第24話 必然のブラウンフェス
実話を元にしたオリジナル介護日常小説です!介護のエモさを知って頂けたら幸いです。
ここは、個性豊かな大先輩(ご利用者様)たちが暮らす特別養護老人ホーム『なないろ荘』(入所型介護施設)。 私(中堅介護士)30歳、と新人君(介護未経験者)19歳のバディは、大晦日、共に夜勤。職場でカウントダウンを迎えることに……
おや、今日もあそこに(互いの距離感に)迷える介護士(私と新人君)がまた2人……
私 「あ、新人くん、眠前薬、配り終えた?」
新人君 「あ、はい。パイセンの方は大丈夫すか?」
私 「う、うん。じ、じゃあ、私、南側から就寝介助してくるね」
新人君 「あ、じゃあ俺は北側から……」
私・新人君 「…………。」
私・新人君 「「(ほぼ同時に)あの……!」」
ープルルルルッとナースコールが鳴るー
私 「……あ、かずおさんだ。ちょっと行ってくるね」
ーその後、また別のご利用者様からもナースコールあり、新人君もバタバタと動き出す。30分後、事務所付近で鉢合わせる2人ー
私 「新人くん!大変!(小声で)便まつり開催中……!」
新人君 「そんな『なないろ、冬の便まつり♪』みたいな……(汗)」
私 「まぁ、こうなることは分かってはいたけどね……」
新人君 「そうなんすか?」
私 「だって、大晦日の特別会席料理の後だからね…たまに刺身とか食べるとお腹壊す人が続出……ただでさえ、40人中13人がラ◯ソ入ってるし……(泣)」
(※ラ◯ソベロン : 大腸を刺激して排便を促す医療用の刺激性下剤)
新人君 「……確かに」
私 「そろそろ呼ばれそうだから、かずおさんの様子見てくるね(すでに3回目)」
ープルルルルッー
新人君 「(ピッチ(※施設内用の小型携帯)の通話ボタンを押し)はい、スミさん、どうされました?」
スミ 「あれ?仙波さんは?」
新人君 「すんません。別のご利用者様の対応に行ってまして、俺が代わりに承ります」
スミ 「……しょうがないわね。早く来て。」
新人君 「すぐに伺いますね!」
ー新人君、スミさんの居室前に着くー
コンコンコンッ
新人君 「(居室のドアを開けて)スミさん、新人です。どうされました?」
スミ 「便が出ちゃったみたいなんだけど、あなた出来る?私の便の対応、まだやったことないわよね?」
新人君 「そ、そうっすね……で、でも出来る限りやってみます!」
スミ 「……じゃあ、そこにある新聞2枚重ねて、私の腰とお尻の下に敷いて」
新人君 「こ、こうっすか?」
スミ 「違う違う!もっと上!」
新人君 「もっと上……ビリッ(強く引っ張りすぎて破けてしまう)あ……」
スミ 「……しょうがないから、もう2枚新聞重ねて!」
新人君 「は、はい!(汗)」
スミ 「クチャクチャだけど、まぁいいわ。じゃあ、ゆっくりズボン下ろして」
新人君 「はい!(スミさんの腰を少し浮かしてズボンを下ろしていく)」
スミ 「痛い!!」
新人君 「え、あ!すんません!どこが痛かったすか?」
スミ 「膝よ膝!私、下半身麻痺で動かせないけど、痛覚はあるんだからね!?強く持たないでちょうだい!!」
新人君 「す、すんません。気をつけます……!」
ーとそこへ、遅れて私がやってくるー
私 「(スミさんの居室のドアを開けて)新人くーん、大丈夫ー?」
新人君 「あ、パイセン……!(汗)」
私 「あ、スミさんも排便だったか。確か対応するの初めてだよね?今日のところは、後は私がやるから、やり方見ていてくれる?」
新人君 「はい!!」
私 「スミさん、私が代わってもいい?」
スミ 「もちろんよ!あなた以上に上手な人なんていないもの!」
私 「ありがとう(にこっ)……まずズボンだけど、便が付かないように大袈裟なくらい下に下げちゃっていいわ。(小声で)スミさんは麻痺でお腹に力を入れられないから毎回ラキソを使って出してるの。水様便だから、漏らさずにオムツを替えるのが通常より難しいのよ」
(水様便 : 便に含まれる水分量が90%以上になり、形を保てずにほとんど液体の状態で排出される便)
新人君 「なるほど……!」
私 「オムツを開ける前にトイレットペーパーを丸めたものを数個用意しておくわ。そーっとオムツを開けたら、お股の間にさっきのトイレットペーパーを詰めて水分を吸収させていくの。それからー……(その後も説明が続く)」
新人君 「ふむふむ(一生懸命メモを取る)」
私 「……で、後はズボンを戻して終わり。分かった?」
新人君 「やり方は分かったっす!スミさん、次からは俺、頑張るっすからご指導お願いします!」
私 「じゃあ、後は私がやっとくから、先に巡視、回っててくれる?」
新人君 「うす!」
ー新人君、静かに居室を出ていくー
私 「どう?彼、まだ1年目だけど、素直で頑張り屋でしょう?」
スミ 「……あなたが1年目の時とそっくりよ(笑)」
私 「え!?そう!?(慌)……じゃあまぁ、新人くんにもいろいろ教えてあげてくれる?」
スミ 「私の指導は厳しいわよ?」
私 「私の後輩なの。お手柔らかにお願いしますね?」
ー2人で「ふふふ」と笑い合う。私、スミさんの居室から出て、再び新人君と奮闘すること数時間ー
私 「……はぁはぁはぁ……これである程度ケリはついたかな……」
新人君 「ふぅ……ようやく落ち着いたようっすね……」
私 「あ!!それは言わない約束!!」
ープルルルルッー
私 「ほらー!!もうー!!」
新人君 「……ぶはっ」
私 「え?」
新人君 「くっくっくっ……!やべ、なんかもう逆に笑けてきた(肩を震わせる)」
私 「……ふっ、あははっ(笑)……もう!笑ってないで早く行くわよ!」
新人君 「はーい(笑)あ、いつの間にか年明けてる……」
私 「え!?ほんとだー!明けましておめでとー!」
新人君 「おめでとうございます!」
ーようやく怒涛の夜勤を終え、時刻は朝8時50分、事務所にはすでに日勤スタッフ達が座っているが、暗黙の了解で事務所中央の向かい合う2台のパソコンの前は空けてある。(西側のパソコンの後方にプリンターあり)私は西側のパソコン前、新人君は東側のパソコン前に着席し、9時丁度ー
課長 「はい、皆さん明けましておめでとうございます。朝礼始めますが、仙波さん、新人くん、申し送りいける?」
私 「はい、大丈夫です。……夕食は年末の特別会席料理だった為、皆さんほぼ全量摂取、眠前薬服用後、就寝介助を行いました。22時、◯◯さん、ポータブルトイレにて多量の排便あり、お腹が痛いとのことで、その後2回に渡ってポータブル誘導しています。23時15分、△△さん、ナースコールあり、多量の便失禁ありで、全身更衣、シーツ交換しています。23時45分……(怒涛の便まつりの様子が続く……)……以上です。」
(※ポータブルトイレ : ベッド横に設置可能な持ち運び出来る簡易トイレ)
職員一同 (((うわぁぁ……ドンマイ……!)))
課長 「えー、では他に係りや担当から連絡事項のある者は?……いないようだね。はい、それでは今日も1日よろしくお願いします!」
職員一同 「「「よろしくお願いします!!」」」
ーガタガタと日勤スタッフ数名が立ち上がるー
私 「新人くん、(向かいのデスクから小声で)昨夜は凄かったね……(※注:便まつりのことです)」
その場にいる職員一同 「「「……!?(事務所から出ようとした足を止め、必死に耳を澄ませる)」」」
課長 「……!?!?!?(デスク下で異動届の用紙を握りしめながら、ドキドキハラハラ)」
「ちょ……っ! パイセン言い方!! 『便まつりが』とか『手際が』とか、ちゃんと主語をつけてください!!!誤解されるっすから!!(※勝手に焦る新人君)」
その場にいる職員一同 (((なんだ……進展なしか……(落胆))))
課長 (良かった……まだ異動出さずに済みそうだ……まだまだ2人にはここで頑張ってほしいからね……(安堵))
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
次回、「第25話 お局とご利用者様は紙一重」は、10/30(金)の18:00に更新予定です!お楽しみに!
「課長、1人だけ管理職ゆえの悩み抱えてて、お疲れ様です(笑)」と思ったら★評価やブックマークで応援してもらえると励みになります!




