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(無実の罪で)指名手配中の悪役令嬢。メイドに転身して事件を調査していたら、王子殿下から溺愛されました……?!  作者: あきはる


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真夜中の逃亡劇

「お嬢様には、安全が確認できるまで、この先の国境を越えた町に潜伏していただきます」


御者が馬車を全速力で走らせる中、私はアルバスとともに揺られていた。

周囲は未だ深い闇で、小窓から覗く空には満月が浮かんでいる。私達は、追手よりもひと足早く屋敷を抜け出していた。幸い、未だに追跡の気配は感じられない。


「でもアルバス、私、このまま逃げ延びてもよいものかしら」


アルバスに言われるがまま馬車に乗り込んだ私であったけれども、ここで一つの疑問が浮かんでいた。


だって、私は暗殺未遂なんて、まったく関与していない。あれは明らかに冤罪だった。


「冤罪なのだから、逃げ隠れしたりせずに、大人しく名乗り出て無実を訴えたほうがよいのでは?」


「いいえ、なりません」


アルバスはピシャリとはねつけた。


「……どうして?」


「お嬢様が無実であることは、わたくし共も存じております。しかし、この動きの早さを見るに――お嬢様は、どこぞの敵対する貴族か権力者によって陥れられたに違いありません」


「まさか……」


私は一瞬、言葉を失う。


「宮中とは陰謀の渦巻くところです。いつ足元をすくわれるか分かりません」


確かに、コーネリアは、かつては悪役令嬢みたいな性格の令嬢だったらしい。私はここへ来てからは人に恨みを買うような振る舞いはしていないけれど、それ以前のことは分からない。


それに、私の言動に限らず、社交界には私や私の家に恨みを抱く者がいないとも限らないのだ。


コーネリアが暗殺未遂をしたと確定すれば、私だけではなくアーチャー公爵家も責任は免れないだろう。私は、そんな誰かの陰謀に利用されたということなのだろうか……。


「もし捕まってしまったら、一体どうなってしまうのかしら」


「お嬢様の罪状は、国王陛下の暗殺未遂とありました。もし罪が確定すれば、極刑は免れないかと」


「そんな……」


アルバスは私の狼狽ぶりを察して、それをなだめる。


「ご心配には及びません。国境を越えた先の町に、我がアーチャー公爵家が別荘として購入した邸宅がございます。国境さえ越えてしまえば、流石に警備の手も及ばないでしょう。ひとまずは安全に暮らすことが出来ます。その間に、お父上であるアーチャー公爵や周囲の者が、お嬢様の無実を明らかにしてくれるはずです。苦しいでしょうが、今は身を潜めて時を待つのです」


「……わかったわ」


私は自分を納得させた。

そんなことを考えているうちに、馬車はさらに進む。アルバスが御者の男に合図を送ると、彼は馬にムチを入れて、さらに先を急いだ。


***


「お嬢様、もうすぐ隣国との国境付近に到達します」


私はハッと目を覚ました。いつの間にか眠りこけていたらしい。

眠い目をこすりながら、窓辺から外を覗き込む。そこは王都の町並みとは様変わりしていた。


窓の外は、どこまでも続く田園風景が広がっていた。あたりは未だ夜明け前で、一帯は白んだ霧に霞んでいる。開けた野道の先はどこまでも広い麦畑になっていて、まだ若い青々とした麦の葉先が、朝露を光らせていた。


「ずいぶん遠いところまで来たのね」


「この先の町を抜ければ、隣国との国境です。しかし、油断は出来ませぬ。このあたりはランスロット殿下の兄君である、ヴィンセント殿下が治める所領内ですので」


「――ヴィンセント殿下」


私は再び記憶を巡らせた。

ヴィンセント殿下は、ランスロット殿下の二歳年上の兄であるらしい。本来であれば王位は彼が継ぐはずであるのだが、今は王宮にも不在で、社交界にもほとんど顔を出していなかった。


「たしか、ヴィンセント殿下は、幼い頃から病気がちで、その療養のために北部の別邸に滞在されていると聞いたわ」


「その通りでございます」


ヴィンセント殿下は幼い頃から体が弱く、北部の地に住まって長い。公務などももっぱらランスロット殿下が担っている。そのため、最近では次期国王の座は、弟のランスロット殿下に期待がかかるようになっている。


「ヴィンセント殿下は、普段はほとんどお出ましになりません。しかし、殿下はランスロット殿下の兄君。国王陛下にも近しい間柄ですし、既にお嬢様の手配情報が回っている可能性があります」


「そうね。私はヴィンセント殿下とは面識が無いけれど、こちらへ逃げることを見越して警戒している可能性もあるわ。気をつけて行きましょう」


気を引き締めながら、馬車に揺られていた、その矢先の出来事だった。



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