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その日は互いに休みが被っていた。
ここぞとばかりに、私はまたデートの誘いを入れ、久実からもOKを得られた。
『どこ行く?』
『家がいい』
『おっけー。どっちの家にする?』
『うち今荒れてて』
忙しすぎて学校にさえ来られてないんだからそんなもんだろう。
私は躊躇うことなく自分の家に呼んだ。
「おじゃましまーす」
「どうぞ」
私が家にたくみを呼ぶのは初めてではない。
が、そんな頻繁に人を呼ぶこともないので、毎度緊張はする。
「増えたね」
たくみが見ているのは、私の部屋の本棚。そこには、今まで出た作品の台本やパンフレットを置いている。
「まあね。でもあなたもグッズとかで棚埋まってるんじゃない?」
「私全部実家送るから」
「理解」
たくみがはい、と手に持っていた袋を渡す。
中にはいちごのパックがあった。
「たくみ、今食べられる?」
「うん、そのくらいならって思って買った」
自分がセンターの楽曲期間だ。
かなり身体も絞ったりしているはずだ。
「じゃあ、洗ってくる」
「あ、あとコレ」
と、今度は鞄から一つのソフトを取り出した。
一対一で戦うバトルゲームだ。
「これ、私やったことない」
「うん、だと思って」
「おすすめなの?」
「初心者ボコってカタルシス得ようと思って」
「何だただの悪どい奴か」
「この間のダンスゲームでフラストレーションたまってるから」
「かわいそうに」
私がキッチンでいちごのヘタを取っている間に、たくみはゲームの準備をしてくれた。
READY FIGHT
その文字を機に、二人ともゲームコントローラをばちばち押し合う。
とはいっても、コマンドなど碌に知らない私が勝てるわけもなく、どんどんとHPを減らされていく。
「おらおらおらおら!きたー!」
一敗。だが、たくみはとても楽しそうだ。
「もうワンファイト」
「戦闘狂じゃん」
「体が闘争を求めてる」
「そんなアイドル嫌だ」
もうワンプレイする。
お、コレなんだ?
画面の自分側の陣地にアイテムが現れる。
アイテムを取ると、私の味方が10人ほど突然参戦してきて、たくみのキャラをボコボコにする。
「うわ、ヤバい!何でそっちにアイテムいくんだよ〜!うわあああ、ダメだこれ!数でボコボコにされる!!」
横でたくみが騒いでいるうちに勝ってしまった。
「たくみも数の暴力には勝てないんだね」
「勝てないよ。アイドルってそういうもんだから」
「ヤバい話が不穏な方向に」
たくみはヘラヘラしながらイチゴを口に運んだ。
「……どう?MV撮影、うまくいきそう?」
私も一つ、イチゴを食べる。
「……うーん、どうだろうね。上手くいくことを選ぶしかないからなぁ」
「そりゃそうだけど」
「やっぱり、恋愛あんま分からないからさ」
「……メンバーに恋人いる人とかいないの?」
「いるよ」
「その人に聞いたりとかは?」
「いるけど、そこまでオープンにできないっていうか、少なくとも仕事場では話題に出しちゃいけないって暗黙のルールがあるんだよね」
「ああ、そうなのか」
「……アイドル生命どころか、人生賭けてまで恋愛してる人の気持ち、やっぱ分かんないしね」
「人生もかけては言い過ぎじゃない?」
「かかるよ」
「そうなの?」
「……私、今まで誰にも言ったことなかったんだけどさ──」
たくみがゆっくり、口を開いた。




