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異世界に囚われた僕と囚われてた姫達  作者: TE$TU
三人目の姫との邂逅
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第五話

 敵の心臓を潰した俺は、すぐさま鎖を出して他の敵を捕縛した。そして一人ずつ手元まで引っぱり、さっきの奴と同じ要領で心臓を潰していく。


「あ、が……」


 こいつは冷や汗が臭い。


「嫌だっ……」


 おい、よだれ垂らすな。汚い。


「し、死にたく……」


 うるせぇ。死ね。


「ば、ばけ!?」


 ばけ? 馬券でも買いたいのか?


「化け物!! 死ね……」


 いや、心臓掴まれながら啖呵切る暇があるなら戦えよ?


 ん? なんかおかしい? 残酷なような気がする。ま、敵なら別にいいだろ。もう一人心臓を潰す為に引き寄せる。


 うん、もんだいなし。じゅんちょーじゅんよー……?


 あれ……? なんか、ねむ……。




 やっと俺が出られたな。


 ふぅ。しかし、結構派手にやってくれたなテツロー? 辺り一面血塗れじゃないか? 猛獣じゃなくて魔物と魔獣がわんさかやってくるぞ? くくくくく。


「しかし、気持ち悪いな……」


 来ているスーツで両手を拭おうと思うが、既に服が虫ケラの返り血で台無しだ。完全に乾く前に洗い流したい。一旦部屋に戻るか。


 十四年ぶりに歩くが何ともないな。やはり、能力を吸収して筋力を上げていたお陰だな。惰眠を貪り深夜に起きた時のような清々しい気分で足取り軽く、歩いて宿舎に向かう。すると宿舎の玄関前で詩と遭遇した。


 まぁ、切り抜けられるだろうな。


「テツローさん!? どうしたんですか!? 血だらけじゃないですか!?」


 おいおい、迂闊に触るなよ。折角の服が血で汚れるだろ? あぁ、彼女の服に醜い虫の薄汚い赤い染みが……。


 正直に話すしかなくなったな。まさか、こんなに早く離れる事になるとはな。というか頭が回転しきれてないのか?


「気にするな、詩。敵を全滅させた所だ」


「え、敵って……」


「倭国の兵隊共だ。数は十人程だ」


「!? こ、殺したんですか!?」


 自国の国民が殺されたのか不安になっているな。血を見れば分かるだろうに……。


「あぁ、皆殺しだ」


 ん、無表情で言ってしまったな。別人だとバレるか?


「! ……貴方、誰ですか!?」


 どうも起き抜けは油断してしまうな。まだ眠い。二、三時間後なら何とかなったかもな。


「ふぁむ、……ブリンガーだ。今はテツローの体を動かしている」


 いかん、あくびしながら「ふむ」とか言ってしまった。間抜けに見えるか?


「あれ? どうしたの詩せんせー?」


 詩を探しに来たのか、ヤタムナヤが出てきたな。


「来ちゃダメ!?」


 おいおい、私は危険人物か。まぁ確かに血塗れの男が子供の衛生教育上、鼻摘まみされるほど良くないのは分かるが、別にいいだろう?


「ヤタムナか……」


「? パパ?」




 私は自室で調べ物をしていたが詩の叫び声を聞き、玄関前に急行した。


「……え?」「どうした!? 詩!? ヤタムナヤ!?」


 其処には、血塗れのテツローを、ヤタムナヤを庇うように抱き締めていた詩が、貧血でも起こしたかのような青白い顔で見つめていた。


 ? 何があったんだ?


「大きくなったな。最後に会った時より……」


 最後? そんなに会っていなかったのか? テツローめ、血塗れになるまで猛獣を狩り続けるとは、益々強くなっていくな!


「……あれ? テツローは? テツロー?」


「何を言っているヤタムナヤ? 目の前に……?」


 ……いや、違う。こいつはテツローじゃない!! テツローの姿だが、テツローの中身じゃない!! テツローの温かさを感じない!!


「貴様、何者だ!!」


 二人の前に立ち、不審者に左腕の剣を突き付ける。巨大化まで覚えた私の剣は、人間の胴体なら簡単になます切りに出来る鋭さを持っている。だが、目の前のこいつからは何も感じない。剣を突き付けられた恐怖も、理不尽に対する怒りも、生きている鼓動も感じない!!


 こいつは危険だ!! テツローは何処に行った!? 拉致されたのか!?


「はぁ……。やはり、まだ戻らないか……。仕方ない、前倒しするか」


 何を独り言を……!!


「質問に答えろ!! テツローは何処だ!!」


 そうだ。私の恩人で私の男で私の全てになった人間は、あの冬の様に冷たくも、無機質でも、ましてや血に塗れて平然としていられる男じゃない!!


 あいつは、私が認めるヘタレだからな!!


「目の前にいる。私の名前はブリンガー。


 本当の名前は尾口 鉄郎。三十四歳だ」


 ……ん?


「な、何を言っている? 検査したが、テツローの年齢は、間違いなく二十歳だったぞ?」


 うん。間違いない。私が密かに採取した血液と髪と皮膚のサンプルを使って確かめた。テツローは二十歳だ。


 決して、私が年上好きとかで美化していたとかではないはずだ!! だから二十歳だ!! お願いだから!!!!


「まさか……」


「ど、どうした詩!」


 詩は何か知っているのか? ……少し、つまらん。


「私達が知ってるテツローさんは、ヤタムナヤちゃんが生まれた時に生きていた人で、今までずっと、十四年間、封印されてた?」


「な、なんの話だ!」


 何を言っているんだ!? 意味が分からん!? つまりテツローの精神は六歳児!? つまりこれもアレか!? 子供の頃の遊びの延長か!? 三十四歳と言うのも嘘か!? 私は一杯、皆に喰わされたのか!?


「さっき、ヤタムナヤちゃん、言ったんです。テツローさんの事「パパ」って……」


 え? ヤタムナヤがテツローをパパとよび、よばれたてつろーがパパで、よんだヤタムナヤが娘で、六歳の頃の子供で、子供が子供を作って、つまり、二人は親子という事で……。


「説明してもらおうか!!?? テツロー!!?? 特に相手について!!??」


 許せん!! 私の夫になる男をよくも!! ……ん? 何か忘れている様な?


「ふむ、完全分離する為には両腕を切るしかないか」


「ひっ」


 何!?


「やめろ!!」


 っ!? 消え……!!


「漆、悪いがもう時間が惜しい」


「ぐっ……!」


 何時の、間に、腹が……!


「漆さぁん!!」


「そこで大人しくしていてくれ。君と詩に関しては、私も傷付けたくないし、殺したくないのでね?」


 ふざけるな。


「……る、か」


 ふざけるな。私の男が訳の分からん寄生虫に支配されているだけでも不快だというのに!!


「何?」


「負けて! たまるかぁ!!」


 テツローの声で!! 私を慰めるな!! 私を宥めるな!!


「この、偽物がぁああああああああ!!!!」




「この、偽物がぁああああああああ!!!!」


 ななが、叫んでる。テツローに、パパに、アレ?


「なな? パパ? あれ? テツロー? あれ? パパがテツローで? テツローがパパで? あれ?」


「!「 ヤタムナヤ」?」


 二人の声が重なった。


 思い出した、全部。私がパパとママにされた事。されなかった事。


 教授が優しくしてくれた事。教授が二人目のパパになってくれた事。


 教授が私を助ける為に殺されて、私を何処にも通じていない何処かに閉じ込めた事。それをさせたママ達の事。


 みんなが私を守る為に、私の呼び出した妖精さんと合体した事も。合体して初めて呼んだみんなから全部聞いた。みんなを脅して追い込んだパパ達の事も。


 許さない。


「……から……て」


「ヤタムナヤ……?」


 絶対に許さない。私の大切な、テツローを!! 教授を!! みんなを!! 私まで!!


「テツローから出てって!! パパ!!」


 みんな!! 来て!!




 何が起こった? 漆から赤い闘気が立ち上り始めたのは、まだいい。どうにでもなる。だが!


「みんな! 来てくれてありがとう!!」


 姫の力が元に戻ったのか? なのに普通に喋っているのか? あの子が?


「ふん、あの籠手め。道理で妙だと思った。しかし、我々まで微睡わせていたとは……」


 久利生、久し振りだな。相変わらず傲岸不遜な家庭教師だ。しかし、地下のあの時に聞いた時から怪しんでいたが、娘に取り込まれていたのは本当だったらしいな! 他の奴らも!


「お嬢様、お久しぶりでございます」


 榊原、お前まで。そうか、あの時に……!!


「やーちゃん! 元に戻ったんだね!!」


 げぇっ!? 毛利!?


「怠い。眠い。戦い?」


 幕内、お前もその変な着ぐるみパジャマまだ着てるのか。見苦しいぞ。


「……敵は? アレ?」


 ……敵、だと?


「ヤタムナヤ? どういうつもりだ!? 私はお前の父だぞ!?」


「違う!! 私のパパは一人だけ……! 殺されちゃった教授だけだよ!!!!」


 ちっ!! 余計な事まで!!


「私はお前の為に最善を尽くしたぞ!! お前の母と共に、この国の外の連中に立ち向かう為に!! 」


「そんなの知らない!! 」


 百年以上を費やした俺の計画が!! 破綻すると言うのか!? こんなゴミ共に誑かされた娘のせいで!!


「……いいだろう。かかってこい」


 まさか、娘と戦う事になるとはなぁ!!


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