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6.場所

 リンリンの話を聞いているうちに、私は有ることを思いつく。


 それは「しばらくここに住むこと」だった。


 …でも、いくら仲がいいからと言って、私とアヤカが住むなんて言い出したら、彼女はなんて言うのだろう。と思っていたのだけれど、リンリンは「いいよ、楽しそうじゃん」と言葉をくれた。


 そんな彼女に感謝をして、私は真っ先に届け屋さんへリンリンの家の住所を伝える為に手紙を書くことに。手紙は街にある郵便局へ。どのようにして伝わるかわからないけど、このやり方で伝わるらしい。


「…これでしばらくはリンリンの家に彼らがやってくる。…仕事が入ればだけど」


 手紙を出し終えた後で、作業場へ戻ると「とりあえず、使ってもいい場所はある?」と聞くと、彼女は私の立っている周辺を指さした。


「そこら辺。使っていいよ、今は使ってないから」


 とのことだったので、とりあえず片付けることに。絵の具の入った小瓶、やりかけのじくそーパズル…そんな物が置いてある。


 1つ1つ手に取り、彼女にどこに仕舞えば良いのかを聞きながら、片付けていくことに。すると私は、テーブルを発見していく冒険家のような気分になって来た。


 アヤカにしばらくリンリンの家に住むことになる。と伝えると、彼は嬉しそうに「そうですか、ありがとうございます」とお礼を言われてしまった。


 何のお礼なのか。リンリンの絵を見れることに対してなのか。と少し考えたけれど、まあいいや、それは後で考えようとも思うわけで。


 私は片付けが終わると、私の居場所をリンリンの家に確保することに成功した。気が付いたら夜に成っていて、リンリンが「今日は出前でいいでしょ」と言ってきたので、そうすることに。


 私たちは3人で夕食を食べ、お話をすることに。


 取り留めも無い話。リンリンの恋愛話とか、アヤカが興味ある事。私の料理はどこで覚えたのか。とか、そういうことを。


 …何となくだけれど、楽しい。こういうのを楽しいって言うんだ。と私は初めて思った。


 なぜだろうか、きっと別の世界に居る私が望んだことなのかもしれないけど、こういう暮らしをどこかやってみたい、成ってみたいと思っているのかもしれない。


 自分の居場所ってやつを求めて、求めて。


 それでお、今居る場所に納得しているのか、いないのか。


 アヤカがリンリンと話しているのを見ると、初めて彼に出会った時の事を思い出す。名前を教えてくれたこと、白い布についての話。それからリンリンに絵を描いて貰って…。


 アヤカにとって求めるツバサ。それを見つける事になって。


 と3人で話していると、私の頭の中に何かが響いて来た。


「もう、美花はあの白い紙に何を書けばいいのか、知っているはず」


 その声が響き渡ると、私の頭の中に有る考えが出て来た。


「…そうだ、あの本。あの本の中には何が書かれているのだろうか」


 私はカバンを開くと、家から持ってきたアヤカの描かれている絵を開いた。


「…色は付いていないけど、リンリンは紫色の本だと言った。それの内容…この本の内容を、白い紙に書けばいいんじゃないのか?」


 それでようやく2つが1つになるのを感じた。でも、アヤカは何の本を持っているのか、そして中には何が書かれているのだろうか。


 しばらく考えていると、私に有る言葉が渡された。


「…その本の中には、あなたが本当にやりたかったことが書かれているんじゃないですか?」


 私はその言葉が届いた時、目線を上げた。するとそこにはアヤカが居る。


「本当にやりたかったこと?」


「はい、そうです」


「どういうこと?」


「あなたは少しだけ気が付いていると思うのですけど…そうですね、簡単に言えば別の世界のあなたが求めているモノでもあるわけです」


「別の世界の私…」


「はい、そうです」


 アヤカは少しだけ笑顔になって、手を開いた。


「そこに書くのはあなたの名前。つまり、美花と書いてみて下さい」


「…私の名前」


「名前には物語の始まりが記されています。名を付けた人は、それが始まりであることを知っていて、そして続いていくようにと、願いを込めて付けます」


「…であるならば、その白い紙に書くのは美花という名前。ただ、それだけでいいのです」


 私は自分が持ってきたペンを持つと、白い紙に自分の名前を書いた。すると、アヤカはその紙を手に持ち、リンリンに描いて貰った絵の隣に置く。


「これで出来上がります。私のツバサが」


 彼は自分の椅子に掛けてあった白い布を纏うと、しばらく祈るような姿勢になった。すると、あの時と同じ、ルリハと同じように青白い輝きと共に、ツバサが現れた。


 そして、今にも飛び立とうと羽ばたき始める。


 私は、私がこれからどこかに行く。と言うのが何となくわかった。だからリンリンに「少し、アヤカと行ってくるね」と伝えると、彼女は笑顔で、


「うん、見送るよ」


 と嬉しそうに言葉をくれた。

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