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暁の水平線  作者: NBCG
本編
13/97

13話 新米と熟練

明海三十八年 5月6日 高砂島北部海域 空母応龍 第二会議室


今は晩飯後。


どうやら、攻撃機乗りの先達に呼ばれたようだ。


というかこれ、所謂「シゴキ」っていうやつじゃないのか?


親父の時代の飛行機乗りは、そこまで上下関係を気にするような関係性を築き上げていたようではなかった。


これは親父と倉田のおじさんからの話だ。


しかしながら訓練生時代、軍艦乗りの風潮が飛行機乗りにも移り、そういった「シゴキ」が行われているという噂を聞いたことがある。


俺は確かに数少ない新型機の搭乗員となった新米だ。


熟練の中でも、新型機に乗りたかったが新型機搭乗員となれず、そういった人間のことを気に入らないと感じる人間がいたとしても不思議ではない。


コンコンッ


「失礼します」


扉を叩き、入室した。


「やっときたか」


入ってきた俺にそう言ったのは、鍛錬後、俺に呼びかけた搭乗員の男だった。


中には複数人の男たち。


これは……、やはりシゴキだろうか。


「―――ッ」


思わず息を呑んだ。


だが、この部屋に入ってしまった以上、もう逃げられないな。


「貴様は相坂慎宕中尉、で、間違いないか?」


「はい」


「そして貴様は、開戦初日に敵艦に対して魚雷投下を行い、撃沈したのだったな」


どういう意図だろうか。


「……はい。しかしその後の魚雷投下や水平爆撃は、あまり命中させられませんでしたが」


実際、あの後命中できたのは水平爆撃時に一発が対空砲に命中確実、もう一発が敵主砲塔に命中推定といったところだった。


魚雷はあの後一発も当てていない。


うぅむ、なんだろうか。


一発だけ目立って当てて許せないだとか、その後全く当てていなくて詐欺も同然だとか、そういったことだろうか。


確かに全くあの後碌に命中弾は一、二発程度、天然資源の少ない帝國を無駄にしてしまったのは否定できない事実だ。


「そうか。取り敢えず、これで揃ったな。まあなんだ、席に掛けてくれ」


「は、はぁ……」


「シゴキ」とやらはしないのだろうか、それとも、座ったまま行う方法があるのだろうか。


「ええと、俺がここに呼ばれた理由って……」


椅子を引きながら、浮かんだ疑問を投げかける。


「シゴキ」なら「シゴキ」で覚悟をするのだが、そうでないのなら何なのか知りたい。


というか「シゴキ」なのだろうか?


「シゴキ」って、会議室みたいなところでするより、廊下端だとか、懲罰房だとかじゃないのだろうか。


「アレッ?塔田、先に話を通してたんだよな?」


「あ、まだです」


「はぁー……先に言っておけと……。まあ、いいや。ここは『攻撃機研究会』の集まりだ」


「『攻撃機研究会』……?」


「ああ、それはだな――――――」


端的に言うと、攻撃機研究会とは、攻撃機乗りや一部の戦略評価などを行う士官らが集まり、航空機含む艦隊の同行を研究し、効率よく敵艦隊の撃破を出来るようにするものらしい。


もっとも、爆撃機部隊と研究会を同じにしないのは、一度合同で研究会を開いた時、急降下爆撃を行う爆撃機乗りと水平爆撃と魚雷投下を行う攻撃機乗りに大きな考えの相違が生じたため、とのこと。


因みに、殴り合いなどは起こしてはいないらしいが、それでも、少し折り合いが悪くなってしまったらしい。


因みに俺が呼ばれた理由とは、最初に撃沈した魚雷投下が偶然なのか狙ってできるものなのかの検証を行い、ついでに俺の攻撃機乗りとしての才覚を見極めるためでもあるらしい。


また、俺の隊の三番機が俺の撃沈と同時に魚雷を当てたことも、俺がこの研究会に呼ばれる理由にもどうやらなっているようだった。


てっきり「シゴキ」でもされるのかと思ったが、違ったようでよかった。


「あー……中には相坂に『シゴキ』をしたいとか抜かしてた奴らもいたなぁ……」


え、何それ怖っ。


「でも大丈夫。そう言ってきたやつらをまとめてシメて来たから」


もっと怖っ。


……、こいつらはなるべく敵にまわさないようにしよう。


話を戻して、攻撃機研究会の話。


結果を言えば、為になる話が聞けた会だった。


魚雷投下の理想位置に着ける方法や、魚雷投下時の投下手との息の合わせ方、水平爆撃の方法まで、様々な含蓄ある経験の話を聞けた。


俺の経験談も話したが、彼らにとって収穫があったのかどうかは分からない。


彼らは表情一つ変えずに聞き、俺の声以外は機械の駆動音と議事録を綴る万年筆の音が響いているのみだった。


「これにて、今回の攻撃機研究会の会議を終了します。議事録を参照したい場合は――――――」


そんなことをしていると、いつの間にやら研究会とやらは終わっていた。


「どうだった?」


会が終わり、話しかけてきたのは塔田と呼ばれていた、俺をこの研究会に誘った攻撃機乗りだった。


「これからの作戦に活かせそうな話を聞けて良かったです。俺の話が役に立たなかったか不安ですが……」


「そんなことか、別に気にしなくても良い。俺たち攻撃機乗りは爆撃機乗りやらに比べて歴史が浅いから、色んな経験を蓄積する必要性があるからな。新人が魚雷を当てた話を聞けただけでも熟練でも参考になったりするものがあるもんさ」


そんなこともあり、国家間の『コト』が動くまで、鍛錬と勉強に励む日々が続いた。

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