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レッスンスタジオは新宿にある。スタートは18時から。今は16時。いつもならオープンしているレッスン場に直行して、自主練を始めていることだろう。
今日は、特別練習だ。レッスン場の反対にあるゲームセンターを目指す。
「ほら」
と手を出すと、渋々という形で久実が握り返す。その手を軽くほどき、恋人繋ぎで繋ぎ直す。
「この繋ぎ方さ」
「大丈夫。何言っても私は同級生」
「……そうかもだけど」
波型カチューシャで髪をかき上げた私は、宣材写真とかとはまるで違い、一瞬男に見えないこともないだろう。
美形二人が手を繋いで歩く姿は絵になる。間違いなくここスチル。
マスクをつけ、そわそわしたたくみは、周囲を気にしながら小声で歩く。
「こんなことしてていいのかなぁ……」
「芸の肥やしだよ」
「はぁ……」
10分程度歩くと、ピカピカと店内を光らせたゲームセンターが目に入る。あらゆる位置からジャカジャカと音がして、今までの声量では届かないので、必然と声が大きくなる。
「私、ゲーセン来るの久々」
「私、はじめて」
「え!?たくみゲーセン来たことないの?」
「親が禁止してたから、なんか来たことなかった」
「じゃあ、初ゲーセン、私とだね!」
少しおどけた言い回しをする。たくみもふっ、と笑顔を見せてくれた。
「ゲーセンって言っても何するの?」
「うーん、プリクラ撮るか」
プリクラコーナーに行く。
「これ写真撮るだよね?」
「そうそう」
「私、事務所の許可ないと写真撮影ダメなんだけど」
「真面目かよ」
お金を入れるとすぐにプリクラの案内が流れる。プリクラをしたことがない久実だが、これはさすがなもので、シャッター音がなると完璧な表情を見せてくれる。
「……なんか、仕事してるみたい」
落書きブースでたくみが呟く。
「そんなこと言わないでよ。見て、写真でこんな加工されることある?」
加工がかかりすぎたプリクラは、もはや別人のようだった。
「これマネージャーさんNGでますね」
「うん、無い方が可愛いよたくみは」
次は音楽ゲームのコーナーに行く。
太鼓のゲームにコインを入れて遊び始める。
「たくみは簡単モードにしとき」
「え、晴世どうすんの?」
「え?」
カンカンと太鼓の縁を叩く。音楽の選択肢がひっくり返り、裏モードが表示される。
「……嘘でしょ?」
「いけます」
曲が始まる。私は隣のたくみがポンポンと叩くのを気にせず、ドカドカ譜面を叩いていった。
「ふぅ!」
「……すごいんだろうけど、ごめんちょっと引いてる」
「引かないでよ!」
「前からよくやってたっけ?」
「まあ」
前世でね。
そんなことは言えないので、曖昧な返答をする。
「え、なんか悔しいんだけど……」
久実の負けず嫌いが発揮されてきた。
マスク越しにも悔しさが感じられる。
「あ、あれやりたい!」
指を指したのは、ダンスをするゲーム。
「ダンスゲーム?いいけど」
「私本職だから」
「本職、そうねぇ」
コインを入れた久実は、迷わず激ムズを選ぶ。
あーこれは……
「……全くできなかった」
序盤にしてライフがなくなって失敗した。
「え、これ何!?足3本いる指示出てたって!」
「ああ、そういう時はね、床を手で叩くんだよ」
「そんなのあり!?」
二連敗を喫し、ぐったりと凹んでいる。
そんな姿も実に愛らしい。
ファンの人が見たらたまらないだろうなぁ。
「そう落ち込まないで。なんか飲み物買ってくるから。そこで待ってて」
「炭酸水で……」
たくみから離れ、自販機に行く。
にしても、表現力がないとは思えないくらい、気持ちは豊かだよなぁ。驚きも悔しさもしっかり分かる。『表現』するとなると話は違うのだろうか?
自販機から戻ると、男二人に話しかけていた。




