場合によっては軍民兼用という状態だった。


そんな期待が集まった高南飛行場は狭く、五月蠅かった。


全ての機が着陸した後も、それらを管理整備する人間の声がいつもよりも多いからである。


「諸君、よく来てくれた」


基地司令が作戦の概要を改めて説明し、新たに来た搭乗員たちとの認識を共有する。


「本日より、作戦を実行する。今まで作戦に参加していた者も続けて急で休みなしだが、引き続き頑張ってくれ」


“今までの作戦”、か……。


やはり“アレ”は演習などではなく、作戦だったのか。


今となっては、隠す必要もない上、新しく来た搭乗員の中にはこの状況を知らない者もいるはずであるためそう言っているのだろうが。


第七柑子丸襲撃事件を受け、多くの民間商船は海軍の護衛を付けることになり、なるべく対潜を行うこととなった。


また、海軍の輸送艦を用いて民間輸送の肩代わりも行われることになった。


このことによって、航路上の殆どを海軍の監視下に置くことができるようになった。


少なくとも、輸送を行う船舶について何かがあった場合は、海軍がすぐにでも出動できるようにしてある。


「それでは、各位、出撃!」


そしてその連絡網に、勿論俺たちも組み込まれており、それを構築するために、飛び立つのであった。


高砂島南東部側 太平洋 上空


「とはいえ……」


第七柑子丸を撃沈した連中の尻尾はそうそう掴めそうにない。


もしかしたら、先の第七柑子丸撃沈事件の際に迎撃として落とした爆弾の明確に気づかれ、それを警戒して出てこないのかもしれない。


「どうか……、しましたか?」


「いや、なんでもない。独り言だ」


葵に俺の独り言が聞こえてしまったのか、聞き返されてしまった。


哨戒機海邦の試験飛行に入って以来、ほぼほぼ休みなしで出ている。


疲れが出て、なんでもない独り言が出てしまうのかもしれない。


あまり他の搭乗員の集中力を削ぐようなことは避けなければ。


そう思い、探知席である横の席の方を見ると、葵と目があった。


「ん?……何?」


「いや……えーと……なんでもない、です」


「あぁ……?」


葵も集中力が切れ始めているのだろうか。


兎も角、改めて気を引き締め直さないとな。


そう思い、操縦桿を強く握りしめるのであった。

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