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暁の水平線  作者: NBCG
本編
30/97

27話 終結の足音

明海三十八年 6月13日 文華民国本土 某所 文華民国陸軍


「なあ、こんな噂話、知ってるか?」


「なんだよいきなり」


「敵の新型機と、こっちの新型機の話」


「……なんだそれ?こっちの新型機は……まあ、なんとなく聞いたことはあるけどよ」


「その様子だと、どちらも詳しくは知らないって感じだな?」


「ああ、そうだよ」


「知ってる方から言うけどよ、そっちは新型の戦闘機って話だ」


「……大体予想通りだな。性能は?」


「機体設計の新たな知見ってヤツを得たみたいで、虎威よりも機動力、航続力が段違いらしいな」


「他は?」


「それは……俺にも分からん」


「なんだよそれ……」


「俺も暫くそれらしい奴らからの話は最近聞いてなくてよ。ここに居てばっかりだし」


「じゃあ、敵の新型機とやらはどうなんだ?」


「そっちは現場からの話が回って来るからより詳しい話がある」


「ほう」


「まずそいつは大型の機体で、浜綴の特殊な偵察機ぐらいあるんだとよ」


「それ、前に噂になってた、戦略爆撃機ってやつか?」


「いや、どうやら違うらしい。前に噂になってた方は、ただ単に長距離移動出来て爆弾を大量に載せられる、そして軍事工場や湾港を破壊するという目的を持たせただけの、大型で普通の爆撃機らしい。けど今噂になっている敵の新型機は、前線の戦車や部隊を砲撃で攻撃してくるらしい。あと何故か左周り……、反時計回りで」


「砲撃でって……、おいおい、それじゃあ空から狙撃してるってことになるんじゃねえか?それも……、大砲だぞ?」


「それを機体の下に付けてるって話だ。大砲について、それ以上の詳しい話は知らんが、な。まあ先の戦略爆撃機が話だけなのと比べて、こっちは見たことがあるって話だからな。気が抜けん」


「気が抜けんって……。俺たちがいるのは地方都市とは言え、重要都市の真ん前だぜ?流石にそんな馬鹿でかくて鈍重そうな機体が来るとは思えんがなぁ」


「話によると、ある程度制空権が取られたところに現れるって話だ」


「なら、ここは大丈夫そうだな。近くの航空基地は無事だし、ちゃんとこちらの戦闘機も……って、なんだ?騒がしくなってきたな?」


「おいおいアレ見ろ!浜綴の戦闘機だ!」


「こんなところにまで……!?それもあんなに大群でかよ!?」


「おい……アレは……」


「ウソだろ……」


二人が駄弁っている、その数十メートル先の戦車が、大爆発を引き起こした。


「逃げろ!」


「おいっ!本気か!?」


「周り見ろ!こっちの戦闘機も墜ちてる!今逃げねえと死ぬぞ!お前が逃げなくても俺は逃げるぜ!」


「ま、待てよ!俺を置いていくな!」


その場にいた二人が逃げ出したのを見て、他の民国陸軍兵士もたちまち逃げ出した。


同地域 上空


『民国軍、逃げ出した。瑞守隊、攻撃中止』


「了解した。瑞守隊各機、攻撃中止」


『『了解』』


『瑞守隊へ。この参照点より北西の距離、5000のところに未だ稼働中の軍用飛行場あり。先に爆撃は行われていたが、被害が軽微だったのか、急速に復旧し、離陸を試みている機体ありとのこと。攻撃し、その機能を奪え』


「瑞守より鷹見、制空権は?」


『こちらにある。だが、未だ活動中の敵戦闘機あり。気を付けろ』


「……了解。はぁ……」


思わずため息が出てしまう。


『君たちには悪いが、ここで進行速度を上げて民国の重要都市に対する攻撃の懸念を抱かせなければ、早期の戦争終結は望めないと上層部は見たようだ』


どうやら、先の溜め息を聞かれてしまっていたらしい。


これも“政治的判断”とか、“政治的配慮”とかいうヤツなのだろうな。


だが、上層部が戦争終結へ向けて考えがあるらしいということだけ、良いことが分かったと思っておこう。


「瑞守隊、陸軍の爆撃機が攻撃漏れしたらしい敵飛行場を攻略するぞ。ついてこい」


『『了解』』


暫くの間、敵地飛行場へ向け、迫撃砲の弾を撃ち続けた。


「ん?アレは……なんだ?」


目の前には民国航空機の紋章を付けた、見慣れない航空機がいた。


「敵新型機か……?別のところから来たのか?」


「報告するか?」


「ああ。中野、頼む」


「了解した。こちら瑞守一番機、敵新型機体と見られる機体を確認した。機体の特徴を伝えるので、照合を――――――」


「瑞守隊各機へ。敵新型機と見られる機体を視認。警戒し、確認で来た場合は即座に攻撃を中止し、回避してその空域から離脱せよ。こちらは一時的に離脱し、再度攻撃を行う」


『芙蓉、了解』


『幟、了解』


「相坂、こちらに来る敵機は俺が撃ち墜としてもいいのか?」


「ああ、だが同士討ちは回避しろよ」


「勿論だ。大久保!今いけるか?」


「どうした?」


「後方銃座の方を頼む」


「了解した」


そこから迫撃砲の爆裂音の代わりに、機関銃の連続した轟音が響き始めたのだった。


更に暫くして。


『鷹見より瑞守へ。指定した飛行場への攻撃は効力確認により、完了を宣言する。他敵部隊への攻撃は、当該領域の敵の勢力、帰投までの距離と補給を考え、本日は終了とする。こちらの陸軍が占拠した湾港付近の飛行場にて補給を行った後、帰投せよ』


「瑞守隊、了解。帰投する」

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