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■ 第27節:【3歳3ヶ月/3月〜4月(春)】後編

■ 第27節:【3歳3ヶ月/3月〜4月(春)】

◇


【サリマの『幼子演舞(バブバブ演技)』炸裂!】


だが、しぶとい徴税人は諦めず、広場の奥へと歩みを進めようとした。


「フン! 口では何とでも言えるわ! 一応、裏の家々や納屋の中まで改めさせてもらうぞ!!」


(……あ、これ以上奥へ行かせたら、裏山の開墾地の入口(二重結界の手前)まで行かれちゃうわね!)


物陰で見ていた3歳3ヶ月のサリマは、即座に「作戦B(バブバブ演技攻撃)」の実行を決意した!


「バブーっ! たかたかーっ! おじちゃん、遊ぼーっ!!」


サリマは突然、つぎはぎの作業服の裾をはためかせながら、トコトコと無邪気な2歳児(幼子)のフリをして徴税人の足元へと駆け寄った!


「ぬわっ!? なんだこのガキはっ!?」


徴税人が驚いて見下ろすと、サリマは無邪気な笑顔で徴税人の高級な皮ブーツに飛びつき、手にした「カブモドキのドロドロの雑草汁」を、ペタリとブーツの先へ塗りたくった!


「ああっ!? ぶ……非礼なガキめ!! わしのブーツになにを塗りたくりおるかーーーっ!!」


徴税人が悲鳴を上げた。


「あははー! おじちゃん、かっこいー! ブーツ、ピカピカねーっ!」


サリマは無邪気にパチパチと手を叩き、わざとバランスを崩して徴税人の足元で「すてーん!」と尻餅をついて転んで見せた。そして、大きな目でうるうると涙を浮かべた。


「うぇぇぇんっ! おじちゃん、こわいよーっ! お腹すいたよーっ!」


「な……なんだとぉぉぉっ!?」


徴税人は周囲の兵士たちや村人たちから「まあ……あんな幼子を怒鳴りつけるなんて」「お役人様も情がない……」という冷ややかな視線を浴びせられ、顔を真っ赤にした。


ガノスが慌てて駆け寄り、サリマを抱き上げた。


「お役人様、大変申し訳ございません! 3歳になったばかりの幼子ゆえ、悪気はございませんのです! さあサリマ、お部屋に入りなさい」


サリマはガノスの首に抱きつきながら、ガノスの耳元でだけ、徴税人に聞こえない超小声でささやいた。


(お父ちゃん、追い打ちよ! シロップのサンプルを1本あげて退散させて!)


ガノスはサリマの知恵に感服しながら、懐からドワーフの小瓶に入った出来立ての『麦芽シロップ』を1本取り出し、徴税人へ差し出した。


「お役人様、ブーツの汚れのお詫びに……出来立てのシロップを1本、お納めください。代官様へのご試食用でございます」


徴税人はシロップの小瓶を目にした瞬間、ゴクリと生唾を飲み込んだ。


小瓶から漏れ出る甘く芳醇な香気。これさえ持っていけば、代官ゴルドー様から大褒賞が貰えるのは確実だった。


「む……むぅ……。まあよい! 幼子のやったことだ、免じて許してやる!」


徴税人は小瓶を割らないように大切に懐へ仕舞い込むと、満足そうにフンと鼻を鳴らした。


「よし! 検分はこれまでだ! 秋の収穫期には、約束通り『穀物30%+シロップ10本』を滞りなく納めろよ! 行くぞっ!」


「ハッ! ありがとうございます、お役人様!」


徴税人と兵士十人は、完全に騙されて大満足の様子で、馬を走らせて嵐のように去っていったのだった!


◇


【完全な勝利と春の宴】


徴税人たちが街道の向こうへ完全に姿を消したのを確認すると——。


緊張で固まっていた村の広場に、地鳴りのような爆笑と歓声が巻き起こった!


「「「やったぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!! 完全勝利だーーーーーっっっ!!!」」」


「はははは! 見たかあの徴税人の顔! 完全に騙されて帰っていったぞ!」 「サリマ様の『バブバブ演技』、完璧すぎましたっ! ブーツに雑草汁を塗った瞬間、爆笑を堪えるのが大変でしたっ!」


カイやピート、村人たちが抱き合い、お腹を抱えて大爆笑した。


ガノスはサリマを高く抱き上げ、目から涙を流してその頬に何度もキスをした。


「サリマ……! サリマ……! お前は本当に最高の軍師だ! あのしぶとい徴税人を、演技とシロップ1本で完全に撃退してしまうなんて……!」


「お父ちゃん! 演技、だいせいこう! 相手、バカだから簡単にだまされたね!」


3歳3ヶ月のサリマがニカッと太陽のような満面の笑顔を浮かべると、集まった100人の村人たちから割れんばかりの拍手と「サリマ様バンザイ!」の大歓声が送られた。


母エリスもクスクスと口元を押さえて微笑んだ。


「本当に……サリマにかかったら、どんな恐ろしいお役人様も赤子扱いですねぇ」


その日の夜。


表のボロ小屋では、徴税人撃退と春の訪れを祝う温かな大宴会が催された。


テーブルの上には、裏山の温室で採れた新鮮な生野菜サラダ、サリマ特製の熟成ジビエ生ハム、そしてドワーフの地下工房から運ばれた至高の透明清酒『水晶』が並べられた。


ガノスが杯を掲げた。


「俺たちの知恵と、サリマの演技に! そしてアルカ村の絶対の平和に……乾杯ーーーっっっ!!」


「「「乾杯ーーーーーーーーーーっっっ!!!!」」」


村人たちが笑顔で杯を汲み交わし、温かな笑い声が春の夜空へと響き渡っていった。


サリマはエリスの膝の上で、大好きな「黄金の麦芽シロップ」を木匙でちゅうちゅうと味わいながら、窓の外の美しい星空を見上げた。


(ふふん! 3歳3ヶ月! 悪徳代官の手下の抜き打ち巡回も完璧に返り討ちよ!)


(表向きは『貧しいがシロップ造りに必死な健気な寒村』を完璧に擬態しつつ、裏では莫大な金貨、最高峰の完全栄養食、万能の医療技術、そしてドワーフの強力な武力を蓄え続ける……)


(代官ゴルドーは自分たちが支配していると思っているけれど、本当はこの3歳児の手のひらの上でダンスを踊っているだけなのよ!)


家族の溢れる深い愛と、試行錯誤の科学の知恵、そして甘い麦芽シロップの味とともに——。 3歳3ヶ月を迎えた天才バイオ幼児サリマの異世界サバイバルは、さらなる希望と美味にあふれた未来へ向かって、どこまでも力強く、誇らしく歩み続けていくのだった。

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