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その7「そう言えば、勉強会って」

 4月末、高校の教室にて。


「あ、そうだ楓。来週から中間試験だよな?」


 出流が気付いたかのように、朝の読書時間に呟いた。


「え、あぁ……そういえばそうだね……」


「ん? どうしたんだよ、そんな悲しそうな顔してよ」


「それを聞いちゃうの? むぅ……最近は翔も容赦が無くなったね……」


 苦笑いを浮かべ、やつれた声で返す楓。

 確かに、進級当時の彼女よりも見た目かなり痩せていた。


「容赦も何も若干やつれてるっぽいからな」


「うおっ! 女子の小さな変化にも気づいちゃう当たり~~結構ポイント高いっ」


「小町的に?」


「うんっ、小町的に……ていうか、最近翔って付き合い悪いし、ちょっとつまらないところあるけど? きっと、こういうことだったんですなぁ~~」


「おい、何をニヤニヤしてやがる」


「……ほら、顔に出てるし、やっぱり女の子と一緒!」


 すると、僕の話になった途端に顔がパッと明るくなっていく。そこら辺はやはり女子なのだろうか。


「まぁ、こいつは最近、地味さんとよくいるからな」


「うぐっ……」


「バレバレだな。本人たちはバレないようにしていたらしいけど。ていうか、この前いじめっ子から救ったとか何とかって噂だって聞いたし」


「え、まじほんと、それほんとなの? 何そのヒーロー的な噂!」


「だそうだ?」


 こいつら……なんで急に結束してやがる。

 しかも、さっきまでの苦笑いはどこにいったんだこの女。流石ではあるが少々意地汚いぞ、まったく。


「……はぁ、そういうのはご想像にお任せするよ」


 僕がそう答えると、楓はすぐにパチパチッと二回瞬きをしてむすっと顔を顰める。気持ちはわからんでもないが、まずはそのずかずか内側に入っていく性格をどうにかしてほしい。


 僕はまだいいが、地味はシャイだ。あまり広められるのも良くは思わないだろう。


 ——まあ、最も。あの噂が流れ入る時点で少し手遅れな気もしなくもないがな。


「……ちぇ」


「つまらないな、最近の翔は」


 いやでも、さすがに当たりが強すぎではないか?

 そんな疑問も心の中で響いたが、直ぐに鳴ったチャイムの音に消えてなくなっていった。





「それで、地味は勉強とかしているのか?」


 放課後、急な雨で中止となった部活のおかげで僕は地味にそんな質問を投げ掛けることが出来ていた。


 そう言うと、前を歩く地味が足を止め、僕の方へ一歩近づいた。


 そして、次の瞬間。


「あ、あの——っ!」


 ぷっくりと膨らんだ桃色の唇が上下に開き、背伸びに上目遣い、極めつけには僕の両手を包むように握りながらの二文字。


 感嘆符だけでもいいほどに歯切れの悪い空気音が目の前から発せられた。


「ん、な、なんだ?」


 思わず一歩だけ下がってしまった僕。

 しかし、地味は手を放そうとしない。


 まるで、君しかいないと嘆いている様で何とも言えない感情が僕の中で巻き起こる。


「————そのっ、わた、わた……私に勉強を教えてください‼‼」


「……え」


 ぎゅっと掴んだ手をぐっと引っ張られ、僕の体は自然と地味の方へ。

 抱き寄せられる形で動き出した胴体は慣性に勝つことなく、何か柔らかい物の前にて止まった。


 もふもふっ。

 ふわふわっ。


 そして、むにゅっとした感覚がちょうど僕のお腹上あたりに感じた。


「……い、いいけど……」


 もちろん、そのお願いは二つ返事。

 嬉しそうに顔を明るくさせる地味の可愛さは健在だが——その前に、だ。


「けど……地味、お前……む、胸」


「……むね?」


「あぁ……」


「…………ひゃぁっ⁉」


 案の定、高校の玄関口に——小さな高い悲鳴が響き渡った。


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