3.届け屋さん
気が付くと朝になっていた。結局あのあと、仕事を始めたのはいいけれど、昨日、アヤカが家に来て、それでそのことについて考えていたら、いつのまにか寝てしまったらしい。
顔をあげると紙が頬に張り付いて来た。
椅子から体を起こすと、薄手のタオルケットがかけられていることに気が付く。どうやらアヤカが寝ている私にかけてくれたのだろう。…というよりそれしかないのだけれど。
タオルケットを手に取り、仕事部屋から隣の部屋に。てっきりアヤカは起きているのかとおもったのだけれど、ソファーの上で昨日と同じ体勢で眠っているようだった。
寝室へ向かい、タオルケットを元に戻すとそのままの足で冷蔵庫に向かった。
「パンと…それから」
朝ごはんを作る食材を取り出す。昨日作ったスープ。それから近所の人に貰った野菜。準備をしているとアヤカが起きたらしい。起き上がった状態のままこちらへ向かってきた。
「おはようございます。ミカさん」
「おはよ、よく眠れた?」
「はい」
「出来たら持っていくから、そこのテーブルへ座っていて」
作ったものをお皿にのせてテーブルへ運んでいく。その様子をアヤカはじっと見つめていた。全部運び終え、私も椅子に座ると食べ始めることに。
「…どうしてそんなに良くしてくれるんですか?」
「うん?」
スープを飲んでいる時にアヤカは話しかけてきた。だけど、質問の内容がよくわからない。困っている人が居るのであれば、ある程度助けるのは…その人としては割とある行動だと思っていたのだけれど…。でも、それも多分きっと昔の話なのかもしれない。
質問に答えようとお皿をテーブルに置いた時、外から羽根の音が聞こえた。
「あっ、ごめん。今日…そうだ」
私は急いで立ち上がると、仕事部屋へ向かい、窓を開けて外に出た。
来たのは〝届け屋さん〟と呼ばれる大きな鳥。見た目はタカとかワシに見えるけど、身長と言えばいいのか、体長なのか。とりあえず私の背よりも大きい。彼らはここら一帯を飛び回り、決まった日の決まった時間にやってきて、物を渡したり、集めたりしている。
「どうもね…。私のある?」
そう聞くと彼はうなずいて、胸のカバンを羽でつついた。私はカバンを開けると、綺麗に間仕切りされた中に自分の名前を見つけ、封筒をいくつか取り出していく。…それをやっている最中、いつものように彼は私の頭を軽くつついてくる。
「分かったから…ちょっと待ってて」
取り出した封筒を仕事部屋に持っていき、机の一番下から手のひらくらいの大きさの有るクッキーの入った袋を取り出すと、彼の元へ戻った。袋を開けて、大きなクッキーを2つにしてあげ、彼の口元へ差し出すと、彼は器用にくちばしを使って食べ始める。
「水も飲むでしょ?」
庭にある水道に向かうと、置いてあったバケツを取り出し、水をだしてある程度入れて、彼の目の前に差し出した。
彼が水を飲んでいる時、今度は送る封筒を彼のカバンの中に入れる。来たときと同じようにしっかりとカバンを閉じてあげる。
「…よし、これで私の所は大丈夫だよ。…まだ仕事あるんでしょ?」
そう言って彼の頭を撫でてあげると、嬉しそうにして大きな羽を広げる。そして、その羽を羽ばたかせ、また来たときと同じように空へ飛んでいった。彼を見送ったあと、テーブルへ戻ると、アヤカも部屋の中から彼を見送っていた。
「あの大きな鳥は?」
「ああ、あれは届け屋さん。私の…私達みたいな仕事をしている人たちは、彼を通じて出来たモノとか、作ったモノのやり取りとかをしているの」
「…でも、普通の郵便みたいなのもありますよね。僕、受け取ったことありますよ」
「もちろんあるんだけど…うーん、そうだなぁ、理由はよくわからないんだけど、伝統なのかもしれないけど、昔から彼にお願いするのが普通というか…」
「そうなんですね…よかったです」
何がよかったのかはよくわからないけれど、アヤカは少し嬉しそうな顔をしていたのは見えた。朝食を食べ終えると、私はアヤカに冷たいお茶を出し、さっきついでに取り込んで置いた白い布を渡した。
「…アヤカ。私の仕事。何をしているか気になる?
「え?…あ、はい。少し」
昨日の夜、私は彼が起きたら話を聞こうと思っていたのだけれど、彼の様子を見てあることが気になったというか、考え付いた。彼の話を聞く前に、とりあえず私のやっていることを話そうと思ったのである。
私はアヤカを仕事部屋に案内した。




