第21話 実測検温は命がけ!?
実話を元にしたオリジナル介護日常小説です!新人君同様ドギマギして頂けたら幸いです。
ここは、個性豊かな大先輩(ご利用者様)たちが暮らす特別養護老人ホーム『なないろ荘』(入所型介護施設)。 私(中堅介護士)30歳、と新人君(介護未経験者)19歳のバディは、今日も昼食前のテーブル拭きや手指消毒、エプロンの準備をしているが……
おや、今日もあそこに(足取りの覚束ない)迷えるご利用者様がまた1人……
新人君 「(よろけて倒れそうになったサヨさんを受け止め)サヨさん!?大丈夫すか……!?」
サヨさん 「(おでこを押さえながら)う、うぅ……」
私 「……!新人くん、対応代わる!大至急、銀河館の看護師2名要請して!その後、バスタオル3枚、血圧計、それと脇で測るタイプの体温計持ってきて!ダッシュ!」
新人君 「は、はい……!!」
ー私は、新人君が持ってきたバスタオルを2枚床に敷き、1枚は丸めて枕にし、サヨさんをゆっくり横たわらせる。血圧計で血圧を測りつつ、サヨさんの脇の下に体温計を入れ、検温するー
私 「バイタル下78の上175……!?熱は……36度8分。熱はないけど……」
(※バイタル : 血圧、脈拍、体温、呼吸の4つの指標のことだが、ここでは主に血圧のことを指す。高齢者の血圧の正常値は通常、下70前後、上130前後である。)
ーそこへ、銀河館から看護師2名が応援に駆け付けるー
看護師◯◯ 「仙波さん、遅くなってごめん!大丈夫!?サヨさんの容態は!?」
私 「バイタル78の175。脈拍62。熱は36度8分。よろけて転倒しそうになったところを新人くんが受け止めたので、外傷はありません。意識は若干ありますが、話が出来るほどの状態ではなく……」
看護師△△ 「なるほど……。対応ありがと。後は私達に任せて。」
私 「はい……よろしくお願いします!」
ーその後サヨさんは、看護師2名と病院へ救急搬送。私と新人君は、血圧計や体温計を片付けに医務室へ。看護師は皆出払っており、2人きりー
新人君 「……パイセン。すんません。俺、全然役に立てなくて……」
私 「何言ってるの。新人くんはサヨさんの異変にいち早く気付いて、最悪を防いでくれたじゃない!私の指示にもすぐ従ってくれたし……」
新人君 「…………。」
私 「……誰だって初めての緊急時対応はパニックになっちゃうものよ?……ま、でも、今から予行練習しておく事は大事かもね」
新人君 「予行練習……すか?」
私 「んー、そうね。血圧はもう何回も測ってるから大丈夫だと思うけど、検温はほとんど非接触型の体温計しか使ってないよね?」
新人君 「……っすね。」
私 「ご利用者様の状態が落ち着いているなら、それで十分なんだけど、緊急時は脇で測る方がより正確な数値が得られるの」
新人君 「なるほど……」
私 「てことで、早速練習しようか!」
新人君 「れん、しゅう……?(まさか!?)」
私 「まず脇に体温計を入れる方法は2パターンあって、首元が詰まってる服なら服の裾から、首周りがゆったりした服なら首元から脇に入れるの。」
新人君 「ふむふむ(良かった。口頭での指導や……)」
私 「だから新人くんみたいに首元の詰まったTシャツなら服の裾から、私みたいなボタン付きのポロシャツなら首元から入れることになるわね。」
新人君 「ほうほう」
私 「てことで、まずは私からお手本を見せるわね!新人くん、ここ(椅子)に座って!」
新人君 「え!?(まさか……まさか!!)」
私 「じゃあ、服の裾から体温計入れてくよー」
新人君 「え、ちょっ……」
ー私は、新人君のTシャツの裾を少し捲り、新人君の右手を持ち上げて脇を開き、スルスルと体温計を持った右手を服の中に滑り込ませていくー
新人君 「!?……!?……〜〜ッ!!!!!(声にならない声)」
私 「はい、じゃあ脇閉じてじっとして
てー」
新人君 「あ、の……パ、パイセン……手が……」
私 「んー?ピピピッて鳴るまでちょっと待っててねー」
新人君 「……っ!!(待って待って待って、手が……!パイセンの手が服の中に!?スベスベでちょっとひんやりしてて……って俺は何を考えとるんや!?)」
ーピピピッ、ピピピッー
私 「(体温計を取り出し)36度9分。ちょっと高いけど、まぁ平熱だね」
新人君 (体温高いのは絶対にパイセンのせい!!!!!)
私 「服の裾から入れるやり方はまぁ、こんな感じでー……」
新人君 (ヤバい!パイセンの手の感触しか覚えてない……!!)
私 「はい、じゃあ、次は新人くんの番ね!」
新人君 「……えっ!?!?!?」
ー新人君を立ち上がらせ、今度は私が椅子に座るー
私 「それじゃあ、私のポロシャツの第1ボタンを開けて、私の左脇に体温計を入れてみて!(手に持っていた体温計を渡す)」
新人君 「え、いや……さすがにそれは……」
私 「ちゃんとやっておかないと、いざという時対応出来ないよ!いいの!?」
新人君 「う……や、やります」
私 「よろしい。じゃあボタン外して」
新人君 「はい……」
ー新人君、勇気を出してボタンを外し、出来る限り服の中を見ないようにおそるおそる体温計を持った手を入れようとするー
私 「コラ!目視しないでどうやって滑り込ませるの!危ないでしょ!」
新人君 「……っ、はいぃぃ……(そろーっと体温計を持っている手元を見ると)……◎△$♪×¥●&%#?!?!?!」
私 「……?新人くん?何してるの?早く左脇に入れて」
新人君 (……ピ、ピンクの、レースと……た、谷間が見え……えぇい!もうヤケだ!!)
私 「そうそう!上手に入れられたね!そのまま音が鳴るまで動いちゃダメよ」
新人君 「……ハ……ィ……(……これは、何や?地獄か!?ご褒美か!?!?どっちにしろ早くピピピッて鳴ってくれぇぇぇ!!)」
ーピピピッ、ピピピッー
私 「何度?」
新人君 「(体温計を取り出し)……36度4分っす。」
私 「うん、そんなもんだね。良く出来ました!……ま、男性スタッフが女性のご利用者様の実測をすることは、現場じゃ滅多にないんだけどね!」
(※実測 : 実際に脇や口の中の温度をそのまま測る方式のこと)
新人君 「…………え?(じゃあ、今のはなんやったんやああぁぁぁ!!!!!でも、ありがとう!!!!!)」
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新人君 (……あ、そういえばパイセンから体温計受け取った後、消毒するの忘れた……えっ、これって実質、間接体温!?いや、間接体温ってなんやねん!!)
※ちなみにその後、サヨさんは新人君と私、看護師達の迅速な初期対応をおかげで、病院に着いてから徐々に状態が安定し、1週間ほどで退院することとなる。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
次回、「第22話 甘じょっぱいクリスマス」は、10/27(火)の18:00に更新予定です!お楽しみに!
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