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異世界に囚われた僕と囚われてた姫達  作者: TE$TU
倭国第伍魔力研究所での日々
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エピローグ 抵抗軍

「大鷲、ゴードン・イェーガー様! 部隊を引き連れ、ご帰還!」


「続いて、猟犬、フーパー・ブレア様! 同じく部隊を引き連れ、ご帰還!」


 入り口で衛兵が声高に叫び、我々二人の帰還を知らせる。抵抗軍のアジト中から拍手と歓声が沸き起こる。


 長かった。二人で潜入する為、倭国人の偽名を使い、今は亡き両親から貰った髪も染め、敵の懐に入り味方を作る作戦は完遂するのに五年を要した。


 五年もかかった作戦の二つの目的の内、一つは達成した。


 戦場から近く、首都から程よく遠い第伍研究所の人間の抱き込み作戦。及び、前線基地化。


 あの研究所は前線の戦闘に向かない人間、前線から退いた人間、失敗した人間、左遷用の場所だ。


 そんな場所に不満を持ち、魔王に対して懐疑的になった人材の宝庫だ。抵抗軍には必要な要素の一つだ。


 時期が来れば、蜂起して奪い取れたのだが、私は欲をかき過ぎた。


 研究所に侵入した二人の人間。男の方は何の害もないと最初に報告された時には書かれていた。しかし、少女は怪しかった。彼女の格好は今の人間では着ないようなドレス。百年前に封印された姫ではないかと思った。すぐに彼らを連れてくるように指示したが、その時には彼等は地下闘技場の生贄にされていた。


 遅かったか……!


 そう思っていた瞬間だった。扉の横の壁を吹き飛ばし入ってきた青年。その腕の中には報告にあったドレスを着た少女。


 そして、伸された状態で鎖で簀巻きにされて引きずられている戦闘課の五郎丸 漆君だった。


 彼は実験動物どころか戦闘課の職員をも素手で圧倒したのだ!


 彼を引き入れよう。そう思った私は悪くない筈だ。


 彼は交渉が下手だった。明らかに無理をしていた。好感も持てるが、それを見逃す手は無かった。


 そして、事態は一変した。『抵抗軍襲来』とされている事件から四日後の朝。手紙が数枚届いていた。それらの宛先は全て私宛。差出人は此処(第伍魔力研究所)以外の全ての研究所。


 驚愕した。その内容にだ。


 私は大慌てでゴードンを呼び出し、相談した。


 その結果、私は執務室(ここ)で彼らを引きつけ、その間に勧誘した人材と共に南の拠点のある農村だった場所まで移動。私は地下闘技場の外部の客を送迎する為の魔導竜で、後から追う形で合流する手筈になった。


 そして、指定の場所で合流出来た我々は、数時間の後に抵抗軍本部に辿り着けた。


 道中、魔物などにも襲われたが、こちらの数による力で撃退出来た。


 ……何と王に報告しよう。


 我ら二人の心は同じ事を思った。




「「失礼致します」」


「イェーガー家、四代目大鷲、ゴードン・イェーガー、此処に」


「ブレア家、五代目猟犬、フーパー・ブレア、此処に」


「よく……。帰った……」


「「ありがたきお言葉」」


「して、……結果、は?」


 我らの王、リジュエ六世様が齢九十を超える体を従者の若いメイドの娘に支えられながら、上体を起こされる。


「恐れながら、私から説明させて頂きます。


 ……半ば(・・)、達成いたしました」


「半……ば?」


「何が起きた」


 王の傍に佇んでいらっしゃる方は、リジュエ六世様の三人のお子の中で、本部の戦闘指揮などをされておられ、六家紋の『武功』、白馬を継承なされた長兄であらせられる鎧を着込んだ美丈夫、ガイナ・リジュエ様。


 ガイナ様は私を獲物を見つけた大鷲の様に両目を見開いて、叱責の圧力をかけられる。


「……ある青年が、魔王に宣戦布告致しました」


「「「!!」」」


 その場に居る私とゴードン、ガイナ様以外の六家紋の継承者達が目に見えて驚く。


「……ほう? 一人、でか?」


 王は明らかに興味を持たれたな。


 この方は、生まれた時から王である事を義務付けられた方、それなのに心は自由だ。その発想、発言に魅力を感じ、惹かれた者も抵抗軍に多い。


「いえ、傍には姫と思われていた少女が一人と一週間前に着任した戦闘課の女性職員、一名。それと救護室事務員が第伍魔力研究所に残っています」


「はっ! たったそれだけで宣戦布告? 五年も潜入して鼻がやられたか?」


『理性』の梟を継承した八代目梟である女、パル・ヴォパヌ殿が椅子に座りながら嘲る。


「余力を残した状態で、倭国のゴーレム『雛形』を単騎で撃破できる男が一人いれば十分だろう」


 そのゴードンの言葉にその場にいる皆が静まる。


「それは、誠ですか? イェーガー卿?」


『信心』の祈る乙女を継承され、二代目の祈る乙女であり、我々に協力してくれる姫の筆頭でもある、蝋燭の火に照らされた銀髪が美しい女性、カタハニア様がゴードンに問いかける。


「あぁ、侵略戦争当時の骨董品だったが、硬さは今戦地に配備されてる奴と変わらんだろう。映像もあるぞ?」


「……あっはっはっはっはっ! ごほ! ごほ!」


「「「「「「陛下!」」」」」」


やはり、陛下のお身体はもう……。


「……ふぅ。よい、気にするな。


 しかし、面白い。あぁ、面白い、気骨ある男、だ」


 そう言って陛下は笑っていた。


 彼が自分達の味方になると言っている様に。


 陛下……! 申し訳ありません……! 彼は私達に、少なからず嫌悪感を持っているのです……!


 言えなかった。そこにいる全員、久しぶりに陛下が破顔された所を見たからだった。




 その場は陛下の体調を考え、お開きとなり各々自分の役割へと戻った。


 私は五年ぶりとなる執務室の掃除を始めていた。抵抗軍は人材不足である。その為、陛下とその一族の方以外の身の回りの世話は自分達で行っている。


 古くなって駄目になってしまった本を纏め終わると、ドアをノックする音がした。


 急いで開けると意外な方が立っていた。


「ブレア卿、少しお時間宜しいですか?」


「珍しいですね。貴女が他の継承者の執務室にやって来るなど。


 あぁ、すいません、今座る物を見つけてまいりますので」


 何とカタハニア様が訪ねてこられた。この美貌で我らより長い年月の中を生きておられたこの方は、抵抗軍生まれの者なら子供の頃に粗相の世話などを含めた世話を徹底的に焼かれた事も多い為、頭が上がらない者達が少なくない。


 あのガイナ様でさえ、カタハニア様に宥められると何も言えなくなってしまうぐらいだ。


 木製の椅子を何とか見つけ、カタハニア様にお座り頂いた。正直こんな状態の執務室にお通しする事に気が咎めたが、彼女の用件は察しがついていた為、我慢して頂くしかない。


 私は執務机の備え付けの椅子に座り、ちょうどカタハニア様と対面する形になる。


「掃除の最中に申し訳ありません。用件は……」


「分かっています。姫だったと思われる少女についてですね?」


「はい」


「先ず、彼女達と共にいる青年は、人外じみた膂力と異能を持っています」


「それは、我らの……」


「分かりません。彼に訓練と称して戦わせた時の映像を見たのですが、腕輪が籠手になり、人一人呑み込める程の巨大な龍の顎門の様な形になったのです。


 しかも未確認の、人外の者を呼べる異能も持っている様でして……。正直、混乱してます。


 何かお心当たりありませんか?」


「……いいえ、ごめんなさい」


「いえ、それはこちらの台詞です。お役に立てず、すみません」



(謎の未確認の姫に、異能を扱う人外じみた男。


 まさか、貴女の仕業なの?


 夜雨?)


 何処かで笑い声が聞こえた気がした。


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