18.後輩ができた
「魔王……ですか?」
繰り返した俺の言葉は、「違う違う」とシェナさんが笑って答えてくれるのを期待しての言葉だった。しかし彼女は真っ直ぐにこちらを見るだけで、それどころか黙って頷いた。
「えっと、冗談ですよね?」
「まさか。私が冗談を言っているように見えるかい?」
「いや、でも……」
シェナさんが小さくため息をつく。
「まあしかし、イグルミさんの戸惑いもごもっともだ。私もイグルミさんの立場ならおよそ同じ反応をしていただろう。
魔王といえば、この世界では昔から恐怖の象徴とされている存在だ。子どもから老人まで尽くそれは変わらない。ニホンに、というかそちらの世界には魔王も勇者もいないと聞いているが、概念としては存在するものだとも聞いている。もちろん魔王という存在に対する感覚は、私たちとは大きく違うとは思うがね」
要するに、魔王というものがどれだけ大きな存在なのかは、俺なんかよりもシェナさんの方がずっと理解しているということだ。
しかしそれなら、余計に理解できない。
「魔王といえば、一般的には僕の世界では僕らとは敵対する存在とされています。それは違うんですか?」
「いや、それはこの世界でも同じだ。魔王は人間種の最大の敵であると、全員がこう教わって生きているよ。実際にこの世界の歴史でも私たちは幾度となく魔王率いる魔族や魔物と全面戦争を繰り返し、それは波が大きくなったり小さくなったりしながら、今も続いている。今回イグルミさんが魔族に攫われたのもその一部と言える」
「じゃあなんで、そんな人が――魔王が僕を助けるようなことをしたんですか?」
「その疑問こそ正しいよ。情報を補足すると、イグルミさんを攫った魔族というのは、魔王を主とする主従関係に近い。魔物もだいたい同じだね。
あの場にいたのは、人間種であるイグルミさんと、魔王の配下とも呼べる魔族。それなのに現れた魔王は、魔族側につかずに人間種であるイグルミさんを助けた。それは何故か?」
シェナさんはひと息ついて続ける。
「答えは実にシンプルだ。魔王が人間種の敵ではないからだ」
「………………?」
頭の中でシェナさんの言葉が繰り返される。が、言っていることがいつまでもわからない。
魔王が敵では無い? でも魔王だぞ? シェナさんだって、魔王は魔族や魔物の主だって言っていた。魔王は人間種の最大の敵だとも。それなのに魔王が敵じゃないなんて、そんな話があるのか?
「確かに信じ難い話ではある。というより、特にこの世界の人たちにしてみれば信じることなんてできないだろうね。なんせこれまで聞いてきた話が根底からひっくり返るわけだから。ただし、これは決して矛盾してはいない。なぜなら実際に、これまでの魔王は人間種と敵対していた。私が言いたいのは、今の魔王についてだ。
しかし、私がいくら説明したところで、なかなか信じられる話でもないだろう。違うかい?」
「それは、そうかもしれません」
「だからここで、証人を増やすことにしようと思う」
その時、軽い音が部屋に響く。ドアがノックされた音だった。
「ああ、実にちょうどいいタイミングだ」
シェナさんは立ち上がり、そして部屋の入口に立つ。
「ではイグルミさんに紹介しよう」
それから俺を見て少し笑みを浮かべると、ゆっくりとドアを開いた。
ドアの向こうに立っていたのは、何やら見覚えのある女性だった。
「こちらは、サラシナ・ネネカさん。イセカイ運輸の新しい職員だ」
「………………」
「あ、弋さん。どーも……」
恥ずかしそうに笑う彼女は、紛れもなくあの、更科さんその人だった。
「……えっと……え?」
「おや? 二人は知り合いだったのかい?」
シェナさんの反応からすると、どうやら僕らのことについては更科さんから特には聞いていなかったらしい。
「はい。少し前に、私たちの世界の方で弋さんに助けてもらったことがあって、その時に」
「へえ、イセカイ運輸の関係とかじゃなくってかい? それはすごい偶然だ。それにイグルミさんもなかなかやるじゃないか」
「そんな、助けただなんて。大したことはしてないですよ」
またまたー、と笑うシェナさん。
それより。そんなことより。
俺はひとつ息を吐いてから尋ねる。
「えっと、それでどうしてここに更科さんが? というかシェナさん、更科さんのことイセカイ運輸の職員って言いました? 初耳なんですけど」
「まあまあ、質問は順番にね。まずサラシナさんがここにいるのは、イセカイ運輸のお客さんとしてこっちの世界に来ていたところを、たまたま、色々あって私がここに呼んだからだ。サラシナさん、そうだよね?」
だいぶ雑駁なシェナさんの説明に対し、はい、と頷く更科さん。
「あと、サラシナさんが職員になったということについてだが――」
話を続けるシェナさんは僅かに苦笑しながら言う。
「サラシナさんが魔王に、イセカイ運輸の職員になれ、って脅されたからかな。合ってるよね?」
「まあ間違ってはいないかと」
更科さんもシェナさんよろしく、にこやかに答える。お互い和やかな感じで話しているが、その雰囲気の似合う内容の話ではない。それと魔王ってイセカイ運輸の人事を担当してたの? いよいよ全くもってわからない。
「さて、じゃあここからは具体的な話をしていくとしよう。サラシナさんも、どうぞ座って」
「ありがとうございます」
やり取りを見る限りでは、二人が嘘をついてるだとか、特別に裏があるような感じはあんまりしない。
疑うとすれば二人を魔王が脅して自身への敵意を失くさせるように振る舞わせているとか……いやいや、だとしても俺なんかにそんな工作をする必要はないよなあ。
ともかく俺は自身にかけられていたブランケットを退けて、痛みを堪えながらベッドの淵に座る。
「それじゃあ話はいくらか逸れたけど、イグルミさんがあの魔族に連れ去られた、その後の話をしよう。そうすればサラシナさんのことも説明できるしね。とりあえずイグルミさん、何かここまでで新しく思い出したことは?」
「いえ、特には……」
「それなら順を追って話すとしよう。ただ、その前に重要なことを伝えておかないといけない」
「なんですか?」
すると大きな瞳で鋭く俺たちを覗きながら、身を少し屈めたシェナさんは声を低く抑えながら答える。
「二人とも、私が話した魔王のことや、実際に森で何を見たのか、何があったのかっていう一切は他言無用だ。もしこれが守られなかった場合は……」
「「守られなかった場合は……?」」
「その魔王が二人の記憶を消しに来る可能性は少なくないかな。でも魔王も人の記憶のみを消す魔法を使えるかどうか。もし使えないときには、記憶どころか二人の存在ごと――」
「わかりました!」「言いませんから、どうぞ話を続けてください!」
「ああそう? それならいいんだ」
ケロッと、シェナさんは元に戻ると、意地悪っぽく笑っていた。果たしてどこまで本当のことを言っていたのか、俺には判断がつかなかった。
「さて。ではご希望どおり、続きを話すとしよう。まずイグルミさんも覚えている通り、イグルミさんは例の魔族の何かしらの魔法で国外に連れ去られた。魔族も殺されたからどんな魔法だったかは不明だが、魔族が独自の魔法を使うことも珍しくはない。が、魔王の見解ではさすがに国内外を自由に行き来できるほどのものではなかっただろうから、今回は特別だったと考えるべきだろう。
いずれイグルミさんは魔族に連れ去られたわけだが、魔王によると、その魔族はイグルミさんを魔王への貢ぎ物とするつもりだったらしい」
「貢ぎ物、ですか」
「ああ。だが魔王自身、別に人間種をとって喰らう訳でもなし、全くもって余計な気遣いだとは言ってたけどね。むしろどうしてあの魔族がそんな発想になったのか不思議なくらいだそうだ」
魔王は人間の敵。捕らえて食料にするくらいはあるものだと思っていたが、魔王は特別なんだろうか。
「とはいえ貢ぎ物を手に入れた魔族は、魔王に献上するつもりだった。そいつは魔族に成り立てだったらしいが、魔王に何か取り計らってもらおうとか考えたらしい。生まれたばかりでそんなことを思うんだから、魔族や魔物は魔王という存在を本能的に理解しているんだね。今回については実際にはその考えは誤りだったとはいえ、これはなかなか興味深い話だ」
シェナさんが楽しそうに軽く頷く。
「でも魔王はそんな貢ぎ物なんていらないんですよね。魔族のそれが本能的なものだとしたら、魔王も本能的に貢ぎ物を欲したりするもんじゃないんですか?」
「……面白い視点だ。しかし魔王というのは『魔王』という型ではありつつも、全員が画一的なものではないんだ。人間種だって同じ『王』でもみんな考えることなんてバラバラだろう? 人間種と魔王を一緒くたに考えるのも無理な話かもしれないが、まあそんな感じだ。
そして今代の魔王は特に、これまでの魔王とは大きく違っていてね。貢ぎ物の話もそうだけど、特に人間種との関わり方については友好的な関係を望んでいるんだよ」
「それは本当なんですか?」
「疑うのは当然だが、私に言わせればこれは事実だ。証拠は——いや、別に今すぐに信じられなくても近いうちに信じられるようになると思うな」
そんな話があるのか? さすがに信じられることではない。
「更科さん、本当にそんな感じでした?」
「え? まあ、うん、どうだろう……でも私にはそんな風にも見えたかなあ?」
曖昧な返事ではあったけど、そりゃあ断言できるものでもないか。胡散臭い話ではあるけど、完全に嘘というわけでもないと。
「なるほどですね……。じゃあ一旦シェナさんの話が事実だとして、だから魔王は人間種の僕を助けたということですか?」
シェナさんはしっかりと頷く。
「だが、そうはいっても魔王という立場だ。私たちと仲良くしているなんてことが魔族たちに知られれば、魔王とはいえ同族からの反感は相当なものだろう。自分たちの敵であるとする魔族たちも少なくない——それどころか、殆どがそう考えるんじゃないかな。
人間種が敵であるというのは、魔族や魔物にとっては変えようのない決まりきった事実だ。これは何があろうと変わることはないとされている。そして魔族と魔王が対立したとして、じゃあ人間種が得をするかというとそうもいかない。ニホンの人たちからすると理解し難いと思うが、この世界は均等を好むんだ」
「均等ですか?」
「ああ。魔王たちと、人間種。何かが原因でパワーバランスが崩れると、それを正そうと世界が動く……と言われている」
「過去に事例でもあるんですか?」
「世界の働きとされる最たるものは、人間種の代表であり、『ケツァメア王国』で生まれ魔王と対を成す――いや、紛らわしくなるから掘り下げるのは今はやめよう。とにかく、この世界では全員がこの世界の働きってやつを信じているよ」
「そうなんですか……」
もちろん俺もこの話を素直に信じられはしない。それどころか、シェナさんの話はさっきからほとんどそんな話ばかり。しかしここは異世界。何から何まで疑ってもキリがない。何せ現地の人間がこう言っているんだからと、ここは一旦受け入れることにした。
「じゃあシェナさん、なんでそれを僕たちに話してくれたんですか? そもそもシェナさんはどうしてそのことを知っているんですか?」
「話した理由は単純で、イグルミさんもサラシナさんも既に魔王には出会ってしまっているからだよ。イグルミさんにしたって、今は忘れていても何かの機会に思い出すかもしれないだろう? そして私が魔王のことを知っているのは、サラシナさんには話したが、有り体に言えば私と魔王が『友達』だからだ」
「友達、ですか?」
「ああ」
シェナさんは真っ直ぐに俺たちを見ながら言う。実際に魔王に会っている更科さんの様子を見てみたが、そこまで驚いてるようには見えない。むしろ俺には納得しているようにさえ見える。
——どうやらシェナさんの話は嘘ではないらしい。そして、嘘でないならどうなのか。結論、俺は余計に困惑する。
「誤解のないように言っておくが、私はちゃんと人間種だ。第一にそこは信じてほしい。まあ『友達』というのも、私が一方的に思っているだけかもしれないがな」
友達、か。ここまでのシェナさんの話によれば、『友達』というのもおかしな話ではないのかもしれない。でも、魔王と友達かあ。俺とかの立場だとどうだろう。ずっと昔からのライバル業者の社長と俺が友達とか……いやいや、そんな低っいレベルの話じゃないよな?
「さ、話の続きだ。その魔族は、イグルミさんを貢ぎ物としようとした。それを魔王が断った。別にそんなものはいらないってね。すると魔族は――こういう短絡的なところは魔族に共通しがちなんだが、イグルミさんが必要ないからと処分しようとしたんだ」
「処分……ですか」
「はっきり言ってしまえば、殺そうとしたわけだ。こう、腕でグサリとね」
シェナさんは言いながら指先が伸びたままの右手を前にシュッと突き出す。経験あるんですか、ってくらいきれいな動きだったな。気になるのは、パンチなんかじゃなくてちゃんと腕ごと刺し殺すような風に見えることくらい。
「……一応聞きますけど、それ、刺さったりしました?」
「もちろん。なにせ相手は魔族だからね。それくらいのことはなんてことないさ」
さも当然のようにシェナさんは言う。確かにさっき目覚めてから、時々胸の辺りがズキズキ痛む。慌てて手を当てて確認したけど、身体に穴が空いているとかはない。
「でも僕自身の身体は無事なようなんですけど……」
「私が治したからね」
「治した……? シェナさんがですか?」
「ああ。こう見えて回復魔法は得意でね。とはいえあの時はギリギリだったと言わざるを得ない。まだ痛みが残ってるのがその証拠さ」
シェナさんは得意げにもならず、淡々と答えた。いやいやいや、話によれば俺、胸元に穴が空いたってことでは? いくら魔法とはいえそんなに凄いものなのか!
「じゃあシェナさんは命の恩人ということですよね! ありがとうございます!」
「やめてくれよ。むしろ国の中に魔族が現れることを防げなかったギルドの落ち度でもあるんだ。今朝の事件は覚えてる? どうにも魔族によるものだって話したら犯人探しは任せろって出ていってさ。こっそり尾行していたのがたまたま功を奏したね。ま、魔王にはバレてたけどね!」
つまり人間社会で起きた事件の解決に魔王が協力を申し出たと、そういうことか。事実だとすれば、シェナさんの魔王評の信頼度は大きく上がるというもの。しかし魔王はそこまでアーウェズト、というかシェナさんに協力的なのか。想像以上だな……本当なら!
それと少し驚いたこと。それはシェナさんも魔法が使えるということ。……いや待てよ? もしかすると魔法は、この世界では普通のものなのかもしれない。そういえば山田さんだって俺を探すのに探知魔法を使ってたって言っていた。そうなると俺にも魔法が使えるということか!?
「……更科さん。付かぬ事を伺いますが、もしかして魔法って使えますか?」
「私ですか? 使えますよ。私に限らず転移者はみんな簡単な魔法なら使えますかね」
更科さんはあっさりと答える。それに更科さんどころか、みんな使えるって? そんな素晴らしいことがあるのか!
「弋さんも、よろしければ私が後で教えてあげますよ? そんなに難しくもないですし」
「ありがとうございます! ぜひお願いします」
「いいえ!」
そうか、魔法ってみんな使えるのか! 単純に好奇心として使ってみたいというのもあるけど、自己防衛として身につけておかないとという危機感もある。こっちの世界に来てからもう既に二回は大きな必要性に迫られているし。きっとこれからも必要になるのは間違いないから、いい機会だ。
「それで、魔族は魔王によって倒されたんでしたっけ?」
「ああ。それはもう一瞬だったよ。私にも正直、何が起こったのかはわからなかった。さすがは魔王といったところかね。どう? サラシナさんは見えた?」
いえ全く、と答える更科さん。少なくともこっちの世界では俺たち転移者の身体能力は大幅に向上している。動体視力なんかもそうだろうし、そんな更科さんが見えないというのだから相当なんだろうな。さすが魔王。
「そういえば更科さん、その時ってどうしてその場にいたんですか?」
「それが、私はたまたま近くで魔物と戦ってて、戦闘も終わってさあ帰ろうとしたら近くから声が聞こえたんです。声の方に行ってみたら弋さんとその魔族で、弋さんが危ない状態にいるのは見てすぐにわかったんですけど、助けようにも私じゃどう見ても力不足だったので助けを呼ぼうかとか迷ってたら、その魔王って名乗る人が現れたんです。
私はそのまま隠れてて、でも一連のことが終わった頃に魔王に声をかけられたんですけど、最初からいたことはバレていたみたいでしたね」
「おや、サラシナさんにはあの魔族が格上だってわかったんだね?」
「え? そう、ですね。そんな気がしたってくらいですけど」
更科さんの答えを聞き、シェナさんは満足そうな顔になる。
「いやあ、これは有望だね! ぜひアーウェズトの憲兵団の連中にも勉強させてあげたいものだ。どうだい、先生なんてやってみるのは?」
「それはちょっと……」
「ふ、冗談さ。私も魔王に怒られたくもないしね。それで、イグルミさん。なんとなく何があったかは理解できたかい?」
とりあえず、時系列に沿っての出来事は教えてもらって理解できた。もちろん細かいところで聞きたいことや頭ん中でごちゃついてることもあるけど、なんとなく、という点において俺は「はい」と答えた。
「よろしい。そういうわけで、イグルミさんを攫った魔族は魔王により討伐され、イグルミさんは死なずに済んで、ついでにサラシナさんは魔王に出会ってしまったというのが今回の顛末だね。そして、話したように魔王と私たちの関係性が広まるのは非常に問題があるということで、魔王の提案でサラシナさんをイグルミさんと同じイセカイ運輸の職員としてこれからやってもらうこととなった訳だ」
「つまり僕の目の届くところにいてもらう、ということですか?」
「そうだね。あとイセカイ運輸にいるのなら、私と顔を合わせることはいくらでもあるからね。サラシナさんを、自由にハイどうぞ、とできない以上は魔王の提案も理にかなっていたという点で、私もそれには賛成したよ」
なるほどね。まあ背景の事情があまりに大きいから、この程度の対応で済むのであれば魔王側としてはむしろ譲歩してるくらいなのかもしれない。
かといって、はいわかりましたと素直に頷けるほど簡単な話でもない。それは俺のことではなく、更科さんのこと。こっちの世界のことだけでなく、現実世界の更科さんの生活にも直接影響してしまう結果だからだ。
「……更科さん、いいんですか?その……つまりはイセカイ運輸に就職するってことみたいですけど」
更科さんに尋ねると、うーん、と悩んでから「こうなったら仕方ないよね」と笑顔で返ってきた。そういうもんかなあと思いつつ、更科さんがそう言うなら、と俺もそれ以上は何も言えなかった。それと同時に更科さんの人の良さのようなものに感動を覚える。
「じゃあ、そういうことだから! 弋さん、よろしくお願いしますね?」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
こうしてイセカイ運輸に入社して一週間もせず、俺には後輩ができたのだった。
……さてはこれ、一番大変なのは急に後輩二人抱えることになった山田さんなのでは? 今日の時点でぐったりの様子だったから(ほとんどの原因が俺絡みなのは言うまでもない)、彼のこれからが心配だ……。
飲みに誘われたらちゃんと行くようにしよう、せめてものねぎらいに、と俺はそう心に誓った。




