0011 発覚
フリルは『節々の痛みに効く薬』という魔導書を読んでいた。
ここはお屋敷のフリルの書斎。調合の時はフリル以外、誰も入ってはならない。
「うーん、『腰痛に効く薬』、『股関節の痛みに効く薬』、『足のむくみに効く薬』、どれにしよう?」
棚には、ウフラン魔法街で買った材料が所狭しと並んでいる。壁は棚だらけだった。外国語も魔導書に出てくるため、テーブル兼机には辞書が積み重なって、材料のメモがいっぱいあった。
「よし、今日は『捻挫に効く薬』を作りましょう、・・・『腰痛に効く薬』がまだかなり途中段階だった。」
薬は貴重なので、結構高く売買される。書斎には高い花が花瓶にいけてあった。
『股関節に効く薬』は、白金草の液、猫じゃらしの花穂、檜の樹液、160度の水が材料だ。煮て、抽出する。できた薬はほんのり柔らかい香りがした。この前の『イボのを落とす薬』なんて、すごい匂いだったけど。
薬を箱の中に入れる。万が一、薬が混じったら、化学反応どころではないと、どこかの魔導書に書いてあった。
護身術程度には火の魔法を取り入れようかなとも思っている。しかし、調合の面白さからは天と地だ。
「火よ。」
人差し指の先に火がついた。ここまでである。やる気がしないのだ。
『腰痛に効く薬』を抽出している間に、『捻挫に効く薬』の材料を煮る。今回のオーダーは同時煮込みという、全く違う煮込み方だ。
二つ以上を同時に煮込むことを同時煮込みと調合界ではいうらしい。こっちも机のコンロに鍋をつけて煮る。
火の魔法を使えれば簡単なのだが、魔法の同時行使はかなり難しい。私は作ってるだけで魔法を使ってると王子から聞いているので、コンロをアリスに発注を頼んだ。薪でやってた手間暇を考えれば、使い勝手がこの上ない。
コンロという者は発案されたものではなく、誰かが持ち込んだものらしい。ガスという燃料の観点も持ち込んで、この世にあるのだから、もしかして地球の人が異世界にもちこんだ知識なのだろう。何のために?
そういう観念は捨てて、もう材料が煮立ってきた。そっちの方に頭を回さなきゃ。
その時、トントンとアリスのドアを叩く音が聞こえた。
「・・・アリス。」
「その、お母様がお呼びです。」
「お母様が?後、30分待ってくれる?」
「その、バレました。」
「え?」
「社交や野外に行ってるという嘘がバレました。」
「魔法のことは?!」
私は焦った。
「いえ、まだ。」
私はコンロの火を消すと、材料を取り出した。
「早くしないと、お母様がここに突撃しそうなので、なるべく早くしてください。」
「ええっ!!」
「一つの部屋で何をやってたの!?」
「ごめんなさい・・・。」
このうちに。
アリスがお母様の後ろでサインを送った。
クローズが部屋に封印の魔法をかけてくれたのだ。
「とにかく、部屋まで案内しなさい。」
「はい!」
お母様を部屋に入れないために、先延ばしにするためにこんなに苦労するなんて。
お母様は即刻言った。
「何か隠してますね?」
だって、私以外は綺麗な殺風景な部屋にみえるから。
「いつもどこに行っているの?!」
「あの、社会科見学で・・・。」
「とにかく、ここにはこれから一度も入らないこと。外出する時は、私からの従者を一人はつけますからね。」
そう言って、お母様は話を打ち切った。
「はあ・・・。」
「すいません、フリル様。」
「お母様を安心させれば、調合ができるのに。」
そもそも、魔法というのは安全なのか?




