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暁の水平線  作者: NBCG
本編
12/97

12話 一時停戦

明海三十八年 5月6日 高砂島北部海域 上空


今日も今日とて、相も変わらず、敵の対空砲を避けながら、爆弾を落とす作業――――――と、なるはずだった。


『行動全機に達する。全ての攻撃を中止し、帰投せよ!』


そのはずは、命令一つで全てが取りやめとなった。


「チッ……今かよ」


「ま、しなくてもいい戦いを避けられるんだ。良しとしておこう」


重野はいつも冷静だな。


その嫌味を飲み込み、桿を傾け、出力を上げた。


『オイオイ!一体どういうことなんだ!』


『こんなところで引けないぞ!』


無線では、血気盛んな連中が司令偵察機に文句を垂れていた。


『上層部の判断だ。俺も詳しくは知らん。攻撃行動中の機は直ちに攻撃をやめ、帰投せよ。攻撃を中止しない機はこの後に懲罰があると思え。繰り返す――――――』


司令偵察機の指示員は粛々と応えた。


『それで納得すると思ってんのか!』


『そうだ!何も答えにゃなってねぇだろ!』


それでも納得できず、無線からは怒号が聞こえてくる。


『言ったはずだ、これは俺の判断ではなく、上層部の判断だ。国際社会に関わる政治的判断があると思われるが、詳しいことは聞いていない。こちらからも問い合わせたが、説明ができるような詳細な事項はなかったということだ。繰り返す、攻撃を中止し、帰投せよ。この命令を無視した場合、厳重な処罰が下されるだろう』


指示員は再び落ち着いた様子で、命令を繰り返した。


俺を含む少なくない数の機体が帰投しようとする中、一部の連中はその場に留まろうとしていたらしいが、護衛となる戦闘機が減ったことで、彼らは殿となりつつ渋々帰投していた。


そんな彼らの恨みがましく上官らを呪うような声が無線から暫く届けられていた。


「はぁ……うっさ……」


隣の重野が表情を一つ変えずに小さく呟いた。


同日 航行艦隊臨時即応編隊 副旗艦 空母応龍 第一会議室


帰投して早々、会議室に集められた。


勿論、あの攻撃中止についての説明のためだ。


「どういうことだよ!」


「俺たちだって、あの状況で安全に帰投できるかも分からないんだぞ!」


「何とか言ったらどうなんだ!」


説明を求める声、責任を取らせようとする声、それに便乗して煽り上げ脅す声。


三者三様、十人十色の糾弾の声が混じり躍り上がった。


「落ち着け、落ち着け。今分かっていることを説明する。だから少し落ち着け。後ろの奴らが聞こえんだろ?」


向かいに立つ上官らが宥め、この場を鎮まるよう促した。


暫く経ち、一時の混乱と糾弾の声は治まり、会議室は静かになると、一人、誰かが声を上げた。


「で、一体何があったんだ?」


誰かは分からなかったが、それは先の煽るような声たちとは違い、冷静な声だった。


「ああ、説明する。……森崎が軽く国際社会との政治が絡んでの判断であることは触れたと思うが、詳しく説明すると、国連が絡んできたんだ」


上官はそこで一度息を吐き、会議室を見渡すように見据えた。


国連か……、いい話ではなさそうだ。


「連中が特別会議で決議して、この戦いに一時停戦を『命令』したんだ」


「国連が……命令……」


また違う誰かが呟いた。


「文華民国の方は知らないが、少なくともこちらはその命令を受け入れ、停戦することを選んだ。どうやら状況を確認すると、向こうはこちらが撤退するまで砲を撃ち続けていたようだがな……はぁ」


上官が再び溜め息を吐き、考えるように俯いてから、再び顔を上げた。


「まあ、奴らが攻勢を仕掛けて国連の意向を全て無視している現状は、国際社会の心象は悪くなる一方であると考えて、楽観するしかない。暫くは警戒のみで、戦闘は基本的に無しだ、向こうから上陸をして来れば別だが……」


そう上手くいくのかどうやら……。


「それまで全員、ここで待機だ。とはいっても、鍛錬は怠るなよ?これから、質疑応答に入る……」


こうして、質疑応答が終わったのちに、解散することになった。


空母応龍 飛行甲板


飛行甲板で走る鍛錬を行う。


艦内では鍛錬用の器具もあるのだが、俺の今の気分には合わないので走っている。


それ以前に、あの手の鍛錬は合わないような感じがするので、自ら鍛錬部屋を使うことはそもそもあまりないのではあるが。


「はぁ、はぁ、はぁ」


ここのところ戦闘続きであったため、こうして鍛錬で汗を流すのは久しぶりである気がする。


「はぁ……ん?」


ふと後ろが気になってみてみると、他の連中も走り始めていた。


鍛錬部屋での鍛錬が嫌な連中なのだろうか、俺の後ろに続いている。


多くの連中はただ俺が先に走っていたからそれに続いているだけだと思うが、なぜだろう。


その中の一部から、こちらを見るような視線を感じる……気がする。


……まあでも、特に速く走っているわけでもなく、それでいて話しかけてくることもないので、そこまで気にするほどのものでもない、……のか?


兎も角、晩飯の時間に間に合うように鍛錬を切り上げよう。


……。


「そろそろ、か」


昏くなってきたので、鍛錬を切り上げる。


「相坂中尉」


すると、後ろから声が掛かってきた。


「飯の後でいいので、話をする時間貰ってもいいですか?」

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