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22 いざ、リーンディアへ 前編

 とうとう、リーンディアへと向かうと決めた日がやってきた。


 準備は万全! と言いたいところだけど、時間の都合上、やはりそれなりくらいで収まっている。

 私のレベルは、現在13。そしてコクヨのレベルは、現在8。やはり精霊族なのがネックなのか、私よりも数段低くなっている。とはいえステータスはほぼ同等なのだが。


 私は10を越えた辺りから、そしてコクヨは6を越えたあたりから、少しずつレベルが上がり辛くなった。そのため、現在は花畑フィールドではなく、黒砂フィールドでレベル上げを行っている。

 レベル上げの基本的な方法は変わっていない。私が釣りを行い、コクヨが纏めてモンスターを倒す、という方針だ。ただ、一度の魔法で敵を倒し切れず、二度、三度の魔法が必要になり、効率は酷く落ちてしまったが。


 スキルに関しては、2、3日目の好調が嘘のようにぱったりと入手が途絶えてしまった。そのため私は『ファイアボール』『ライト・ビロウ』『クリアシールド』『マジックキュア』『飛行』『テレポート』の6つ、コクヨは『ダーク・ビロウ』『リトルキュア』『リバイバル』『クリアシールド』の4つをスキルとして覚えていた。


 と、ここまでの状況をまとめた上で、ただいまの状況である。

 花畑フィールドに続く門の前で、私とコクヨ、グスちゃんにカインが集まっていた。


 ……そして物凄く、緊張感が漂っていた。


 このパーティで遊べたら楽しいんだろうなあ、なんて夢想していた昔の浅はかな私グッバイ! という状態である。

 というのも、どうやらグスちゃんとカインは、以前からの知り合いだったようなのだ。

 回想として、時間軸を少し前に戻そうと思う。


 □


「やほ、グスちゃん!」

「こんにちは、グスさん」

 門の前で待ち合わせをしていた私とコクヨは、グスちゃんの登場に手を振って迎える。グスちゃんはぐるぐると肩から右腕を回し、にい、と笑った。


「フィールド出るのはいつぶりかなー」

「やっぱ、ずっと刀打ってたの?」

「まあな。やっぱそれが楽しかったし、それをここでの仕事ともしてたしな。ま、俺のことはいーだろ、別に。で、もう一人、手伝ってくれる奴ってのはまだか?」

 グスちゃんの問いかけに頷く。


「うん。たぶんもうちょっとで来ると思う」

「あ、そういえば。ヒカリのお友達さんの、お名前もまだ聞いていませんでしたね」

 コクヨの言葉に、ぽんと手を合わせる。

 今日の今日まで顔合わせの機会が取れなかったため、コクヨとグスちゃんはまだカインに会っていないのだ。というより、会ってないどころか名前すら教えていなかったのだった。


「うんとね、カインっていうんだ! すごい強いんだから!」

「……カイン?」

 私の言葉に、グスちゃんが顔を一瞬強張らせる。しかし、すぐに頭を振った。私はその仕草を疑問に思って、彼に問いかける。


「どしたの、グスちゃん?」

「んや、なんでもねーよ。ただ、知り合いに同じ名前の奴がいたから、びっくりしちまっただけだ。でも、カインなんて名前、珍しくもねえしな」

 クォーターズ・オンラインではオンラインゲームという範疇では珍しく、複数の人間が同じ名前をつけられるようになっている。もし普通のゲームであれば、私のように珍しくない名前だと、『☆ヒカリ♪』だとか『†ヒカリ†』だとか『緋華莉ヒカリ』だとか、他のプレイヤーと差別化を図らなくてはならないのだが、このゲームでは『ヒカリ』と、すんなり登録できる。どれくらいの数、同名のプレイヤーがいるのかは、あまり考えたくないが。


 と、そんな会話をしていたら、街の方からカインがやってくるのが見えて、私は彼に向かって手をぶんぶんと振る。彼も私に気付き、こちらに駆けて来る。が、その途中で何かに気付いたように、ぴたりと立ち止まった。少し距離を置いて停止した友人に、私は首を傾げてしまう。


「カインー、どうしたの?」

「ねえ、今日の同行者って、そこのドワーフ?」

「え、そうだけど……」

 そんな会話を交わす横で、グスちゃんもまた硬直していた。そして再起動したかと思うと、びしりとカインを指差した。


「カインって、やっぱお前かよ!」

 グスちゃんの口から、そんな言葉が漏れる。大きい声量に思わず肩が跳ねた。それに対応するかのように、カインの口からも激しい口調の言葉が出始める。


「オレだって驚きだってーの! よりによって『ブラック・ニーサート』のグズちゃんかよー、テンション下がるぜー」

「俺はグズじゃねえ、グスだ! そっちこそ『ノワール・ティッツ』のカインかよ! つーか目上にそのクチの聞き方はなんなんだよ!」

「目上ッ! ハッ! オイオイオイ、普通のオンゲなら芝生やしちまうよ! ゲームで目上とか頭沸いてんのかよ、グズちゃんさぁ!」

 ものすごい罵詈雑言の応酬だった。私とコクヨは、それをあわあわと見守るしか出来ない。が、止めないわけにもいかなかった。『ヒカリ』だったら実際にこの場面だったら入るだろう。

 私は勇気を出して、彼らの間に入る。


「あの、2人って知り合いだったの!? っていうか、『ブラック・ニーサート』とか『ノワール・ティッツ』って何!?」

「知り合いっつーか、なんつーか……」

「まあグズちゃんとオレ、知り合いには違いねーよ。文字通り、知ってるだけだけどな!」

「だから、そのグズちゃんはやめろ!」

 どうやら犬猿の仲であるようだった。というか中身がめぐだと知っていると、その豹変振りに驚いてしまう。普段のめぐは、誰かを嫌ったり貶したりするような子ではないから。ロールプレイ上手いなー、と変なところで感心。

 しかし喧嘩しているだけでは、何が何だか判らないままだ。


「ええと、どっちでもいいから、何があったのか教えて欲しいんだけどー……」

 その言葉に答えてくれたのは、グスちゃんだった。


 クォーターズ・オンラインに限った話ではないのだが、MMORPGには「クラン」という制度がある。クランとは、簡単に言うとプレイヤーで作る集団のことだ。このゲームでもそれは違わず、クラン規模で色々なイベントがあったりするらしい。


 で。かつて『エストゥディアンテ』というクランがあったらしい。しかしそのクランはある日、トップに君臨していた2人を中心に、些細なキッカケで内部分裂を起こしてしまったのだという。

 そして出来たのが『ブラック・ニーサート』と『ノワール・ティッツ』という2つのクラン。以来、その2つのクランに所属する同士は、犬猿の仲、というわけだそうだ。

 ちなみにグスちゃんは『ブラック・ニーサート』の代表と仲が良く、カインは『ノワール・ティッツ』の代表と仲が良い。そのため、犬猿の仲っぷりが他に比べて激しい、とのことだった。

 ちなみにグスちゃんの工房は『ブラック・ニーサート』から貸し出されているものらしい。

 グスちゃんから聞いたことを纏めると、こんな感じだった。


「……壮絶だねー」

「まあ、一時期掲示板でもその話題で独占されてたくらいだしな……」

 βテストからこのゲームに参加していたプレイヤーを多く抱え持つ、影響力を持つクランだったそうだから、その衝撃は計り知れなかったらしい。


「ってわけで、オレはグズちゃんは助けねーから、そこんとこシクヨロ☆ あ、もちろんヒカリとコクヨちゃんはキチっとお守りしますぜい!」

「俺だって、おめーに助けられるほど弱かねーよ。……とりあえず行くか」

 ふん、と顔を背けあう、グスちゃんとカイン。

 なんだか、前途は多難そうだった。


 □


 というわけで花畑フィールドを進む私たち。

 が、普通に進んではいなかった。思いっきり爆走していた。


 というのもカインが『疾走』というスキルを覚えていたお陰だった。スキル『疾走』はレベルによっては乗用車以上のスピードで走ることが出来る、というスキルだ。手を繋いだり紐で結ばれたりすることで、他のプレイヤーも運ぶことが出来るらしい。

 ただし操作性は悪いらしく、障害物を避けて進むなどの繊細な動きは出来ない。そのため、花畑フィールドや草原フィールドのような平地で足を取られず、障害物もないようなフィールドでしか活用できないようだ。


 カインと私が手を繋ぎ、私とグスちゃんが手を繋いでいる。そしてカインの逆の手はコクヨと結ばれていた。カインは「オレは両手に花がいいぜ」なんて言っていたけれど、この順番になったのは、グスちゃんの手を取りたくなかったからだと断言できる。

 というわけで、私たちはモンスターの存在を全てスルーし約30分ほどで、次のフィールドである「湖畔フィールド」にやってきたのだった。


「おお、大きい湖、きれーい!」

「本当ですね!」

 私とコクヨは街から離れたフィールドにはやってきたことがなかったので、湖畔フィールドは初めて訪れるフィールドだ。目の前にある大きな湖の水面は緩やかに揺らいでおり、陽の光を反射してきらきらと輝いていた。


 カインの話いわく、このフィールドは湖の周りをぐるっと周っていくのが普通らしい。

 湖を泳いでいったり、湖の上空を飛んだりして直線距離を進むことも出来るのだが、そうすると、ごく稀に『湖の主』が出てきて戦闘になるそうだ。ちなみに遭遇した場合は、戦闘の回避は不可。湖の主の力によって、湖に結界が張られ、どの手段でも逃げられなくなるそうな。

 今回は私たちというお荷物があるため、普通にぐるっと歩いて進む。『疾走』のスキルは万が一にも湖に落ちては困るため、使用を控えた。


「っと、早速お出ましだぞ」

 カインが言う。見ると、狼のようなモンスターが二匹、沸いていた。黒い毛並みを刺々しく逆立て、低く唸り声を上げている。私とコクヨは彼らの後ろに下がって、それぞれが敵の動きに備えた。


「ひゃっはー! いっくぜー!」

「おいこら、カイン! 一人で飛び出すなってば、おい!」

 カインが淡い光を足に纏って一人飛び出し、ハンマーを両手で抱えたグスちゃんがそれに続く。

 カインがするりとモンスターの死角に入り、一匹目の獣を顎下から蹴り上げる。その隙をもう一匹のモンスターが狙おうとするが、見事にグスちゃんの振りかぶったハンマーに捉えられ、茂みの方へと吹っ飛ばされていった。

 カインはその間に姿勢を整え、体勢を崩した一匹目のモンスターの脳天に膝を落とす。グスちゃんもそれに続くように、その体躯にハンマーを振り落とした。

 その間に、茂みに吹っ飛ばされたモンスターが戻ってくるが、カインもそれは把握済みのようで、そちらに魔法を一発撃ちつける。獣の足元を狙ったそれは見事に脚に命中し、敵は飛び上がって甲高い悲鳴を上げた。


 お互いがお互いの死角を補うように動きあい、見る見る内にモンスターにダメージが蓄積していくのが見て取れる。罵詈雑言を交わしつつも、何だかんだで戦闘の相性はいいようだ。元々1つのクランに所属していたというし、一緒に戦ったことがあるのかもしれない、と思った。


 見ているだけでは申し訳ない。そう考えた私は、ほとんど息絶え絶えな敵を見やる。

 敵の姿を見る限り、敵は恐らく闇属性。ならばここは『ライト・ブロウ』を使うべきだろう。


「光よ、波紋となりて敵を呑み込め――……2人とも、魔法行くよー!」

 詠唱を溜めてから、私は2人に声を掛ける。2人が身を引いたのを確認してから、私は魔法を一発ぶちかました。


「『ライト・ブロウ』!」

 光の渦がモンスターを呑み込む。2体のモンスターは引きずりこまれるように魔法に引き寄せられ、断末魔を上げた。レベル的に威力不足ではあるのだが、2人がダメージを蓄積してくれたお陰で、ちゃんと倒せたようだ。


「ヒカリ、ナーイス!」

 カインが宙を舞いながら、ぱん、とハイタッチをくれる。コクヨと、グスちゃんともそれぞれハイタッチを交わして、私たちパーティの初戦闘は、その雰囲気の悪さとは裏腹に、無事に終えることが出来たのだった。


 □


 数え切れないほどの戦闘をこなし、数時間をかけて湖畔フィールドの中ほどまで進んだところに、その壁はあった。

 湖のすぐ脇から、木々の生い茂る森の方まで伸びる壁は、カイン曰く秋国と夏国の関所らしい。つまり、この壁の向こうはもう夏国、ということだ。

 壁には開け広げられた、大きな金属製のドアがあり、その左右をスピリシアの兵士が槍を持って警戒している。


「でも関所って言う割には、湖までは壁、伸びてないんだね? 上もそんなにないし」

「あ、上空は結界張ってるから通れないぜ? 地下も同様な。湖の方は、犯罪歴のあるやつは、こういう関所抜けられないようになってるから、そういう奴らのための抜け道なんだよ」

「あー、そういうこと」

 湖には『湖の主』がいると聞いていたから、関所を通らずに隣国に行くには相当のレベルが必要とされるはずだ。その苦労に見合う犯罪ってどんなのだろう。

 と、そこまで考えて、ふと根本的な疑問がわいた。


「ていうかこのゲーム、そもそも犯罪できるんだ?」

「泥棒とかショボイのから、怪しいクスリの密売まで、何でもアリってな。ちなみにそういう系のクランも当然ある。住人でやってる自警団の奴らとイタチゴッコを繰り広げてたりな」

「あ、そんなのあるんだ。……ていうか怪しいクスリって何?」

 私の疑問に答えてくれたのは、グスちゃんだった。オレの説明取るなよ、なんてカインが空中で脚を組みながらぶすくれるが、とりあえずはスルー。


「まあ、そのなんだ。……惚れ薬とか、だな」

「あるのそんなクスリ!?」

 思わず大声を上げてしまった。

 隣で聞いていたコクヨも、口元に手を当てて、目を見開いている。


「なんか、薬剤スキルで出来ちまったらしいぞ。住人に使うと好感度大幅アップ、とかいう効果のクスリらしい。まあ、流石に現物は見たことないな、俺も。『この世界はもう一つの世界。だから何でもあり。楽しめるだけ、皆で好きな楽しみ方を』って四季も公言してるしな。自由度はとことん高いみたいだぞ」

「何でもあり、か」

 流石に麻薬とかまではないよね、とちょっと嫌なことを考えつつ。

 本当にここはすごい世界だな、と思う。

 ていうか四季がすごいのかもしれない。いや、こんなもの作ってる四季は普通に凄いんだけど。


「ってわけで、グズちゃんのつまんねー話もキリがついたところだし。行くか!」

 カインの言葉に、皆が続く。グスちゃんはカインの言葉に、ち、と苛立たしげに舌打ちしていたが。

 カインたちが門番に腕輪を見せながら、関所を通っていく。犯罪歴などがあると、腕輪の色が変わるので判るらしい。

 私たちも彼らの真似をして、腕輪を見せながら関所を無事通り抜けた。


 というわけで。

 私たちは、結構易々と「夏の国アグナ」に辿り着くことが出来たのだった。


「あ。ちなみにもう夏国だから、いま死に戻りすれば夏国の首都に行けるけど、どうする? そっちの方が普通に進むより早いぜ?」

 カインはそう言ったが、私とコクヨは揃って首を横に振る。ゲームの中とは言え、“死ぬ”のは普通に恐いし、勘弁願いたかった。痛みはないとは言え、獣に爪で切りつけられるとか、補食されるとか、絶対嫌だ。


「だよなー。まー、あとは湖畔フィールドの残りと街道フィールドだし、ここまで来るよりは楽だから、普通に行くか。オレに任せとけば、ちょちょいのちょいだぜ!」

 思わず学校での会話を思い出し、ぶほっと吹き出してしまった。しかしコクヨには通じなかったらしく、「?」と首を傾げられてしまうのだった。


 □


 それからまた数時間。カインとグスちゃんに守られながらの旅は無事に進んだ。街道フィールドは人の手が入っているという設定らしく、決まった道に沿っていけばほぼ魔物は出現しないらしい。その事前情報通り、魔物に会ったのは片手で数えられるほどだった。


 そんな事情もあり、私達は軽々と首都の街にやって来ることができた。その街並みは、いつだったか写真で見たヨーロッパ辺りの風景に良く似ている。煉瓦造りの道に、漆喰の家々。秋国とは別の意味で、THEファンタジー、という空間だ。

 その街を行き交うのは人間ばかり。そんな中、精霊種で固まっている私たちは少しだけ浮いているように感じて、思わず身を竦めてしまう。


「んじゃ、とりあえずここでいったんログアウトでもして休憩かねー」

「あ、少し、この街を見て回っても大丈夫かな?」

「まあ、ログインの限度時間までならいいんじゃね? あんま余裕ないけど」

 カインの言葉に、メニューを開いて時間を確認する。カインの言うとおり、あと30分ほどしかログアウトまでの時間は残されていなかった。

 全員で次のログイン時間を約束しあった後、カインが全身をほぐすように伸ばす。んー、と声を出しながらやや右に身体を傾ける様子が中身めぐそのままで、ちょっとにやついてしまった。


「んじゃ、オレはお先に休ませてもらうわー」

「うん、本当にありがとね、カイン! コクヨと、グスちゃんも、ついてきてくれてありがとう!」

「いえ! わたしも、ヒカリと一緒にここまで来れて嬉しいです!」

「ま、気にすんなって。久しぶりにフィールド出るキッカケになったし、逆に良かったさ」

「グズちゃんは引きこもりだもんな~!」

「だからその……ああもういいッ!」

 ここまで苦楽を共にしたというのに、やっぱりこの2人の仲が宜しくなることはないようだ。というかカインが一方的に突っかかっているのだが。


「んじゃーなー!」

 その言葉と共に、カインの姿が消える。グスちゃんはこの国に知り合いがいるとかで、一人で街に消えていった。

 コクヨと2人、ぽつんと残される。お互いに顔を見合わせて、に、と笑い合った。

 どちらともなく向かい合って、パン、と両手を合わせる。


「来ましたね、アグナ!」

「うん、来たね!」

「観光、しましょう、ヒカリ!」

「だねっ!」

 お互いに、思わずといった様相で笑顔になってしまう。コクヨも珍しく積極的に見えて、たぶん相当に浮かれているようだと思った。そして私も、浮かれている。自力ではないとは言え、別の国に来ることが出来た。その事実が、すごく嬉しくて、我慢していても浮き足立ってしまう。

 あえて言うなら、海外旅行にでも来た気分、とでも言えばいいのか。

 とにかく、私たちは満面の笑みで、2人一緒に大通りを歩いていった。


 □


 アグナの首都を見て回るのは、とても楽しかった。コクヨと一緒に出店のデザートを食べたり、秋国とは品揃えの違う商店を見て回ったり、民家を回ってみたり。精霊族が珍しいのか、みんなとても良くしてくれて。

 だけどそんな楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうもので。


「あ、もうログアウトの時間ですね」

「だねえ」

 『ログアウト1分前です』そんな機械的なシステムメッセージが脳裏に響くように、聞こえてくる。私はもっと見て回りたい気持ちになって、でも、目的はリーンディアなのだと再度自分に言い聞かせる。そもそもの目的が、リーンディアに行って姉の動向を探ることなのだ。

 ログアウトしたら、お昼を食べて、しっかり休憩して、また冒険の続きをはじめなければ。


「じゃあコクヨ、また後でね!」

「はい、あとで!」

 2人で手を振り合って、お互いにログアウトした。

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