第76話 白狐神、おっちゃんを見送る
翌朝。まだ朝靄の残る湖畔で、俺は黒いピックアップトラックを収納から出した。
空間がわずかに揺れ、長い車体と大きなタイヤが地面へ現れる。荷台の後部には、レイクサーペントを倒した時に使用したブローニング重機関銃が、そのまま搭載されていた。
「朝から物騒じゃのう」
俺の肩に乗ったこびゃっこが、前足を腰へ当てる。
「当分は使うこともないだろう。見せびらかすつもりもないから、カバーを掛ける」
防水性のある厚手の黒いカバーを被せ、裾を固定ベルトで締める。銃身や照準器の形が外から分からないよう、さらにその上から荷台用のシートを掛けた。
弾薬は全て取り外し、スキルで収納しておく。
荷台前方には滑り止めマットを敷き、ラッシングベルト、角当て、防水シートも積み込んだ。
魔石箱は収納へ入れられると思うが、現物を見るまでは分からない。箱を荷台へ載せて運ぶ場合にも備えておく。
「おっちゃん、これ、のる?」
ユキが、ピックアップトラックの大きなタイヤへ手を伸ばしかける。
「今日は乗らないぞ」
「ユキ、おるすばんかんとく」
「ああ。昨日頼んだとおりだ」
「バギー、いる」
「2台とも残す。何かあった時は、ロクとリーファが使える」
「おっちゃん、よる、かえる?」
「予定どおり魔石が届いていれば、夕方から夜になる前には戻る」
「とどいてなかったら?」
「中継地点で状況を確認して、遅くなるようなら無理に待たず戻る。暗い森道を長時間走る方が危ないからな」
「だんどり」
「そういうことだ」
ユキは納得し、頷いた。
その隣では、ガランとドランが旅装を解き、久しぶりに現代服と湖畔用の装備へ戻している。
今日、中継地点へ向かうのは俺とガランだけだ。ドランは湖畔に残る。旅の疲れを取るという建前だが、本人は朝食前から鋼橋の下へ潜り込み、主桁や橋台をもう一度見たいと言っていた。
「ドラン」
「何じゃ?」
「橋の下へ入る時は、ロクへ伝えろ。1人で行くな」
「橋を見るだけじゃぞ」
「滑って小川へ落ちた時、誰も知らなかったら困る」
「わしはドワーフじゃ。多少の水では流されぬ」
「種族の頑丈さを、安全手順の代わりにするな」
「自分が一緒に行くっす」
ロクが答える。
「橋を見終わったら、グイグイとゴロゴロの説明もしてくれ」
「重機はヒカルが収納したままっす」
ドランが残念そうな顔をする。
「外へ出しておいてくれてもよかろう」
「キーを抜いていても、留守中に子供が近づく可能性がある。それに、お前が車体の下へ潜り込む未来が見える」
「構造を知るには、下を見るのが早い」
「ボルガも同じことを言いそうだな」
「ボルガを知っておるのか?」
「昨日、職人名簿で聞いた鍛冶師だろ」
「あやつも面白いぞ。道具を見れば、まず分解しようとする」
「やっぱり同類じゃないか。2人揃ったら工具を隠す必要がありそうだ」
「職人の探究心を妨げるでない!」
「持ち主の許可を取ってからにしろ」
◇
出発前に、ガランとドランへ新しい装備を渡すことにした。
工事事務所の長机には、小型無線機2台、防水双眼鏡2台、予備バッテリー、充電器、ネックストラップが並んでいる。
「これは、ロクたちが使っている物と同じか?」
ガランが無線機を手に取った。
「ああ。ガラン用とドラン用を追加した。ガランは警戒と王国連絡の取りまとめ。ドランは職人作業中の安全連絡を担当してもらう」
「わしもか?」
「職人が来たら、鍛冶、石工、土木の作業へ関わるだろ。離れた場所で材料を確認する時や、異常を知らせる時に使える」
「びゃっこ放送局を受信するためではないのか?」
こびゃっこが机の端で胸を張った。
「お前へ送信させる予定はない」
「なぜじゃ。新たな聴取者が2人も増えたのじゃぞ」
「聴取者じゃなく作業員だ。それと、工事中の歌は禁止」
「全18番は長いと言うたから、全12番へ短縮したのに」
「0番まで減らせ」
「歌そのものが消えるではないか!」
俺はガランへ操作を教える。
電源。音量。チャンネル切り替え。送信ボタン。送信前に一拍置く。短く名乗り、場所と状況を伝える。
「基本は1番。巡回と警戒は2番。工事は3番だ。4番は緊急予備。今日は俺とガランで2番を使う」
「湖畔側は?」
「ロクとリーファも2番を確認する。ただし、距離が離れれば湖畔までは届かない。湖東側へ向かう途中、車両から離れた時や、中継地点周辺で使うためだ」
「了解した」
ガランは送信ボタンを押し、一拍置く。
『こちらガラン。工事事務所。無線機の動作を確認する。ヒカル、どうぞ』
『こちらヒカル。ガランの音声、明瞭。動作に問題なし。以上』
ガランは一度頷いた。
「慣れれば使いやすいな」
「送信ボタンを押したまま考え込まないことと、長話をしないことだけ覚えてくれ」
「ドランが酒の感想を語り始めた場合は?」
「当然切る」
「横暴じゃ!」
「作業連絡に酒の香りや喉越しは必要ない」
ドラン用の無線機は、本人に持たせる前にニナが識別ラベルを貼った。
【ドラン】その下には、小さな樽酒の絵が描かれている。
「わしのは樽酒か」
「ガラン、剣」
ガラン用には剣の絵。
「成る程。分かりやすいな」
双眼鏡も、それぞれ首から下げられる防水型にした。
「歩きながら覗かない。太陽を見ない。使った後はレンズを拭き、ケースへ戻す」
「子供へ教えるのと同じ説明じゃな」
ドランが言う。
「大人も同じだ。大人だから説明を飛ばすと、妙な使い方をする」
「わしは大丈夫じゃ」
ドランは早速双眼鏡を覗き、反対側から使っていた。
「湖が遠くなったぞ!」
「逆だ」
「おお。こちらか」
「確かに。説明が必要だ」
ガランが淡々と言うと、ドランは向きを直す。
「おおっ。橋が近い!」
「今度は双眼鏡を覗きながら走るなよ」
「走らぬ」
「屋根職人のミネットには、絶対持たせるな」
「なぜじゃ?」
「高い場所で覗きながら歩きそうだからだ」
「やりそうじゃな」
ガランたちの話を聞いているだけなのに、会ったことのない職人の危険行動まで想像できるようになってきた。
◇
朝食を終え、俺とガランはピックアップトラックへ乗り込んだ。
助手席の足元には、飲料水、スポーツドリンク、携帯食、救急ポーチ。
後部座席には工具箱、タイヤ修理道具、牽引ロープ、折りたたみスコップ、予備燃料。地図と方位磁針はダッシュボード横へ固定した。
「おっちゃん」
運転席の窓から顔を出すと、ユキが両手を上げた。
「いってらっしゃい」
「行ってくる」
「おっちゃん、にげるな。ちゃんと、よるまで、かえる」
「ユキ、俺が帰る場所はここしかない。逃げたりしない、できるだけ早く戻る」
「ガラン、おっちゃん、みてて」
「分かった。ヒカルを見ておく」
「俺は子供か」
「ヒカルは放っておくと、1人で何でも始めるからな」
「ガランまで、その扱いになったのか」
「王都で報告している間に、橋と道路と職人宿が増えていた」
「反論しにくい」
こびゃっこがユキの肩へ乗り、前足を振る。
「こびゃっこ。俺がいない間、ユキを守るのは守護神使のお前だ。頼んだぞ」
「最初からそのつもりじゃ。おお、せっかくじゃからお主は湖東側の名所を撮影してくるのじゃぞ!」
「観光じゃない。カメラも持っていかない」
「撮影主任の代わりを果たすのじゃ!」
「こびゃっこ。留守番中は、ドランの橋見学を撮影してくれ」
「空撮担当として、職人の技術解説を記録してやるのじゃ」
「レンズを近づけすぎるなよ」
「わしの髭を大写しにするでないぞ」
ドランが言う。
「そう言えばお主、髭の一本一本に、職人の歴史が宿っておるのう」
「何を撮るつもりじゃ!」
2人のやり取りを残し、ピックアップを発進させた。完成した南側道路をゆっくり走る。
道路脇にはユキ、ニナ、ミーシャ、トト、リリア、アルノ、マリベル、ロク、リーファ、ドラン。そしてミミとクロメが並んでいる。
全員が見送る前を通り、畑の正門を過ぎ、鋼橋へ入る。
滑り止め付きの路面覆工板を、タイヤが低い音を立てて踏んでいく。橋を渡り、まだ道路のない湖岸沿いの草地へ出た。
「この車で湖東側まで走れるのか」
ガランが助手席から前を見る。
「ああ。バギーより長距離は楽だ。荷台も広いしな」
「道ではない場所も進めるのか?」
「深い泥、急斜面、大きな岩場でなければな。まあ、無理はしない。この間までの雨でぬかるんでいる所があれば迂回する」
「レイクサーペントを倒した時は、自走する車だとは思わなかった」
「俺も戦闘以外に使うのは初めてだ」
「荷台の武器を除けば、移動と運搬に便利な車だな」
「武器の方が後付けだからな。元は荷物を運んだり、悪路を走るための車だ」
「元の持ち主は、なぜ荷台へあれを載せた」
「趣味が高じたんだろう」
「趣味で、厄災級の魔物を倒せる武器を載せたのか?」
「俺の世界にも、かなり変わった人間はいる」
「変わった人間か。ヒカルが言うと、説得力が妙だな」
「俺まで同類にするな」
◇
湖岸沿いを東へ進む。以前、ロクとリーファがガランとドランを送った時に使った経路をたどった。
草地。小砂利の浜。森の外縁。浅い沢。途中、木が倒れて通路を塞いでいたため、車を停止する。
俺とガランは無線機を確認し、双眼鏡で周囲を見る。
「大型魔物の姿なし。森側にも動きはない」
「こちらも異常なしだ」
倒木は直径30センチほど。根元から倒れているが、幹の途中で枝が張り、車体が通れない。収納から充電式チェーンソーを出した。
「切る前に、木がどちらへ動くか確認する。幹へ張力が残っている場合、切断した瞬間に跳ねることがある」
「俺が枝の動きを見る」
「頼む。危ないと思ったら声を掛けてくれ」
太い枝を数本落とし、幹を短く切り分ける。全てを道外へ運ばず、ピックアップが通れる幅だけ空けた。
切った木材は道路脇へ転がらないよう、斜面の低い側へ置かず、森側の平坦な場所へ寄せる。
「道路が完成すれば、この作業も減るか」
「倒木まではなくならないが、通行場所を決めておけば巡回と整備はしやすくなる」
「道路は、この方向へ延ばすのか?」
「橋から湖岸方面へ300メートルだ。湖東側まで道路を造るわけじゃないぞ」
「250キロメートルを造り始めると言ったら、止めようと思った」
「そんなポイントはない」
「ポイントがあれば造るのか?」
「……一瞬考えた自分が嫌になる」
「ヒカル」
「造らない。少なくとも今は」
「『今は』を付けたな」
「ニナの『新幹線、まだ』が移ったかもしれない」
倒木を片付け、再び走り出す。昼前には、湖の南岸中ほどまで来た。開けた草地へ車を止め、短い休憩を取る。
朝にミーシャが持たせてくれたおにぎりと、鶏肉を甘辛く焼いたものを食べる。
「米の話をした時、王は本当に湖畔へ来そうだった」
ガランがおにぎりを見ながら言った。
「セイラム王が?」
「ああ。稲荷寿司を聞いた瞬間、訪問の決意が強まった」
「王国の重大な外交判断が、稲荷寿司で動いてないだろうな」
「表向きは白狐神への挨拶だ」
「表向きって言ったな」
「銀狐族にとって、米と稲荷寿司の伝承は特別らしい」
「来るなら準備はするが、突然はやめてほしいな」
「宰相も同じことを考えているだろう」
「ユキは王様でも、唐揚げの数を変えないぞ」
「それでいい。セイラム王も、おそらく喜ぶ」
「王が子供と同じ数の唐揚げを配られて喜ぶ国なのか」
「少なくとも、今の王はな」
◇
午後。湖東側に近づくにつれ、街道へつながる古い踏み跡が増えてきた。
双眼鏡で前方を確認していたガランが、右手を上げる。
「煙が見える」
「どの辺だ?」
「湖岸から少し離れた丘の下。焚き火らしい。馬が数頭いる」
「予定の中継地点だな」
車を止めず、速度を落とす。
「どうする?」
「近づいてから、警戒させないようゆっくり入ろう」
「その車を見て警戒しない方が難しいと思うぞ」
「武器は隠したぞ」
「車体だけでも、十分に鉄の獣だ」
「グイグイを見た後なら小さく見えるだろ」
「伝令隊はグイグイを知らない」
「そうだった」
中継地点は、湖岸から約1キロメートル東へ入った草地にあった。木製の簡易柵。水場。馬をつなぐ横木。雨を避けるための小さな小屋がある。
こちらのエンジン音が届いたのだろう。草地にいた騎馬伝令隊の者たちが、一斉に振り返った。その数6人。
全員が旅装の上から軽装鎧を着けている。馬は8頭。荷運び用の馬が2頭いるらしい。
伝令隊の中央には、大きな木箱が置かれていた。太い金具で補強され、王国の印が付いた封印札が貼られている。
「届いているな」
「ああ」
俺は少し離れた位置で車を止めた。車から降りると、伝令隊はピックアップトラックから目を離せずにいた。
先頭の騎士が、ようやくガランへ視線を移す。
「ガ、ガラン大使」
「ご苦労。予定どおり魔石箱を運んでくれたようだな」
「はい。王城保管庫より封印された状態で預かっております」
騎士は答えながらも、また車を見る。
「その……後ろの鉄の荷車は?」
「ヒカルの車だ」
「馬は、どこに?」
「馬は使わない」
「では、何が引いているのです?」
「何も引いていない。自力で走る」
全員の視線が、ピックアップトラックへ戻った。
「魔導車……ですか?」
「俺の世界の車だ」
俺が答える。
「魔力は使わない。燃料を燃やして動く」
「燃料を、燃やす……」
先頭の騎士は理解しようとしたらしいが、途中で諦めた顔になった。
「それで、湖の西側から?」
「ああ」
「どれほどの日数で?」
「今朝出て、先ほど着いた」
伝令隊が静まり返る。
「……今日?」
「途中で休憩と倒木処理をしたから、少し時間が掛かった」
「少し……」
1人の若い伝令騎士が、ピックアップトラックのタイヤを見た。
「馬車より速いのですか?」
「道が良ければかなり速い。だが、故障することもある。馬とは違う欠点も多い」
「餌は?」
「食べないが、燃料がいる」
「眠らせる必要は?」
「ない」
「疲れない?」
「機械は疲れないが、運転する人間は疲れる」
ガランが補足する。
「便利だが、何でも解決する道具ではない。ヒカルが安全確認をした上で運用が成り立っている」
「今の説明だけで、王都の軍務卿が欲しがりそうです」
「すまんが、持ち帰れないから諦めてもらえ」
俺は魔石箱の確認へ移った。輸送書類の封印番号。箱の焼き印。封印札。金具。底部。側面。こじ開けた跡がないかを確認する。
「ガラン。受領証の番号を読んでくれ」
「952-5-シロガミシエン-1」
「箱の札と一致している」
「封印した担当者は王城財務局と魔石保管局。確認印は3つだ」
「破損なし」
伝令隊長が鍵を取り出した。
「大使の立ち会いのもと、開封するよう命じられております」
「頼む」
封印札を確認してから切る。金具を外し、木箱の蓋を持ち上げた。
中には、布袋と小箱へ分けられた大量の魔石が収められている。色、大きさ、魔力の強さは様々だ。小指の先ほどの物から、拳ほどの物まである。
俺は総合鑑定を使った。
【各種魔物魔石・混合】
【状態:良好】
【魔石ポイント変換可能】
【合計変換値:3,000,000pt】
「……300万?」
思わず声が出た。
「多いのか?」
ガランが尋ねる。
「多い。レイクサーペントの魔石が約100万ptだった」
「では、あの厄災級魔物3体分か」
「単純な魔物の強さや金額とは一致しないが、俺のスキルで使える量としては3倍だ」
伝令隊長が目を見開く。
「レイクサーペントの、3倍の価値……ですか」
「王国は、ずいぶん用意してくれたな」
「保管庫の低級から上級まで、建設支援に転用しやすい物を集めたと聞いています」
「感謝する。用途は記録する」
「王からも、貢ぎ物ではなく友邦への支援であると伝えるよう命じられています」
「聞いている。もちろん近衛騎士団や特使の宿泊、食事、衛生設備にも使う」
伝令隊長は、明らかに安心した顔をした。
「王国へ戻り、必ず報告いたします」
ガランが、魔石箱を見たまま言う。
「レイクサーペントの魔石と比べて思い出した」
「何を?」
「ヒカル。討伐証明を王国へ提出してみるか?」
「討伐証明?」
「ああ。レイクサーペントを倒したことは、俺と東風の牙が証言した。だが、正式な討伐証明となる素材は出していない」
「現場を見たガランたちの証言では足りないのか?」
「王への報告としては十分だ。だが、ハンターギルド、軍務局、漁業組合、水路管理局が正式記録へ載せるには、討伐部位があった方がいい」
「討伐部位って、牙とかか?」
「牙が最も分かりやすい。大きさ、魔力、形状で個体を判定できる」
伝令隊長が頷いた。
「レイクサーペントは、王都から遠く離れた巨大湖に棲む厄災級魔物です。東側湖岸の漁場と水路を長年支配し、過去には討伐隊が何度も壊滅しています」
「そこまでなのか」
戦った時も巨大で危険な魔物だとは思った。
だが、俺にとっては、ユキを襲おうとした敵であり、倒した魔物でもある。
王国側にとって、どれほど長く被害を与えてきた存在なのかまでは、深く考えていなかった。
「討伐が正式に認定されれば、東湖岸の漁場を再開できる」
ガランが続ける。
「湖へ流れ込む水路も安全確認が進む。漁師、船乗り、水路を使う集落にとっては、生活を取り戻すきっかけになる」
「なら、牙を渡した方がいいな」
「ああ」
「収納にある」
俺が何気なく言うと、伝令隊の6人が一斉にこちらを見た。
「収納に……何が?」
「レイクサーペント本体」
「本体?」
「解体していないからな」
ガランが額へ手を当てた。
「ヒカル」
「何だ?」
「出す前に、広い場所を確認しろ」
「そうだった。30メートル級だからな。かなり大きい」
「かなり、で済む大きさではない」
伝令隊の6人は、魔石箱と俺の顔を交互に見ている。
湖東へ魔石を受け取りに来ただけだったはずが、どうやら帰りには、王国の歴史へ残る荷物が一つ増えることになりそうだった。
◇
【第76話・収支報告】
異世界生活62日目
日付:五の月21日
オリエント王国歴952年
開始残高:279,006pt
今回の購入:
・ガラン、ドラン用小型UHF無線機2台、予備バッテリー、充電器
210pt(約21,000円)
・ガラン、ドラン用防水双眼鏡2台、ネックストラップ、保護ケース
180pt(約18,000円)
・ピックアップトラック用軽油、予備燃料
260pt(約26,000円)
・荷物固定用ラッシングベルト、角当て、滑り止めマット、防水シート
80pt(約8,000円)
今回支出合計:730pt(約73,000円)
現在残高:
279,006pt − 730pt = 278,276pt
円換算目安:
278,276pt × 100円 = 約27,827,600円相当
続く




