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サンキュー!!  作者: ミルク煎餅
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 渾身のおちょくりに気概を削がれたのか、はたまた好きな人の前で違う人との関係を弄られた恥ずかしさからか、まるで別人の様に大人しくなってしまったカルタードが、私たち以外客のいない店内に響かせる様に「ありがとうございました‼」と言いながらハサンをグイグイと押して店から追い出されてしまった。


 結果的によかったんだろうけど、もう少し見ていたかった気もする。


「さ、早く店に戻るわよ。数日前から店休告知してたとは言え、心配だわ。」


 もう頭の中はまだ見ぬ病人の事で頭がいっぱいなんだろう。

 気もそぞろにスタスタと先に行ってしまう。


「えーそんなー、朝食も昼食も食べてませんよー」


「誰のせいだと思ってるのよ‼今日はヨパ婆さんがいつも持病の薬を取りに来る日なのにまだ店を開ける準備も中途半端じゃないの‼」


 まるで子供の様に駄々をこねるハサンにマルコスがピシャリと言う。

 まぁ確かにあの独白とか、カルタードちゃんとのイチャイチャとかなければ今頃はサンタナで朝食兼昼食を食べた上で店にいたかもしれない。


「二人とも忙しいだろうし、よかったら私が簡単な物でも作ろうか?」


 昨日のメニューを考えればサンドイッチは作れるだろうし、サッと簡単に食べれるだろう。


「「…。」」


 二人が目を合わせ、心外な事に怪しげな目で私を見てくる。

 こちとら約20年は一人暮らし、料理ぐらいおちゃのこさいさい‼確かに疲れきってて料理するのは稀だったけど、ビーフストロガノフ食べたいとか、めっちゃ凝った料理を言われたら私も流石に無理だけどちゃちゃっと済ませる料理はむしろ十八番だ。

 なんなら私としては昨晩あんなゲテモノを出してきたマルコスにまでそんな訝し気な目で見られる事に驚きを隠せないよ。


「ちょっとちょっと、私もいい歳した女だよ。料理くらい…」

「え、えぇ、そうよね。」

「は、はい。じゃあ…お願い…しましょうかね?兄さん?」


 えぇ?!私そんなに料理できなさそう?!確かに女子力は欠片も持ち合わせてない性格である事は自負しているけどさ。昨日、今日で会った人間に思われるほど?!


 ――あ?!もしかして包丁なんて見た事もなさそうな深窓の令嬢だと思われてる?!え~そっち?!


「ま、楽しみにしててよ。命までは奪わないからさ」


 ガタガタと震えだした二人を怪しげな笑みで意味深に見つめる。

 今に見てろよ、この野郎共。サンドウィッチ伯爵も驚きの一品作ってやる。


 そう決意をしながら店へと戻り、キッチンに入るとハサンが食材の置いてある場所を説明してくれた。

 超助かるわ~、なんだ。ハサンもちゃんと気使えるじゃん!

 実際初めてのキッチンって料理出来る、出来ないとかじゃなく緊張しちゃうよね。

 許可は貰ってるんだけど、人の家を家探ししてる気分に陥るというか。


 必要な食材を取り出して、いざって時に気が付いた。あれ…マヨちゃんがないじゃない。

 サンドイッチを食す上で欠かせないマヨネーズ、あれ無しでは伯爵、そして二人をあっと言わせる事はかなわん。


「ん~しょうがない。ハサン、お酢ってある?」

「えぇ?!パンにお酢使うんですか?!」


 怪しげだった目が確信した目に変わり、私をキッチンから追い出そうとしてくる。


「いいです、本当にいいですから!店が終わったらサンタナに夕飯食べに行きましょう?!」


 半泣きになりながら私の腕を引っ張ってくるハサンに「いいからいいから、早く仕事しないと怒られるよ?」と言ってお酢と油を持ってこさせてキッチンから追い出して、早速マヨネーズ作りに勤しむ。


 流石にあの可愛らしいキューピットの作り出すマヨネーズの様にはいかないが、まぁまぁな物が出来た。


 私は生のパンよりも焼いたパンでサンドする方が好きだけど、生憎オーブントースターという便利器具は無く、昨日マルコスの料理の元凶になったであろう竈があるのみだ。

 料理は苦手じゃないとは言え、流石にピザでも焼く様な竈で調理した事なんてないし、マルコスの二の舞を踏むのは御免なので火加減に慣れるまでは止めておこう。


 かと言って、あっと言わせる為にも生野菜と冷たいベーコンだけというのは味気ない。

 半熟の目玉焼きをこの竈で作るというのは冒険がすぎる、私もメランコリーアイズを作りだしてしまう自信がある。


 ここは普通の塩味の卵焼きを焼いておくべき。

 そう思い、取っ手の付いた鉄板にベーコンを引いて竈に突っ込む。

 程よくベーコンの油が出て来た所で引っ込めて、溶いた卵を流し込むと思いの他広がって【超薄焼き卵】になってしまった所をフォークで寄せ集める。


 パンにマヨネーズを塗って、キュウリの様な野菜(試食済)を並べ、焼きあがった食材達を乗せていく。


 耳をカットして、食べてみると実家にいる頃よく朝食で出てきたサンドイッチと同じ味がした。


「うん、美味しい。それにしても使いにくいな、竈って。火付けんのも一苦労じゃん。」


 愚痴りながら店への扉を開けると既に開店してしまった様だ。

 見えないようにコソっとカウンターの内側に置くと、接客を終えお客様を見送ったマルコスがこちらを向く。


「私、倒れる訳にはいかないのよ…。」

「昨日の料理を食べても大丈夫ならこれも平気だわ、失礼な。」


 そう言うと、昨日は褒めてくれたじゃない…と恨みがましい目をしながらヒョイっと手に取り、思い切った様にサンドイッチを頬張ると驚いた様に目を見開く。


「美味しい…」


 そう言って口を押さえたマルコスに渾身のドヤ顔をするマリコだった。

ありがとうございました。

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