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■ 第23節:【2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月/9月〜11月(秋〜初冬)】前編

■ 第23節:【2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月/9月〜11月(秋〜初冬)】


実りの秋を迎えつつある最果てのアルカ村。

しかし、村長ガノスのボロ小屋では、ガノス、ピート、そして夏に避難民として加わった少年のカイが、疲れ切った顔でテーブルを囲んでいた。


「はぁ……駄目だ。カイたち4人が寝る間も惜しんで手伝ってくれているが……やっぱり圧倒的に人手が足りん……!」


ガノスが頭を抱えて深いため息をついた。


「そうですよ村長……! 7月にサリマ様が開発してくださった『青カビの傷薬』や『カブモドキのキムチ』、それに地下工房での清酒の増産……。やるべき仕事が山積みで、カイたち4人が増えたくらいじゃ、焼け石に水です!」


ピートも肩を落とす。


カイが申し訳なさそうに頭を下げた。


「村長様、すみません……! 俺たち4人も全力で働いているんですが、畑の管理と裏山からの薪の切り出しだけで手が回らなくて……」


「いや、カイ、お前たちが悪いんじゃないんだ」


ガノスが首を横に振る。


2歳9ヶ月を迎えたサリマは、小さな手押し車を二本足で押し、トコトコとガノスたちの元へ歩み寄った。


(うん、ガノスたちの言う通りね! 夏にカイたち4人を受け入れたけれど、村の生産規模(地下工房・薬草園・共有畑)が拡大するスピードに比べたら、たった4人の追加労働力じゃ全然足りない(慢性的な人手不足)わ!)


サリマ(明日香茅理紗)は、前世のアラサー社畜バイオ研究者としての脳内で、現実的な業務改善(業務プロセスの再構築)を弾き出した。


(人手不足を解決する方法は二つ……! 一つは『さらなる避難民の段階的受け入れ』。そしてもう一つは、ドワーフの技術を使った『作業の省力化・自動化(水車・機材プラントの導入)』よ!)


サリマはガノスの太い腕を小さな手でグッと引っ張った。


「お父ちゃん! カイのお友達、もっと呼ぶ! あとね、バルドに頼んで『ガラガラ水車(自動粉砕機)』作るの!」


「なに……!? 避難民をもっと受け入れて、ドワーフさんに水車を作ってもらう……!?」


ガノスが目を見開いた。


カイがパッと目を輝かせ、身を乗り出した。


「村長様! サリマ様の言う通りです! 実は……俺たちが逃げ出してきた隣領の山の洞窟に、まだ身寄りを無くして飢えている仲間(避難民)が二十人以上潜んでいるんです! 俺が迎えに行って、信頼できる奴らだけを連れてきますっ!!」


「二十人以上……! よし、分かった! クラウス様から届いた金貨と資材で、彼らを養う食糧と寝床は十分に確保できる。全員、アルカ村で受け入れよう!」


ガノスが力強く拳を叩いた。


こうして、カイの案内により隣領からの避難民が順次受け入れられ、アルカ村の人口は一気に「100人超(労働力大幅補強)」へと拡大!

さらに、ドワーフのバルドたちによって川沿いに「水力粉砕・揚水プラント」が作られたことで、雑穀の粉砕や水汲み作業が自動化され、深刻だった労働力不足はついに根本から解消されたのだった!


◇


【2歳10ヶ月(10月中旬・秋の収穫期と代官の異変)】


人口が100人を超え、水力プラントと地下大工房がフル稼働するアルカ村。

黄金色に実った共有畑では、新しく加わった二十人以上の若い避難民たちが、カイやピートの指導のもと、汗を流して楽しそうに収穫作業に励んでいた。


「すごい……! この村は本当にご飯が毎日食べられるんだ……!」

「サリマ様、お野菜の収穫、完了しましたっ!」


新しく加わった若者たちも、サリマの驚異的な知恵と「青カビ軟膏」の効能を目の当たりにし、全員がサリマを「小さな福の神様」と崇めて一心不乱に働いていた。


そんなある日、村の街道を疾走してきた馬の蹄の音が響き渡った。


ダッ! ダッ! ダッ!


「村長! 村長はいるか! 大変だーーーっ!!」


村の若い衆が、青ざめた顔で駆け込んできた。


「どうした! 何事だ!?」


ガノスが立ち上がる。若い衆は息を切らしながら叫んだ。


「隣領の代官ゴルドーの手下……あの不気味な徴税人が、顔色を変えてたった一人で馬を飛ばして来ています!!」


「なに……!? 徴税人が一人で……!?」


ガノスとピート、そしてカイたちが身構えた。


サリマはすまし顔で、トコトコと二本足でガノスの隣へ立ち、村の入口を見つめた。


(一人で馬を飛ばしてくるなんて……怪しいわね。家宅捜索や徴税の巡回じゃない……。相手は何か切羽詰まった『トラブル』を抱えているわ!)


直後、息を切らした髭面の徴税人が、馬から飛び降りるようにして村の広場へ駆け込んできた。


かつて威張り散らしていた男の顔は土色に青ざめ、額からは滝のような脂汗が吹き出していた。


「そ……村長……っ!! ガノス村長はおるかぁぁぁっっっ!!」


ガノスは落ち着き払った動作で一歩前へ出た。


「徴税人様、一体どうされたのですか? 今年の年貢の納入期日には、まだ間がございますが……」


徴税人はガノスの両手をガシッと掴み、縋るような目で叫んだ!


「た……助けてくれガノス村長!! 例の『シロップ』だ!! あの『黄金の麦芽シロップ』を……今すぐ手に入るだけ全て出してもらいたい!!」

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