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ベランダにドラゴンがはえて来た。改訂  作者: 松下一成
第2章 あなたの世界で
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5.見せてくれますか。

 他人が見ている景色は、一体どのように見えているのだろうか。


 私がある人を説得したくて、言葉を並べる。そうすると、分かってくれる時と、そうじゃない時がある。私が伝えたいことを、伝えるということは出来なくて、向こうが「ああ、ミカはこういうことを言いたいんだろうな」って思ってくれるかどうかにかかっている。


 つまり、相手の事を信用している?…この場合は信頼になるのだろうか。


 頼りない杖で、歩く道、その人まで届く通路みたいなものを見つけようとしている。そんな感じに近い。


 アヤカは私達と住んでいる世界が別にある。と言うことはきっと私達以上に、言葉の背景に有るモノを眺めることが出来るんだと、私は思う。


 だから、本来なら本人にしか感じる事の出来ないこの本を見ることが出来たのだろう。


 私は本に目をやるアヤカを見ながらそう思った。


 しばらくアヤカは本を見ていた。その様子を見ながら、私も頼まれていた仕事をやろうと引き出しから写真や絵を取り出すことに。


 すると、アヤカがそれに気が付いたのか、こちら側にやってきた。


 彼は私の机の上に、さっきまで読んでいた本を置くと、自分が寝ていたソファーへ戻り、さっき手渡した出会った時に纏っていた白い布を持ってきた。


 それを部屋の真ん中にあるテーブルの上に広げると、両手を正面で合わせ、まるで祈りを捧げるかのような体勢になる。


 何をしているのだろうか。と気にはなったのだけれど、声をかけて良い雰囲気ではなさそうだったので見守ることに。


 すると「ミカさん、部屋の電気を消してくれませんか」と言われたので、スイッチの場所まで行くと、部屋の電気を消し、アヤカの方を見た。


 アヤカの祈りを捧げている白い布。…ゆっくりと徐々に何かが浮かび上がってくるのが私にも見えた。


 …これは、星座だろうか。そんな感じに見える。星と星とを繋いでいる線が、ゆっくりと伸びていき、模様や形を作っている。


「…すごい、きれい」


 と私はとっさに口に出てしまったのだけれど、アヤカは何も反応しなかった。


「…ミカさん。これは旅路の軌跡。自分の行くべき場所を、次の場所を示してくれるものです」


 私の考え、というか頭の中を読んだのか、そう答えてくれた。…旅路の軌跡。それは言葉から何となく想像するに、きっとアヤカが今まで旅をしてきた…跡なのだろうか。


「この白い布は、私達にとって生涯を共にするものです。生まれた時に与えられ、そして―」


 アヤカは私の方を見た。


「これが私達の〝すべきこと〟と求め合います」


 アヤカはこの軌跡を頼りに私たちの世界を歩いて来た。でも、どうみても準備万端でやってきた感じはしない。やっぱり、何かしらの事情があって、ここまでやってきたのだろうか。…私は彼の足を見てそう思った。


「それで、その軌跡っていうのは…次はどこへ行くの?」


「…」


 アヤカはまた静かに祈りを捧げるように目を閉じた。


 すると、やがてある地点から線が伸び、やがてそれは緩やかに私の方へ向かって伸びてくる。


「…これは?」


「私はミカさんに会いに来た…というよりも、求めて来た。と言うことになります」


 それは自分の意志ではなく、言うなれば生まれた時に定まったもの。出会うために、求め合うからこそ、この白い布は渡されるのだとアヤカは言う。


「…私に会いに」


「そうです。…もっとも正確に伝えるのであれば、見つかりに来た。と言うことになるかもしれません。…それがもっともらしい表現かもしれないです」


 そう言うと、アヤカは祈りの体勢からもとに戻った。すると伸びていた線は次第に見えなくなっていく。


 私は部屋の電気をつけると、座っていた椅子に戻って考えることに。


「一体なぜここに?」


 腕組みをして天井を見上げる。


 さっき言っていた〝求めて来た〟ということは、…という言葉を使うということは、アヤカが求める何かを私は持っているのだろうか。


 しばらくそうやって考えていると、アヤカが声をかけて来た。


「ミカさん、…僕たちの話を少ししてもいいですか?」


 言葉に反応すると、アヤカの方を見た。


「うん、もちろん。…じゃあお茶を入れましょうか」


 と言って私はキッチンへ向かって行き、お茶の準備を始めた。

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