11.私の物語
〝私の王子はやがて彼方の王女を迎えに行くだろう〟
私の住んでいる国の王子様。彼の名前はルミカ。新しく日が昇れば21歳を迎える。彼に託された国の決まり事。それは自身の伴侶を彼方の国へ迎えに行くことだった。
古いしきたりになぞらえて、彼は王子である身分を明かさず、質素で簡素な洋服を着て、ただ唯一のカバンを持ち、
彼は迎えに行かなければならない。
出発は誰にも見送られることのない時刻。まだ月が天高く存在して、月の明かりに照らされた道が彼の出発を見守るだけだった。
「いってきます」
踏み出す足には勇気。そして伴侶となる王女を迎えに行くという決意。2つのモノが彼を動かしていく。
城下を出て、1つ目の街を訪れるとルミカはそこの年長者と話をした。
「働きたい。私に何か出来ることは無いか」
年長者は彼に一通の手紙を渡した。
「これを彼方の国に居る人物へ届けて欲しい」
ルミカは手紙をカバンの中へ入れ、対価を受け取るとまた歩き出した。
街から街へ。彼は城の中に居たら見る事の出来ない景色を眺めていた。
気が付くと、彼は国で一番大きな街へたどり着いていた。大通りに置かれた古いベンチに腰掛けると、そこで人々の生活をじっと見つめることにした。
「みんなはこうして生活をしているんだ」
荷物を運ぶ人々、きっとあっちには市場があるのだろうか。あの人たちは夫婦だ。子供たちが走っている。
しばらくその景色を眺めていたルミカは立ち上がると、再び歩き出した。
もうすぐ彼方の国の近く。彼はカバンの中に入っている手紙。住所を確認して向かうことにした。
「…ここは」
手紙を渡す相手はカバン屋の主人だった。
「これを貴方に」
「ありがとう、旅人さん」
主人は手紙を受け取ると笑顔でルミカにお礼を言った。
彼はカバン屋を出ると、本来の目的の為、城を目指した。
「私は、私の国の王子、ルミカです。彼方の国の王女を迎えに参りました」
門番はルミカを上から下までじっと見つめた。
「…王子、であるという証拠は?」
「証拠は…ありません」
「では会わせるわけにはいかない。帰ってもらおう」
ルミカには王冠はもちろんのこと、豪華な服も来ていなければ、国の紋章が入ったものを何一つ持ち合わせていなかった。
「さて、どうするか」
いくら説得しようにも言葉では信頼を得ることが出来ない。そう考えたルミカはとりあえず近くの宿場へ向かうと宿を決めた。
夜になると夕食をとるため食堂へ向かった。沢山の人たちが食事をとっていて、中にあるステージでは大道芸のようなものが行われていた。
ルミカは食堂の雰囲気を眺めていると、声をかけられる。
「あの…すみません」
「はい?」
声をかけてきたのは同じくらいの年齢の女性だった。…この食堂の店員さんだろうか。
「もしかして貴方が持っているそのカバン…」
「はい」
女性はポケットから紙を取り出すと、ペンを走らせて何かを書いた。
「これを」
女性はお辞儀をすると、食堂の外へ歩いていく。
渡された紙を見ると、そこには「今晩、宿屋の前でお待ちしています。…カバンを持ってきてください」とだけ書かれている。
食事を終え、部屋に戻りルミカはその紙を見つめていた。
約束の時間。ルミカはカバンを持って宿屋の前に。するとさっきの女性が立っていた。
「…同じカバン?」
彼女が持っていたのはルミカが持っているのと同じ物だった。近づくと、彼女は一言、ルミカに言葉を託した。
「お待ちしていました。私の王子様」
言葉と共に、風が頬を撫でていく。




