12.彼方の物語
〝月の女王が世界を見渡すと、輝きはきっと自分の世界を語るだろう〟
静かな夜に、ルミカに伝えられたこと。
「…では、貴女が」
「そうです。私は彼方の国の王女。カリンです」
ルミカは彼女が持っているカバンに目をやりながら口を開いた。
「どうして私が王子だと?」
「私たちが今持っているカバンは〝届け合うカバン〟と呼ばれているモノです」
「届け合う…」
「はい。このカバンは対で作られました。2つで1つだと祈りを込めて」
カリンはカバンをルミカに差し出した。
「私は王子を待つことが決まった時、母上からこのカバンを貰いました。そして貴方と同じように、身分を明かさず、カバン職人の見習いとして働くことになりました」
「カバン職人…」
「私の働いているお店に来ていただけませんか」
ルミカはカリンの言葉を受け取り、彼女の案内でカバン屋へ。到着すると、そこはルミカが手紙を届けたカバン屋だった。
主人が店から出てくると、優しい目で2人を見つめ、そしてカバンに指をさした。
「…なるほど、そういうことだったのですね。旅人さん」
「はい…申し訳ありません。私は私の国の王子、ルミカです」
主人は2人を店の中へ入れると、お茶を出してくれた。
「昨日のことです。ある人物がこの店を訪ねてきました」
「ある人物…」
ルミカはお茶を持ちながら主人の方を見た。
「はい。紫色の布を纏った人物が私に言伝を頼んできました。この店には2人の旅人がやって来る。けれど、彼らは訳あって身分を明かしてはいない。もし、明かすことが有ればこれを渡して欲しいと」
ある人物はそう言って、1つの箱を主人に手渡したらしい。
「これがその箱です」
白い箱。何も書かれていない箱が目の前に置かれた。
「…これは開けても良いですか?主人」
「はい。もちろんです。それと、私の事はヒナリハとお呼びください」
ルミカが箱を開くと、絵筆とペンが入っていた。2つとも同じ素材、銀で作られている。
「絵筆はこのお店で待つ者に。そしてペンは迎えに来る者に渡して欲しいと」
2人はヒナリハからモノを受け取ると、私の国へ向かうことにした。
国に着き、ルミカはカリンにあることを伝えた。
「私はカリンを迎えに行ったことで、あることが分かった。私は世界の事をもっと知りたい。見たいと思った」
彼ら2人は城ではなく、街に住むことにした。
やがてルミカは世界の出来事を銀のペンで書く仕事に。そしてカリンはヒナリハから学んだカバンを作り続け、カバン職人になった。
しばらく経ったある日。雨の降る朝方。2人のお店にある人物がやってきた。
白い布を纏った人物。彼はルミカに訪ねて来た。
「銀色の絵筆。それがここにありますよね?」
「ええ…ありますけど」
ルミカは大切にしまっておいた銀の絵筆をその人物の目の前に出す。彼は纏っていた白い布を外すと、ルミカの方を見た。
彼の目はオッドアイ。見事な色をした青と紫をたたえていた。
「もしよかったら、ここで絵を描かせてくれませんか。その銀の絵筆を使って」
「…もちろんいいですとも」
「ありがとうございます」
その日を境に、ルミカと白い布を纏った人物が描くモノは、カリンの作ったカバンに入れられて世界に配られることになった。
それは人々から「輝き」と呼ばれるようになっていく。
「…キミの名前を教えてくれないか。そう言えば聞いていなかった」
とルミカが言うと、白い布を纏った人物は笑いながら口を開いた。
「あなたが付けてください。…あの日と同じように」
ルミカはそれを聞くと、銀のペンを手に持った。
おしまい。




