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ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第4章 わたしの世界で
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7.決意は歩く

「なんか、しんみりしちゃったね」


 私がリンリンにそう言うと、彼女は少しだけ笑った。


「外行こ、外。コンビニ」


「この時間に?」


「そうだよ」


 立ち上がると彼女は玄関に向かって行った。私は肩に乗っているアヤカを見ると、彼は「僕はこのまま肩にいるから」と言われた。


 私も立ち上がると、リンリンの後に続いた。


「…雨があがって、いい空気になってる」


 玄関を開けると、夜風が頬を撫でた。階段を下りて一階へ。駐輪場にはリンリンの見慣れた自転車がとまっているのが見えた。


「今もあそこに住んでるの?」


「もちろん。美花が卒業するときに見つけた所に」


「…あそこから自転車で来たの?結構距離あるでしょ」


「そう?大したことないと思うけど」


 歩きながら会話をするこの感じ。大学生の時を思い出す。こうやってリンリンと2人で過ごしていた時間は過去のモノじゃなかったんだ。


 近所にあるコンビニ。よくある田舎の風景。店員さんが1人か2人だけいて、静かな空間。


「ジュース。いつものでいいでしょ」


「うん」


 リンリンは夜、私を連れ出すとコンビニでよくジュースを買ってくれた。…多分、家賃とか食費とか。彼女なりに思う所はあったんだろう。でも、私としては彼女と一緒に居る時間は楽しかった。


 きっと「自分のやりたいことをやっている人」って言うのが近くに居て欲しかったのかもしれないけど。


 コンビニを出ると、そのまま近所の公園に行くことになった。


「この辺ね、この時間は誰にも会わないからいつも散歩にくるんだ」


「そうなの?」


「うん」


 靴の音が道路に響くだけ。それだけしか音がない。…確かにいいかもしれない。誰にも会うことのない散歩道。


 目的地の公園は、子供が遊べる場所もそうなのだけれど、体育館、野球場、テニスコートとかもあるようなそんな場所。


 きっと休日には家族連れなんかが遊びに来ているんだろう。とかそんなことを考える。


 公園に着くと、私達はベンチに向おうとしたのだけれど、その時、アヤカが私の肩から飛び立った。


 さっきまで大人しくしていたのにどうしたのだろうか。…向かった先は水を飲める水道が有る場所。


 そこに行くと、私の方を見て来た。


 なるほど。水を浴びたいのだけれど、自動的に水が出ればさすがにリンリンに説明しなければいけなくなる。…というより説明できないだろ、これ。私は手を洗うふりをして、アヤカに水をかけてあげることにした。


 アヤカは水を浴びた後、私の肩にとまらずに、そのまま公園に置いてある遊具の上を飛び、見たり、触ったりしていた。


 買ってきたジュースを手に持って、キャップを外そうとしたらリンリンが「こういう時は乾杯するべきでしょ」


 と言ってきたので私はリンリンと乾杯してジュースを飲み始める。


「私は私の世界を描く、だから美花は美花の世界を書けばいい」


「どしたの?」


「ふふん、これが私の名言になる。数十年後にね」


 リンリンは夜空を指さした。


「私、今すごく楽しい、うれしい。だって、ようやく同じ仲間に出会えたんだから」


 なんだろう。私は彼女のその言葉にものすごい…なんて言えばいいのかわからないけど、決意の積み上げのようなものを感じた。


 …きっと彼女もここまで1人だったのかもしれない。


「私は誰にも認められなくて、誰からも見向きもされないことをやってきた。でも、それが私の生き方で、どうなるかは分からないけど、私は私だって。しっかりそれだけで生きたかったから」


「…あの時のままだね、リンリンは」


「そういう美花も、あの時のままでしょ」


 私達の会話は、決意をもって動き出した。

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