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第6話 悪魔の差し入れ

実話を元にしたオリジナル介護日常小説です!介護士の本当の願いを知って頂けたら幸いです。

 ここは、個性豊かな大先輩(ご利用者様)たちが暮らす特別養護老人ホーム『なないろ荘』(入所型介護施設)。 私(中堅介護士)30歳、と新人君(介護未経験者)19歳のバディは、ご家族の差し入れに困惑中……

 おや、今日もここに(誤嚥的な意味で)迷える介護士(私)がまた1人……


私 「はぁ……どうしよう」


新人君 「パイセン、どうしたんすか?」


私 「……見てよ、これ。」


新人君 「ローストビーフ丼と…みたらし団子っすね!美味そー!今日の昼飯っすか?」


私 「バカ、違うわよ。いさむさんところのご家族からの差し入れよ……」


新人君 「え、差し入れ?俺達に?でも、1人分しか……」


私 「……はぁ。いさむさんによ。」


新人君 「……(フリーズ)……ハッ(我に返る)いさむさんに!?3日前、誤嚥性肺炎が治って病院から帰ってきたばかりっすよね!?」 

(※誤嚥性肺炎 : 食べ物や唾液、胃液などが誤って気管や肺に入り、そこに含まれる細菌によって肺に炎症が起きる病気)



私 「その通りよ。これ、どうしろって言うのよ。しかも食べてるところ写真に撮って送ってくれって……」


新人君 「ご家族さん、何考えてるんすかね……」


私 「何も考えてないのよ。今のいさむさんの現状から目を背けて、元気だった頃のいさむさんを重ねて見てるの」


新人君 「あぁ……」


私 「でも、ご家族からの頼みを無下にできないのも私たち介護士の辛いところよ」


新人君 「でも、どうするんすか?」


私 「まぁ、やれるだけやってみるわ」



ー私、調理に取り掛かる。

 まずローストビーフ丼はローストビーフをすべて取り除き、ローストビーフの味が染み込んだご飯だけをフードプロセッサーにかけ、ペースト状に。

 みたらし団子はみたらしのタレだけを慎重に削ぎ落とし、パックに残ったみたらしソースもかき集め、『アイ◯カルゼリー ハイカロリー(スイートポテト味)』に上から垂らすー

(※アイ◯カルゼリー ハイカロリー : 少量で効率よくエネルギーや栄養を補給できる栄養補助食品)



私 「出来た…!!(汗を拭う)」


新人君 「いや、これ、ほとんど別物やん!?」


私 「しょうがないでしょ。こうでもしなきゃ食べられないんだから!(ほっぺを膨らます)」


新人君 「……(やべ。パイセン、ちょっと可愛い)」


私 「ちょっと新人くん!?聞いてるの!?」


新人君 「聞いてます聞いてます!(焦)」


私 「よし、いさむさんのところへ行くわよ!」


新人君 「はい!」



ー私と新人君、いさむさんの居室へー

コンコンコンッ



私 「(ドアを開けて)いさむさーん、お加減どうですかー?」


いさむ 「(ベッド横たわったまま)……」


私 「次女さんから差し入れですよー、ローストビーフ丼と、みたらし団子でーす!」



ー先ほど取り除いたローストビーフをいさむさんの口元へー



私 「(小声で)今よ!写真撮って!」


新人君 「え、あ、はい……!」


私 「こちらはみたらし団子でーす」



ー先ほど同様、一串だけ残しておいたみたらし団子をいさむさんの口元へー



私 「(小声で)新人くん、もう1枚!」


新人君 「(小声で)……っす」


ー私、すかさずローストビーフと無傷のみたらし団子を隠し、ペースト状のご飯(ローストビーフの残り香あり)とアイ◯カルゼリー(みたらしソースがけ)をいさむさんの口に入れるー



私 「いさむさん、美味しいですかー?」


いさむ 「……うまい。」


新人君 (いけた……!?)


私 「良かったー!次女さんに『美味しかった』って伝えておきますね!(ウソ)」


いさむ 「……頼む。」



新人君 (いさむさん、子を思う親心……泣ける!)


私 「(アイ◯カルゼリー全量と、ご飯ペースト1/3摂取完了)頑張って食べましたね!ゆっくり休んでください。」



ーベッドの頭側と足元のギャッチを少し上げ、退室するー

(※ギャッチ : 医療・介護用ベッドの背もたれや膝部分の角度を調整し、頭部や上体を持ち上げる機能や操作のこと)



新人君 「なんでギャッチ上げたんすか?」


私 「いさむさん、嚥下機能が低下してるから、少しでも食道から胃にスムーズに食べ物が落ちるようギャッチをあげたのよ!上げたままだと褥瘡の原因になるから30分後にはほぼフラット(※平らの状態)に戻すわ」


(※嚥下 : 食べ物や飲み物を口に入れ、噛み砕いてから、喉(のど)や食道を通って胃に送り込む一連の動作のこと)

(※褥瘡 : 一般的に「床ずれ」と呼ばれるもので、体の同じ部位に長期間にわたって圧力がかかり続け、血流が悪くなった結果、皮膚やその下の組織が傷ついたり壊死(えし)したりする状態のこと)


新人君 「なるほど……!勉強になるっす!」


私 「まぁ、これで写真はなんとかなったし、いさむさんも喜んでくれたし、結果オーライかな!」


新人君 「でも、結局差し入れって何がいいんすかね?」


私 「差し入れなんていらないのよ、1番嬉しいのは子供や孫、家族の顔を見ることよ(ほほえみ)」


新人君 「パイセン、愛がふけー!!」

(※愛がふけー : 愛が深いの意味)


最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

次回、「第7話 こんのセクハラジジィ!!」は、10/12(月)の18:00に更新予定です!お楽しみに!

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