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サンキュー!!  作者: ミルク煎餅
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「もー‼一人で話してて馬鹿みたいだったじゃないですかー‼」


 独白を続けていたハサンは白い目で見られている事にようやく気が付いた様で、プンスカといった効果音が最適な怒り方をしながら恥ずかしそうに小走りで近寄ってきた。


 実際話しかけても返事もしないくらい自分の世界に入り込んでいて、隣に私がいない事にも気が付かないハサンは"みたい"じゃなくて本当に馬鹿なんだと思うが、私も大人ですから。

 ごめんごめんと適当に謝っておく。


「気を付けてください‼ジャーマンは獰猛なんですからね‼この線の中はジャーマン専用です。偶に路肩に止める御者がいて歩道を歩く人が齧られる事故は少なくないんです。」


 え、そんな事故があるのに路肩に止めちゃうの?!…この街やっぱりおかしいんじゃないかな。


「でもダンジョンからの物資を運ぶには力のあるジャーマンじゃないとダメなんです。ダンジョンからの資源でこの街は成り立っていますからね。ジャーマン牧場のノルトンさんはダンジョンができる前はただの魔物だったジャーマンに森で齧られて目覚めたそうで、それから命からがらジャーマンの巣から卵を取って来て育てたそうです。僕にはちょっと何が目覚めたのかよく分からないんですけど…。」


 十中八九あの爺さんの事だろう。もう何が開花してしまったのかは聞かなくても分かる。

 ただ"変態"に目覚めてしまっただけだ。


「最初近所の人は猛反対したんですが、もの凄い気迫でジャーマンの魅力を演説したけど当然納得してもらえなくて、クリーク長に川の側の土地を購入して育てるからと直々に説得をしに行ったそうですよ。その頃はまだ貧乏な町だったんで、安かったとはいえ纏めて土地を購入してくれると言うノルトンさんに売ってしまった事で住民達も納得せざるを得なくなったんだとか。」


 これまた随分と俗物な長だな!町人の命と購入費用を天秤に掛けてお金選ぶ様な人をトップにしてて大丈夫なの?!この街?!


「家も売り払って、ジャーマンの為に広い原っぱを買ったノルトンさんに奥さんも愛想を尽かせて出て行っちゃったらしくて、かなりの変人として見られてたんだってガンツさんが言ってました‼でも凄い着眼点ですよね‼ダンジョンが出来てからというものクリークでは無くてはならない物で、ノルトンさんすっごいお金持ちになったんですよ‼僕も見習いたいです‼」

「悪い事は言わないからやめておいた方がいいと思うよ、ノルトンさんを見習うのは。」


 キラキラ目を輝かせながらノルトンさんに憧れるハサンに一応注意しておく。


「所でさっきからガンツって人出てきてるけど誰なの?」

「あ‼ガンツさんはあそこの道を入っていった所にあるサンタナって喫茶店の店長さんです!兄さんが良く行くんですよ。強面だけどお喋りでちょっとお茶目なおじさんと、娘さんのアルマちゃんの二人でやっているんです。」

「あ、行った事あるわ。」


 こわもてのおっさん おしゃべり かふぇで検索かけたらもしかして:ガンツって出てきたわ。


「今日お買い物が終わったら、兄さんを誘ってサンタナに食事に行きましょうか」

「そうだね、それが良いと思う!」


 お金はないけど、さすがにまたあれを食べるのは気が引けてしまう。

 色々な店を冷やかしながら商店通りを散策する。


「それで今日は何を買うつもりなの?」


「えーっと今日は日用品と、食材と、兄さんの好きな茶菓子を補充する予定です。昨日は休みだったんで作れなかったんですけど、兄さんちゃんと食事してましたか?」


「う、うん。一応してたよ…」

「よかったー‼本当一人だと食べないんですよ~。いっつも心配で。あ、あそこ行きます」


 そりゃあの出来栄えじゃ作る気も食べる気も無くしちゃうよね。

 ハサンが指した先には恐らく雑貨屋であろう店があった。


「カルタードさんがやってる雑貨屋さんです。何でも揃って便利で激安でなんですよ。」

「へ~激安ジャングル~」

「何ですかそれ」

「何でも揃って激安で便利なお店の事を言うんだよ…。寄るとついついいらない物まで衝動買いしちゃう魔のお店なの…。」

「…??」

「何でもない、私たまに変な事言っちゃう病気なの。」


 記憶喪失に妄言まで…大変ですね。と悲しそうな表情で言われるが、ハサンに言われると若干イラっとするのは何故だろう?


 店に入るとカランカランとベルの音が鳴り響いて、奥から紫のウエーブが掛かった髪をポニーテールにしている20歳くらいの綺麗な女性が出て来た。


「あら、いらっしゃい。ハサン一人なの?マルコスさんは?!」

「兄さんがこの時間にこの店に来るはずがないじゃないですか。」

「なーんだ、詰まんないの。……ハサンなんてお呼びじゃないのよ!」

「なんでですかー!僕が兄さんの為に買い物をしなきゃあの人死んじゃいますよ?!本当に薬以外の事はなんにもしないんですからね?!いいんですか?!」


 ギャーギャーと言い争いを始めてしまった二人に置いてけぼりにされ、店の入り口で佇んでいると私の後ろからカランカランと音がして振り返るとマルコスがいた。


「やっぱりここね。あんまりにも遅いから心配したじゃない。」

「あ、ごめんね。マルちゃん。」

「マリコが悪いんじゃない事くらい分かってるわよ」


 そう微笑んで頭を撫でられる。

 人に頭を撫でられるなんて何年振りだろう?心地が良すぎて柄にもなく照れてしまった。

 私の後ろで綺麗なお顔から般若の形相に変わった人が殺意を抱きながら見ている事も気づかずに。



ありがとうございました。

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