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■ 第24節:【3歳0ヶ月(3歳の誕生日)/12月25日】後編

■ 第24節:【3歳0ヶ月(3歳の誕生日)/12月25日】



「「「乾杯ーーーーーーーーーーっっっ!!!!」」」


全員が一斉に、透明な水晶清酒を口へと運んだ。


ごくり……。


「……っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」


静寂の後、地下工房全体を揺るがすような、地鳴りのごとき大歓声と涙が弾けた!


「美味い……っ!! 美味すぎるぞチクショウ……っ!! 雑味が一切なく、口の中でとろけるような甘みと旨味が弾けて、全身にエネルギーが満ち溢れてくる……!!」


「生きてて良かったぁぁぁっ! 代官に隠してこんな素晴らしいお酒が飲めるなら、この村で生きてきて本当に良かったぁぁぁっ!」


「サリマ様! サリマ様バンザイ! 至高の酒造家だーっ!」


村人たちとドワーフたちが肩を抱き合い、号泣しながら杯を汲み交わした。


ドワーフの魔法技師たちが仕掛けた「祝いの魔導花火」が、外に光が漏れぬよう地下工房の天井近くで静かに美しい七色の光を咲かせ、聖夜の宴を華やかに彩っていく。


◇


【絶対防衛・結界二重化(マナ・ダブルシールド)の完成】


宴が中盤に差し掛かった頃。


サリマはガノス、バルド、そしてカイと一緒に、地下工房の入り口である「一枚岩の壁」の前に立っていた。


「サリマ様、例の『新防衛計画』の準備、整いましたぞ」


バルドが引き締まった表情で、四つの新しい黒鉄の秘宝ルーン楔(くさび)を取り出した。


そう——サリマは前節で代官から「裏山の無税開墾の公式許可証」を勝ち取ったものの、万が一の事態(余計な登山者や代官の手下が偶発的に岩壁に接近すること)を想定し、この秘密基地の防衛をさらに完璧なものにする『絶対防衛・魔法結界の第二重化(マナ・ダブルシールド)』を提案していたのだ。


「バルド! うん、新しい楔(くさび)、打って!」


「ハッ! 『二重認識阻害&意識逸らしのルーン結界(マナ・ディフレクション)』……発動じゃ!!」


バルドがルーンの呪文を唱え、新しい楔を結界の外周へと深く打ち込んだ。


ブワァァァァッ……!


青紫色の魔法の光が波紋のように広がり、既存の第一重結界(視覚偽装&気配遮断)をすっぽりと覆い尽くした。


この第二重結界の完成により、もし万が一、誰かが一枚岩の壁に数十センチまで接近したとしても、結界が放つ微弱な精神波(認識阻害)によって「あ、あっちの崖の方に怪しい影が見えた気がする」「何だかこの岩壁の近くは気分が悪いから離れよう」と無意識に思考が誘導され、自動的に別の場所へ足が向いてしまうという、絶対の迷彩・防御システムが構築されたのだ!


カイが恐る恐る結界の近くへ歩み寄ろうとしたが、数歩進んだところでふっと足を止め、首をかしげた。


「あれ……? なんだか、あっちの森の方が気になりますね……って、うわぁっ!? 本当に意識が逸らされましたっ! すごいですサリマ様! これじゃ誰もこの壁に触れることすらできませんっ!!」


カイが目を丸くして叫ぶ。


「ガハハハハ! これで王都の最高級魔法師が山狩りに来ようが、絶対にこの倉庫を発見することは不可能じゃ!!」


バルドが誇らしげに髭を撫で回した。


ガノスも感無量といった様子で、二重結界に包まれた岩壁を見つめた。


「これで……俺たちの宝も、ドワーフの皆さんとの絆も、完全に守られたんだな……」


「うん! お父ちゃん、これでここ(秘密基地)は、絶対にだれにも破れない『無敵の宝箱』になったよ!」


サリマが小さな胸を張り、親指をグッと立てて「サムズアップ」をして見せると、ガノスとバルド、カイは顔を見合わせて頼もしく笑い合った。


◇


【宴のあとの静けさと未来への誓い】


夜深くになり、大賑わいだった誕生日宴会が終わり、村人たちやドワーフたちがそれぞれの寝床へと引き揚げていったあと。


温かい薪の火がくべられた表のボロ小屋の部屋で。


ガノスとエリスは、3歳になったサリマを二人で優しく膝の上に抱きしめていた。


「サリマ……サリマ……! お前が俺たちの元に生まれてきてくれて……本当に良かった。ありがとうな、サリマ……!」


「ええ……! あなたは私たちの、そしてこの村全体の最高の宝物ですわ……!」


両親のあたたかな胸の温もりと、溢れんばかりの深い愛。


サリマは胸の奥がカッと熱くなり、小さな手で二人の首をぎゅっと抱きしめ返した。


前世の社畜時代、暗いラボで深夜まで一人でパソコンの画面を見つめ、誰からも感謝されずに孤独に倒れて死んだ二十九歳の記憶。 けれど今——自分にはこんなにも深く愛してくれる家族がいる。自分が科学とバイオの知恵で救い上げた、たくさんの仲間たちの笑顔がある。


(あきらめずに試行錯誤を重ねてきて、本当によかった……!)


エリスが小さな器から、サリマが大好きな「黄金色の麦芽シロップ」を木匙でひと滴すくうと、優しくサリマの小さな唇へ乗せてくれた。


ちゅ……ちゅぽ。


(……っ〜〜〜〜〜〜〜!! 甘い!! やっぱりこの麦芽シロップの味は、世界で一番美味しいわ!!)


サリマはちゅうちゅうとシロップを味わうと、ニカッと太陽のような満面の笑顔を浮かべた。


「とうた! かぁか! だいすき!」


「「サリマ……!!」」


ガノスとエリスが、愛おしそうにサリマを抱きしめた。


サリマは両親の膝の上でしっかりと自立し、満ち足りた思いで窓の外の美しい雪空を見上げた。


(細胞時代から始まった、私の泥臭い0歳・1歳・2歳のサバイバルはこれで完璧に大勝利よ!)


(3歳になったこれからは、さらに研ぎ澄まされたバイオの知恵で、村の医療も、農業も、新しい美味もどんどん開発して……)


(表向きは貧しい寒村を装いながら、裏では世界一豊かなこのアルカ村を、もっともっと凄まじい『発酵隠密理想郷』にしてやるんだから!!)


家族の深い愛と、試行錯誤の科学の知恵、そして甘い麦芽シロップの味とともに——。 3歳を迎えた天才バイオ幼児サリマの異世界での新しい人生は、さらなる希望と美味にあふれた未来へ向かって、どこまでも力強く、誇らしく歩み始めていくのだった。

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