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暁の水平線  作者: NBCG
本編
16/97

16話 邀撃

明海三十八年 5月12日 高砂島北部海域 空母応龍 第一会議室


先の命令違反について、俺たちは無罪放免という結果になった。


最初に命令違反を行った彼らは懲罰房送りになったらしいが、その後に続いた命令違反者については、その数が多かったということと、その時点で文華民国との軍事衝突は避けられなかっただろうとの仮説が有力であると考えられたことが理由であるらしかった。


ま、作戦終了後にこの会議室で厳重注意を全員に行われたのだが。


俺たちが行った攻撃の成果についても、勲章の勘案外となってしまったらしい。


厳重注意以外の懲戒処分が無かっただけマシと考えておく。


そして今、この会議室で取り上げられた題というのは、この戦争のことについて。


「偵察機部隊からの情報によると、文華民国が高砂島に対して上陸作戦を仕掛ける可能性が高くなった」


伝えられたのは、戦況が変わる予兆を得たという見地だった。


俺たちはその上陸作戦を邀撃するため、大陸と高砂島の間の海峡、高砂海峡に展開し、敵上陸隊の航空阻止を行う役割だ。


雷撃と爆撃で、敵艦を撃破、撤退させる。


その為にこの艦隊は、その海峡へ向け進んでいる。


航空機部隊は一部、先んじてその海峡で邀撃することになり、本部隊と艦隊が到着するまで持ちこたえなければならない。


そしてその役割も、俺たちに課せられていたようだ。


高砂海峡 上空


「敵戦闘機が多いな……」


上がった海峡の空は、文華民国の新旧混じる多くの戦闘機が飛んでいた。


『先行部隊が何機か墜としたが、大陸との距離が近い場所を局地的に侵攻する計画だ。航続距離が続く限り滞空しているんだろう。今までよりも厳しい戦いになるだろうが、ここで敵の侵攻を防げないと、高砂島に橋頭保を築かれるのは確かなものとなってしまうだろう』


空の状況がどうであれ、戦況がどうであれ、俺たちがやることに変わりはない。


敵艦に爆弾を当てて侵攻を食い止める。


ただ、それだけだ。


「瑞守隊各機へ、敵戦闘機が多い。高速を維持し、敵戦闘機の餌食にならないように気を付けろ。魚雷投下位置へ行くぞ」


『『『了解』』』


攻撃機研究会で得た知見の成果もあったのか、最近は水平爆撃の命中率が上がってきた。


魚雷の命中率も上げたいところだ。


「魚雷投下」


敵艦隊は複縦陣……いや、単縦陣を二列に組んだ陣形をしている。


その為、狙った目標から外してしまったとしても、その後ろの艦に当たる可能性もある。


そんなのは気休めだが、気の持ちようとしては重要なことではある。


複縦陣ではなく単縦陣が二列と表現したのは、艦隊の規模とそれぞれの速度から考えて、その二列が別々の艦隊であると考えられるためだ。


今までの戦闘で文華民国の戦闘艦の数もある程度減ったとはいえ、この海域に16隻も展開している。


カァンッ!


機体に対空機銃の弾が当たる。


疑似的な複縦陣となっている艦隊を横切っているため、いつもより多く被弾してしまった気がする。


「雷撃の効果確認」


『瑞守隊の雷撃効果確認中。……四機中三機の魚雷が命中、内二隻が完全に砲熕類の沈黙が確認された。残る一隻も多くの砲の沈黙が確認できる。大戦果だ』


「了解!」


司令偵察機からの報告に、冷静さを保つことを心掛けているが、つい声に気合が籠ってしまう。


そのことを重野にも咎められてしまった。


「続いて水平爆撃を開始する。この間のような馬鹿スカ落とすような真似はするなよ」


『『『了解!』』』


「良い返事だ。墜ちるなよ」


高度を上げながら、敵艦隊の方に向き直り、再攻撃の準備を行う。


「爆弾投下用意!」


「投下用意よろし!」


「投下!」


こうして、敵艦隊を迎え撃ち、その多くの足止めに成功した。


ただし、水平爆撃の命中率は命令違反時よりも低下してしまっていた。


高砂島北部海域 空母応龍 第一会議室


結果として、敵艦隊の内、巡洋艦二隻撃沈、一隻大破、駆逐艦二隻大破、内一隻着底、他戦闘機及び爆撃機多数を撃墜。


こちらの損害は、戦艦一隻小破、巡洋艦一隻中破、駆逐艦一隻大破、戦闘機他作戦航空機の内、一割五分といったところ。


壊滅状態ではないが、一割以上損害を出してしまったのは痛いか。


それほどまでに、文華民国の航空戦力の質の向上と頭数は侮れないということだ。


高砂島へ投入できるこちらの戦力は、高砂島の基地にある千数百機と空母艦載機の数百機といったもの。


それに対し、文華民国が投入できる航空戦力は、開戦前に収集していた情報によると、およそ二千機から三千機と予想されている。


しかも、文華民国の爆撃機が行った、高砂島の飛行場への爆撃によって、少なくない数の浜綴帝國の航空機が破壊されてしまった。


どんぶり勘定で計算しても、こちらの揃えられる航空戦力は千機前後、向こうの航空戦力は二千機前後。


倍近くの航空戦力の差があるが、大丈夫なのだろうかとも考える。


水上戦力自体はこちらに理があるし、航空機一機ごとの戦闘能力もこちらの方が上だ。


だが、それは数を揃えられれば十二分に覆り得る状況である。


今はなんとか返り討ちにできたが、俺たちはこの海峡北部戦線を維持できるのか、と考えていた時だった。


「海峡南部戦線が一部突破され、高砂島内に敵橋頭保が築かれつつある」


唐突の報告は、一段と悪いものであった。

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