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暁の水平線  作者: NBCG
本編
21/97

20話 陸戦隊と船舶兵

明海三十八年 5月20日 高砂海峡北部海域 大陸側沿岸 上空


「爆撃投下完了。瑞守隊他、状況報告」


『こちら二番機、完了』


『三番機、完了』


『四番機、爆撃完了した』


「瑞守隊、全機、爆撃完了を確認。帰投する」


沿岸哨戒を行っていた哨戒艦を戦闘不能にまで追い詰め、あとは沿岸付近にある対空兵器を爆撃して破壊し回った。


陸戦隊の支援で対地爆撃も行っていくのではあるが、俺たちの役割ももうそろそろ終わりへと向かっていくのだろう。


彼らが橋頭保を築いた後は、あとは完全に陸軍の仕事だ。


俺たちは他から来る民国海軍を封じるか、敵海軍基地の破壊くらいしか仕事はない。


それらの任務は代わる代わる行われるため、非番の日に休暇が入る。


開戦してから……、いや、停戦をして、その後に奇襲を掛けられた後からは戦況の緊張が続き、碌に休暇など得られなかった。


「もう少ししたら一息つけるな……」


「それまで気を抜くなよ」


「重野はいつも、肩が重くなるようなことを言うよな」


「お前の気が抜けて死ぬのは、お前だけではないからな」


「分かったから。安全運転で帰投しますよっと」


確かに重野の言うことも一理ある。


帰る前に死ぬなど、御免被る。


気を抜くのは、着艦してからでも遅くはない。


高砂島北部海域 空母応龍 飛行甲板


「相坂中尉!」


着艦し、甲板に降り立つと、整備士に話し掛けられた。


「……何です?」


「召集です。第一会議室に集まるようにと……」


「分かった」


とっとと休みたかったのに、こんな時に何の用だろうか。


空母応龍 第一会議室


「……集まったな」


上官はやや疲れたような表情で、溜め息を吐いた。


「前にここで作戦会議を行った際、この作戦が終了次第、君たちには休息が与えられるようになると言ったが、それは一つの作戦の前に、先送りになってしまった」


会議室がどよめいた。


「取り敢えず、落ち着いて欲しい。かく言う私も戦場にこそ出ないが、その作戦の最中は、私にも休息は無い」


ああ、これが上官の顔色がやや悪い理由か。


「改めて説明する。先の海軍陸戦隊上陸支援作戦は以上の通り、完結した。今回君たちに課せられた任務とは、陸軍船舶部隊が行う揚陸作戦の、支援任務だ」


いや、顔色が悪いのは、こちらの方が理由としてはその比率が高いのだろうか。


「陸軍が運用する特殊船、天州丸を護衛する陸軍機の数が心もとないとのことが理由らしい。その理由としては先の民国の爆撃による機数の減少と、陸軍が独自に開発している対地支援航空機の開発とその護衛に戦力を割いているため、また高砂島から支援機を飛ばすより、近場の空母から飛ばした方が航続距離的にも良いという判断から海軍の方に支援要請が来た。こちらとしても癪だが、今、不必要に陸軍戦力を消耗してしまうと、結局のところその尻拭いをこちらに仕向けられてしまうからな。その分先んじて、楽をして貸しを作ることが出来るのなら、その方がいいということだ」


会議室の中には勿論不満を醸し出す雰囲気が漂ってはいたが、「これもしょうがない」と、一種の諦めと共に受け入れる姿勢が見て取れた。


俺も不満はあったが、それはそもそも任務が続いてしまうということに対してであるため、その対象が陸戦隊だろうが船舶部隊だろうが変わりない。


5月21日 高砂海峡中部海域 大陸側沿岸 上空


翌日から、早速その任務に就くことになった。


『こちら陸軍第一船舶輸送司令部、部長の宇品だ。海軍の司令偵察機から指揮を引き継ぐ。海軍ではどのような指揮をしているのか、話に聞く程度だが、こちらの支援をする以上、こちらの命令に従うことだ』


なんとも威圧的な男だ。


違う部門の人間に対して、ここまで高圧的に接することが出来るヤツも少ない。


こういう性格だからこそ、陸軍の一部門の部長にまでなれたのだろうか。


『指定する空域の制空権の確保と、指定する地域への爆撃を行え。いいな?』


こちらからは誰一人、了解の一言も言ってなかったのだが、一方的に男は話し続けた。


「面倒だが、とっとと終わらせよう」


「そうだな。海軍の上陸作戦よか、対空火器の弾幕もより薄い。潰せるだけ潰そう」


俺の気を引き締めるための独り言に、重野が応えた。


……。


「こちら海軍第一〇三航空群、第三一五攻撃大隊、瑞守。瑞守隊全機の投下爆弾の投下を終了した。これより所属艦艇、応龍へ帰投する」


いつもより大分と丁寧な説明だが、陸軍がどれだけ俺たちのことを知っているのか分からないため、仕方がない。


『貴様ァ!臨時とはいえ、仮にも上官の命令なく撤退するつもりかァ!』


「投下する爆弾が無ければ攻撃することも出来ない。それと、瑞守隊の機体は敵対空火器の破壊、敵拠点一部、陸軍部隊の支援、どれをとっても満遍なく遂行してきたつもりだが?持てる武器で出来るだけのことをした兵に、これ以上何を望むんだ?」


『なんだとッ!』


「瑞守隊全機、空母応龍へ帰投する。陸軍司令部の命令は無視して構わん」


『貴様らの上層部に懲罰するよう命れ――――――』


あまりにも五月蠅かったので、無線の周波数を変えた。


「切って良かったのか?」


重野が表情も変えずに聞いてきた。


「武器もないのに飛ばそうとする方が可笑しいからな」


「そうじゃなくて、部隊機への指示とか」


「あとは真っ直ぐ帰投するだけだ。この機についてきたら良いだけだから、問題は無いだろ」


「それもそうか」


そうして問題もなく帰投することはできた。


因みに、宇品とか言った男の命令を無視したことは、海軍内は勿論のこと、一部陸軍の中でも評価する者もいたらしかった。


あんな男が陸軍の一部門長であるのは大丈夫なのだろうか?


まあ、俺が気にすることではないのだが。


兎も角、これで一息吐けそうだ。

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