エピローグ
<誠君へ>
なにから書いていいのか分らないのですが、こうして貴方に
手紙を書いています。
きっとこの手紙を貴方が見たということは、私はもうこの世に
居ないのでしょうね。そうだとしたら悲しい思いをさせてごめんなさい。
ハルが死んでから、私は貴方がいたことで本当に助かりました。
貴方がいなければもっと私はボロボロになっていたと思います。
辛い時にはいつも貴方が側にいてくれましたね。
ハルが死んでから、私はハルが迎えに来てくれることだけを支えに
毎日、辛い日々を送っていました。
そんな私を励まし、支えてくれた貴方の優しさはとても大きなモノでした。
本当に何度感謝の言葉を言っても足りません。
私はハルが生きていた時に約束をしました。
もしもハルが死んでも連れて行ってと。
普通誰が聞いても冗談だと思うのでしょうが、私は本気でした。
ハルが死んでからしばらくして、私はハルが約束を忘れてしまい
もう私の前には来てくれないと諦めかけていました。
けど、そんな時にハルは夢に出てきてくれました。
そして、夏の・・あの事故の日に私を迎えに来てくれると言ってくれました。
それが明日です。
ハルは貴方のことを、とても心配していました。
もっと貴方と向き合うように、もっと大事にしてあげるように、
最後にバイクに乗るように、こうして手紙を書くようにと
ハルは言いました。
そして、私はハルに一つだけお願いをしました。
最後に貴方のことだけを考えて、貴方のことを好きな自分で
抱かれたいと伝えました。
渋々ですが、ハルは了解してくれました。
この手紙を書き終えたら、貴方の部屋に行くつもりです。
そうすることで、もっと貴方がその後辛くなるかもしれないですね。
けれど、今、こうして生きている間は私は貴方のことが大好きです。
大好きだから、最後に抱かれたいと心から思っています。
あんまり誠君のことを大好きと言い続けると、ハルが怒って来てくれないと
困るので、手紙はこれくらいにしておきます。
やっぱり私にはハルがお似合いです。そして貴方には
もっと素敵な人がお似合いです。
本当はそんな4人で楽しくお食事とかしたかったね。
それだけが心残りかなぁ・・
ハルは私がいないと泣いちゃうから。
誠君はハルより強いからきっと大丈夫。
幸せにしてあげられなくてごめんね。
そして本当にありがとう。
―華―
<華の手紙はここまでだった。けれど下の数行だけ筆跡が明らかに
違う、ちょっと汚い字で短い言葉が書かれていた>
やっぱ連れていくわ。約束だから・・・
こいつ俺がいないとすぐ泣くんだ。兄貴本当にごめん・・・
俺しか華を幸せにできないし、俺も華だけなんだ。
−春彦―
その字は消えそうな字だったが、間違い無くハルの字だった・・・・・