23話 陸軍基地飛行場
明海三十八年 5月27日 高砂島 大浜綴帝國陸軍高砂軍司令部 新松試験飛行場
「ここが高砂島かぁ……」
高砂島。
帝國の外地……、所謂植民地だ。
本土の南にあり、熱気と湿気が高い。
本土とは異なる原住民の気質と、大唐帝国時代の大陸からの移民も多く居り、独特の雰囲気を醸し出している。
しっかし、こんな形で外地に来るとは。
それも海軍基地ではなく、陸軍基地だ。
「俺、高砂に来たの、これが初めてだ」
「俺も~」
俺自身そうだが、瑞守隊の隊員に高砂島生まれはいなかったと記憶しているし、他の隊員も高砂島は初めてらしい。
「それにしても、こんな総督府に近い場所に、陸軍基地があったなんてな」
「どうやらここは、あと数年先に正式に稼働する陸軍基地になるはずだったらしいが、この戦争の気運の高まりと共に、試験機を試験するための秘匿される基地になったらしいな」
「浜綴空技の飛行場で試験することにはならなかったのか?」
「陸軍が完全新規の航空機を打ち出すにあたって、政府関係から情報が洩れる可能性を嫌って完全にバレないよう、新規に計画だけされていたこの航空基地に白羽の矢が立ったんだろうよ」
「さっすが、浜綴空技の試験搭乗員が親なだけはあるな!」
「この話は噂だけでも海軍の中でもあったとは思うぞ」
「……え?」
所沢の素っ頓狂な呆け顔を見ながら、庁舎へと入っていった。
庁舎 小会議室
「諸君、荷物は指定された各部屋に全て運んだな?では、今回の試験飛行及び前線試験の実施について、説明する」
俺たちが到着するなり、部屋で待機していたらしい陸軍将校が早速説明を始めた。
概要は以下の通り。
まず初めに、この基地施設の説明。
次に、二週間で行われる機種変更訓練について。
最後に、その後に行われる大陸での作戦についてであった。
少し具体的なことを言うと、基地施設の説明は、基地にある施設の説明の他、高度機密の守秘義務によって、この作戦中、施設の限られた範囲から出ないということが説明されていた。
機種変更訓練はその通り、訓練内容だけの話だった。
中身は割と無茶なものだったが。
一日に10時間訓練で2週間なら、140時間の訓練となる。
重量や操作方法のほぼ同型の航空機なら寧ろ長い方、時間を取られている方と考えられるが、今まで俺たちが乗っていたのは二発機であり、中型機くらいの大きさだったのに比べ、今回搭乗することになる新型機は搭乗員数こそそこまで変わらないが、四発機となる大型機だ。
操作方法も初期よりはある程度統一されているとは思うが、それでも海軍機乗りが陸軍機を扱うのには絶対に時間が掛かってしまう。
海軍が開発し、陸軍の初期の航空機も海軍機からの流用であったのに何故陸軍機と海軍機で操作方法が異なるのかというと、陸海軍の不仲が挙げられ、それで陸軍が独自に航空機を開発できるようになったころには敢えて海軍機とは異なる方式の操縦形態が取られたらしい。
ある程度時が経ち、退役後の民間機を扱う業務のある企業への斡旋でそれが懸念点となってからはマシになったらしいが、それでも意地で変えられてない部分もあるらしい。
大陸での作戦の説明は大まかなもので、二週間後の戦況の変化で作戦内容……特に戦場が大規模に変わる可能性もあるので、どこで行われるかはほぼ未定の状態らしい。
実地試験飛行の内容は、陸軍戦闘機によって制空権を得た空域であり、かつ地上での進退の激しい地域に投入される予定とのことだ。
「今日のところはこの説明だけだ。質問があるれば後ほどでも構わん。訓練自体は明日からだが、格納庫にある機体を見ても良いぞ。希望者はいるか?」
正直、俺はどちらでも良いが……。
「……」
葵がかなり興味深そうな顔をしているが、何故希望を言わないのだろうか。
う~ん……。
そうか、男ばかりだし、あまり行きたがらないのかも知れないな。
前に気を付けろと言ったばかりだ。
流石に隊員の中にそんなことをする奴は居ないと思いたいが、葵にとって、他の機体の機上整備士以外の人間とはあまり関わり合いがないから、警戒もあるし、もしかしたら格納庫には陸軍の人間が多少はいるかも知れないから、気の知れた人間がいないと行こうとは思わないのかも知れない。
「じゃ、隊長として、行っときます」
「あ、じゃあ俺も~」
「わ、私も……」
葵が言う前に、所沢が希望した。
所沢のために手を挙げた訳じゃないし、別に一人でも良かっただろと思い、最初から希望しとけとか思ってしまった。
「皆が行くなら俺も行くか」
三人が希望すると、重野も希望したのだった。
結局他の隊員全員も希望したので、全員で格納庫へ向かうことになった。
格納庫
「ここに、その攻撃機がある」
陸軍将校はそう言って、格納庫の扉をガララと音を立てて開けた。
「そして、ここで諸君らが搭乗し、試験飛行をしてもらう試作攻撃機、これが『試製六五式攻撃機』だ」
この基地の格納庫にあったのは、六星や星霜の一回り、二回りほども大きな機体の四発機だった。




