第2話:若き日の叔父と南岸の村
昔の人々、つまり若い世代よりも先に人生を歩んできた者たちは、自分が歩んできたことについて、いくつかの秘密のうちの一つを必ず胸にしまっている。
それはジョルダ自身も例外ではなかった。
かつてジョルダは、閉ざされた山から来た武人だった。彼がどこから来たのか、その山がどこにあるのかを知る者は誰もいなかった。
人々が知っているのは、ただ追放された武人ジョルダということだけだった。
彼はしばしば、一時の休み場所としてだけ、あちこちへと居を移した。その間にも、腿のそばにある鉈は、年を追うごとに錆びついていった。
空いた時間の多くは、ただ魚を捕ること、酒に溺れること、そして穏やかな暮らしについての自分の空想に沈むことに費やされた。
だが、このところ彼が一度もしてこなかったことがあった。いつもより長く腰を落ち着けたのだ。ヒンディア大陸の南岸、海辺にある村、ビラ村に。
その村の家々は、たいていの家とはまったく異なる土台を持っていた。ここの人々は、家の土台を海水の下に築くことを選んでいた。
そのため家々は浜辺のすぐ近くにあり、その一方で、ココヤシの木々が集落を取り囲んでいた。
ジョルダはその村にすでに3日間滞在していたので、そこに住む村人たちはもうジョルダの顔に見慣れていた。そのときジョルダは、村の漁師市場にいた。
ゆっくりと歩きながら、売り手たちの商品の前をいくつも通り過ぎた。
ときどき、ちらちらと目をやるだけのこともあり、そのせいで何人かの売り手は、彼の振る舞いに落ち着かない気持ちになっていた。
おそらくジョルダの身なりが、金を持たない人間のように見えたせいだろう。彼らは、ジョルダを泥棒のようだと思っていた。
ジョルダの足は、ある商人の前で止まった。そこには、いくつもの美しい装飾品が並んでいた。
海の色をした青い真珠の腕輪、小さなナイフのようにきらめくサメのひれ、金色の羅針盤の彫刻が施された青いペンダント、そのほかにも海からとれた装飾品がいくつもあった。
「なあ、お嬢さん、そのペンダントはいくらだ?」
「申し訳ありませんが、これは売り物ではありません」
「冗談だろう?この世のものには何でも値がある。そのペンダントだって例外じゃないはずだ」
「そのとおりです。でも、どんな価値も、誰がそれを支払うにふさわしいかを知っています」お嬢さんの商人は、ひどく冷たい口調で答えた。
その商人の返した言葉は、彼の胸を短刀で突かれたようにさせた。ジョルダは自分のそのときの身なりに目をやり、しばしのあいだ、小さく笑った。
「つまり、あんたは人を見かけだけで値踏みするってわけか?ずいぶんとおめでたいな。その美しい顔をして、口まで鉈みたいに鋭いときた」
「怖くないのか?そんな態度を取っていたら、あんたの品を買う客なんていなくなるぞ。それに、あんたに話しかける男なんて、いったいどこにいるんだろうな」
「商いのことについては、あなたの批判はもっともです。でも、私の態度を個人として評価する権利は、あなたにはないと思います」
少女は頭の上の覆いをゆっくりと下ろし、ジョルダの目を鋭く見つめた。どうしていいかわからなくなったジョルダは、ゆっくりと腰にある小さな袋に手を探り入れた。
「10枚のムスティカ硬貨だ!」ジョルダはそう言って、その硬貨を商人の前に置いた。
「それは多すぎるのではありませんか?装飾品一つを買うのに、そんなにたくさんのお金を使うなんて」
「構わん、受け取れ。ついでに、あんたの名前も知りたい……」
お嬢さんの商人はゆっくりとペンダントを手に取り、それを布で包んだ。品を差し出しながら、目の前の硬貨のうち、1枚だけを取った。
「値段はたった1枚です。名前は、キラナと呼んでください」
「穏やかな名前だな。よろしく、俺の名はジョルダだ」
ジョルダはその品を受け取ると、夕暮れの光の下、キラナのとても澄んだ顔を見つめた。目の前の光景を見て、ジョルダは心の中でこうつぶやくしかなかった。
「もし女神が今もいるのなら、あんたの言うことを信じよう」。
それだけのあと、残りの硬貨を受け取ると、ジョルダは名前も知らなかった商人に別れを告げた。その商人を、今ではキラナと呼べるのかもしれない。
4週間があっという間に過ぎ去った。ジョルダがその村の漁師の一団に加わると決めてから、すでに数日が経っていた。
人生の意味の答えをまだ見つけられずにいる間の、一時的な仕事としてだった。
今、ジョルダはやや大きめの漁船の上にいた。海の真ん中にいるため、この船の木の床は絶えずきしんでいた。
海の上で揺られることに慣れていない者にとっては厳しい状況で、今のジョルダがまさにそうだった。
ジョルダと同じ年頃の男が、簡素な竹の釣り竿を手に、彼に近づいてきた。
「ジョルダ!無理なら帰れよ、この船を汚されるのは見たくないからな、ははは」
「くだらんことを言うな……お、お、俺はまだやれる」ジョルダはそう返しながら、吐きそうになる口を時おり手で押さえた。
「へえ、本当にか?」
「ちょっと黙っててくれ、リオ、俺は今にも――」
それまでずっとこらえていたものが、ついに口から溢れ出た。食べたものの残りがすべて、船の床にぶちまけられた。
ジョルダは船の縁をつかんだまま立ち続け、力の抜けた足を必死に支えていた。
「くそっ、魚が陸にいてくれたら、ここまでひどくはならないのにな」
「魚が陸にいるっていうなら、もう魚とは呼ばないだろ」
「じゃあ何て呼ぶんだ?」
「カニだな、ははは」リオは腹を抱えて大笑いしながら言った。
その間、ジョルダはただ小さくうなりながら、ささやいた。「面白いな、この野郎」。
そのとき、嵐と波は猛烈に強まっていて、ほかの何人かの乗組員は、釣り糸と網を引き上げることにした。
たまたまそのとき船の舵を握っていたリオは、全員に船室の中へ入るよう命じ、作業をいったん中止すると決めた。
漁師の一団の全員が、体を温めるために一緒に酒を飲んでいた。
中の部屋はとても狭く、外では大きな嵐が待ち構えていたが、それでも彼らが一緒におしゃべりをして笑い合うことの妨げにはならなかった。
「で、どうだ、初めての嵐の感想は、相棒?」
「まあ、こんなもんだ。むしろ不思議なくらいだよ、お前らの腹の中身が、よくそこで踏ん張っていられるもんだ」
「謙遜しすぎだぜ。僕だって子どもの頃はお前と同じだった。もっとひどくて、岸に着いたときに担がれて船から降ろされたくらいだ」
ジョルダはリオの言葉に、ただため息で応じただけで、冷えて固くなったパンをかじっていた。
「戻りたくなったのか?それなら船から飛び込んで、岸まで泳げばいい。助かったら、親指を立ててやるよ」
「そんなくだらない死に方をするようなことは、俺はやらん」ジョルダは落ち着いた様子で返した。
ジョルダは、リオの視線がいつも、自分の首にかかった首飾りに向けられていることに気づいていた。疑わしげな人の目つきだった。
「つまり、そのペンダントはキラナからか?ふむ……お前、あの子に惚れてるんだな?」
ジョルダの頬が、その言葉を聞いて、たちまちゆっくりと赤くなった。そのせいで、ジョルダは酒をさらに深く飲み込んだ。
「これか?……俺が買ったんだよ」
「正直に言うとな、お前と出会ってからこっち、お前はそれを一度も外してない。浜辺で体を洗うときでさえだ」
「本気で言ってるのか?まるでお前が親父みたいだな、さっきからずっと俺を問い詰めやがって」
「ああ、もういい、忘れてくれ。それに、お前がここにいてくれて僕は嬉しいんだ」
友の言葉を聞いて、ジョルダはビールのガラスのジョッキの陰で、小さく微笑んだだけだった。
その穏やかな空気の裏で、ジョルダの鼻は、辺りに漂う空気を嗅ぎ取った。何かがおかしい、と彼の本能がすぐさま告げていた。ひそかに左手で印をほどき、眉間の額がひどくひくついていた。
そのときジョルダの胸の内にあったのは、ただ一言だった。「ジン」。




