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進路調査、人によってはとても簡単、人によってはとても難しいことだ。
加藤は後者なのだろう。
私の質問に対して、バツの悪そうな顔をした。
「……迷ってるんだよね。芸能活動続けるか」
驚いた。てっきり、芸能活動は前提で、大学に行くか否かの葛藤だと思い込んでいた。
だが、これはチャンスだ。
私は書くのをやめた、自分の進路調査書を机から取り出す。
「私も!」
と白紙のそれを見せると、加藤は目に見えて嬉しそうな顔をした。
「……私も、迷ってんるんだ。どうするか」
「そうだったんだ!知らなかった。てっきりこのまま舞台の仕事していくんだろうなって」
「うーん、どうなんだろう」
今から舞台の稽古行くんだけどね。心の中でそう思う。
「晴世ちゃんは、もし芸能活動辞めたら、大学行く?」
「うーん、それもまだ決まってないなぁ……」
嘘ではない。実際、ゲームの記憶を取り戻した今、私は進退を迷っている。
「加藤さんは?」
「うーん、学びたいことが明確にあるのかって言われたらビミョいんだよね」
「まあそうだよね」
「大学行くにしても、学力で行けるか分からないしさ。AOだったら付属で上がれるだろうけど──」
加藤の話が止まらない。相当悩んでいたのだろう。この学校に入る基準の一つが芸能活動をしていることだから、前提を覆すような悩みはあんまり相談できないのかもしれない。
「あ、あの、ごめん!時間ヤバい!行くね!」
「あ、ごめん!」
申し訳ないが話をぶった斬る。
加藤はあわあわと謝った。
「あの!」
それでも、教室の扉を出る直前、呼び止められた。
「……たまに、相談とかしていい?進路の」
「……もちろん!!」
手を振る加藤に振り返し、教室を去る。
稽古場への道のりを急ぎつつも、私は思い出せる限りで加藤のことを考えた。
……加藤さんが学校に入ったのは中3の冬とかだったかな?ちゃんと覚えてないけど。事務所にはいつから所属してたんだろ。あんまり関わってこなかったから知らないんだよなぁ……そういえば、加藤が学校を休んでいる姿はあんまり見ないなぁ。




