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(無実の罪で)指名手配中の悪役令嬢。メイドに転身して事件を調査していたら、王子殿下から溺愛されました……?!  作者: あきはる


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ヴィンセント視点②


パーシヴァルが帰ったあと、ヴィンセントは続いてロイドを執務室に呼び出した。

ロイドは、王都に放った密偵からの報告をまとめていた。

執務室に入るなり、ロイドは神妙な顔つきで切り出す。


「事件についての調査報告が届きました。まず、今回の暗殺未遂に使われた毒ですが――十五年前のあの事件で使われた毒と、同じものである可能性が高いです」


「――やはりそうか」


ヴィンセントは小さく息をついた。


「報告によりますと、事件の際、国王陛下の毒見役はワインを口にした直後に泡を吹いて倒れました。その場で押収されたワインを調べたところ、確かに毒が含まれていることが確認されています。――しかし」


ロイドは、そこで言葉を区切った。


「翌日になって、調査員が押収したワインの毒の正体を調べようとしたところ、毒は綺麗さっぱり消えてしまっていたそうなのです。調査員たちは原因を突き止めようとしましたが、結局、毒物の正体はつかめなかったとのことです」



ロイドは意味深に、ヴィンセントのほうへ視線を上げた。

その視線を受けて、ヴィンセントもまた腕を組み、ぽつりとつぶやく。


「――まるで、十五年前の事件を彷彿とさせるな」


「ええ。毒が跡形もなく消えてしまう。これは、十五年前に殿下の母君である、先代の王妃様が暗殺されかけた際に起こったことと酷似しています」


「あの事件の時も、毒物が混入した経路を隈なく調べたが、どこにも毒の痕跡は見つからなかった。事件は迷宮入りし、真犯人は今もどこかに潜んでいる」


ヴィンセントはうなずいたあと、こう続けた。


「そして今、十五年ぶりに同じ手口の暗殺未遂事件が起きた。犯人はあの事件と同一人物か、少なくとも事件の関係者であることは確かだ。今回の犯人を見つけ出すことができれば、十五年前の事件を解決する糸口になるのは間違いない」


ヴィンセントは椅子の背もたれに身を預け、天井を見つめた。


「ようやく、事件の手がかりが舞い込んできた。さらに幸運なことに、この城には事件の当事者である彼女がいる」


「――コーネリア嬢のことですか。やはり、彼女が事件を」


ロイドが確信めいた視線を向ける。しかし、ヴィンセントはそれを一瞥で制した。


「まだ決めつけるのは早い。確かに、状況だけを見れば彼女が犯人である可能性は高い。だが、そう単純な話でもないだろう。少なくとも十五年前の事件に関していえば、当時の彼女はまだ生まれたばかりだ」


「確かにそうですね。犯人は、我々を欺き続けてきた狡猾な相手です。一筋縄ではいかないでしょう」


「しかし、コーネリアがこの城にいることは好機でもある。彼女が事件の当事者であることは確かだ。犯人につながる手がかりになるかもしれない」


ヴィンセントが意味深に目を細める。


彼女が事件の犯人なのか、はたまた別人の犯行なのか。真実はいまだ明らかになっていない。

けれども、この事件を解決することが、ヴィンセントの追う十五年前の事件の解決にもつながることは明らかだった。それを見越して、ヴィンセントは彼女をこの城に匿うことにしたのだ。


「殿下が彼女を匿うとおっしゃった時には、正気を疑いましたが。そのようなお考えがあったのですね」


ロイドの言葉に、ヴィンセントは頷く。


「それに、事件が発覚してからの王宮の動きも奇妙だった。少なくとも向こうは、コーネリア一人を犯人と断定している。まるで彼女一人に罪を押し付けて、一刻も早く事件を収束させようとしているようにも見える」


王宮側は端からコーネリアを犯人と決めつけており、捕縛状が出されるまでの早さも異様だった。

ヴィンセントをはじめ、社交界にも一連の動きを不審に思う者がいることは、パーシヴァルの話からもうかがえた。


「この件について、父上――国王陛下はどうお考えなのだろうか。陛下は十五年前の事件をご存じのはずだ。同一人物の犯行だと気づいておられるのではないか」


すると、ロイドは少し顔を曇らせた。


「それが……国王陛下はここのところ病床に臥せっておられ、事件のあとも王宮で療養を続けておられるそうなのです。そのため、第二王子のランスロット殿下が事件の指揮を執っているようです」


「なるほど……だから、これほど独断的な動きが取れたというわけか」


「はい。ですから、この件に関してランスロット殿下のご意向を覆すのは容易ではないかと。殿下は、そうそう人の話を聞き入れるご性格ではありませんので」


ロイドは目を伏せた。


「事件の真相が明らかになったあかつきには、私が直接ランスロットと――ないしは父上と、話をつける。私がいつまでもこの城に引きこもっていると思っているのなら、大間違いだ。弟の独善的な振る舞いは、改めてもらわねばならない」


言ってから、ヴィンセントはおもむろに立ち上がった。

ヴィンセントが王宮を離れてから、政治の実権は事実上、弟のランスロットが握っているといっていい。病がちな国王陛下に代わって、ランスロットが公務を取り仕切る場面も増えていた。


「引き続き、王宮に潜ませた密偵に調査を続けさせてくれ。何かわかれば、すぐに知らせるように」


「承知いたしました」


ロイドは一礼すると、執務室を去っていった。


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