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翌日、たくみは何事もない表情で現れ、私に話しかけた。
「なんか昨日はごめんね。ファンの人に話しかけられてビックリしちゃってさ」
「あ、全然。プライベートで見つかること、あんまりないの?」
「うーん、ほぼないなぁ。3回目くらいかも」
「そっか、そりゃビックリするね」
当たり障りのない返答をしたが、昨日の青ざめかたがそれだけのためとは思えない。
どうなんだろう。たくみは気を遣って、私に驚いたと表現しているのか、それとも本人自体気づいていないのか。
この日は体育があった。2人1組担って行うバドミントン。だが、先生の監視は緩く、そもそも体育なんかで怪我するわけにはいかなかったりするので、ぬるぬるとバドをする子と、完全にしない子で分かれる。
私?私はガッツリやる派。
「晴世、ちょっと休憩!」
「えー、まだ5ラリーだよ!」
「生意気にも割と左右に振ってくるから疲れんの!」
「3時間ライブしてるくせに」
「それとこれとは違うんだなぁ〜」
チッチッと指を振って、水筒の水を飲んでいる。
私もその横に座って、少し休憩する。
「……晴世さ、ちょっと見てくんない?」
「え?」
たくみは立ち上がると、ダンスを20秒程度踊った。
卒のない動きと十分なキレ、センターで踊るのには十分にも見える。
「……どう?」
「どうって」
「正直に」
「……上手いと思う」
「それだけ?」
「……上手いとだけ、思うかな」
「ははっ、昨日言われたことのまんまだわ」
久実は自虐的な笑いを浮かべて、再び私の横に座った。
「やっぱ難しい。私の踊りでは愛する気持ちは伝わってこない」
「……今は、何を考えて踊ってるの?」
「……大好きなメンバーのこと思ってる」
悪いことではないと思う。本質的に理解できない感情を似た感情で代用して表現に乗せる。
しかし、本質的に理解できない感情が、世間的には一般的な感情だった場合、代用しているというのはバレやすくなるだろう。
「……演劇でもそうなんだけどさ」
「ん?」
「やっぱり人って、何か感情があるから行動するんだよね。でも、フィクションだからさ、ご都合主義的な部分はあるわけ。例えば、そのセリフの後にハケなきゃいけないから、ハケやすい位置に体を向けるとかさ」
「うん」
「メンバーを愛する気持ちと、人を愛する気持ち、そこには明確な違いがあるよね?」
「そうだね」
「なんだと思う?たぶんそれさえ分かれば、表現も変わると思う」
私は立ち上がり、またコートに戻る。
「……晴世はさ!分かってるの?」
後ろから、切実な声が聞こえてくる。
「……うん」
「それは、私に対して?」
「そうだね」
体を翻し、久実の前に立つ。
手を差し伸べ、出された久実の手を掴み、体を立ち上がらせると、繋いでいた手を恋人繋ぎに変えた。
「久実が今、ドキドキしてくれるように。私は頑張るよ?」
少し上目遣い、口角をほんのりあげる。
この向き!!!!!これは、私の美形を最大限活かせる向き!!!鏡の前で練習した!!!
ふふっと笑って手を離し、コートに戻る。
久実の顔が紅潮したのを、私は見逃していない。




