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「……あの、ごめん。地雷踏んだ?」
「……いや、地雷ってわけじゃないけど」
「……てか、これ、どんな企画なの?」
「え?」
「たくみだけに集中した回?もしかして」
「……まあね」
アイドル番組では、成人や卒業のときに、その人だけにフィーチャーした回が作られることがある。私がたまたま見た回の場合は、フィーチャー企画ではあるが、理由はこのどちらでもなかった。
「……もしかしてさ、たくみ、センターする?」
返ってきたのは再びの沈黙。
情報解禁まで守秘義務のある仕事をしている我々にとって、このターンでの沈黙は是と同じだった。
「……おめでとう」
「……ありがとう」
おめでたいことなのに、全く祝いのムードではない。
「忙しくなるね」
「うん、来週からはほとんど来られないと思う」
「……なんかごめん」
雰囲気に耐えられず、とりあえずの謝罪をする。
「いや、謝ることじゃないじゃん」
「そうだけど、なんか」
「義謝はいらんですよ」
「そっか」
そっか、って言ったけど、私もネットミームにに詳しいと思うなよ。てか、大鶴義丹もいるの?この世界
「誰にも言わないから安心して」
「いや、それは元から信頼してるよ」
「じゃあ、何でそんなにしんどそうな顔するの?」
「……恋愛苦手なの、友達にバレてたのかーって思っちゃって」
「あー、え、あ、苦手なのね」
「あ、確信があったわけじゃないの!?」
「あ、ないですごめんなさい」
「じゃあ今自爆しただけ?」
「そうなりますね」
「ああー!!私のバカヤロウ!」
一呼吸おくと、椅子に座り直し、こちらを向いた。
「まあなんかさ、アイドルってラブソング歌うこと多いのよ」
「そんなイメージあるね」
「今回もそうなんだけど、てか、今回はすごくゴリゴリのラブソングなんだけど」
「どんな?」
「彼のことが大好き、告白しよう、付き合ってみんなの前で手繋いでイェイイェイみたいな」
「アイドルとしていいんかそれ」
「ちなみに、もう一つの曲は、あなたがいないともう生きている意味ないイェイイェイね」
「イェイイェイ必須なのね」
「……でも、私、全く気持ち理解できないんだよね」
「今まではどうしてたの?」
「今までは、何というか、分からなくてもよかったというか。何となくでいってた」
「今回はそれだと厳しいの?」
「センターだから」
センターだから、という言葉には、久実なりの覚悟や決意が感じられた。
何となく気持ちは分かるかもしれない。もし自分が座長の公演があったら、何となくの気持ちで芝居をするのは、許し難いものがある。
「……てか、前から言われてるんだ。表現力がないって。先生からも、ファンからも……私もそう思う。同期たちはさ、本当にかっこいいんだよ。指先まで意識するとか、そういうのは当たり前だけどさ、別人が憑依したみたいに雰囲気が変わる子もいるし、涙を流すときもあるし……私は上手くできない」
「……そっか」
下手に否定はできない。たくみがずっと悩んできたことだからだ。
たくみの深刻な感情を受け止める一方で、これは私にとってチャンスだった。
「……久実、私と付き合ってみない?」
「え?」
「私と付き合ったら、人を好きになるって感情、分かるかもよ?」
「……え?」




