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スキル四十(しじゅう)の手習いで神獣幼女を養います  作者: ELWOOD CRAFTWORKS


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第74話 白狐神と帰って来た群れ


 完成したばかりの南側道路の向こうで、ガランとドランが固まっている。


 2人が湖畔を出発した時、この道はまだなかった。畑の柵もなければ、小川を渡る幅6メートルの鋼橋もない。職人宿も、職人区画の風呂やトイレも、道路工事用の大きな機械も存在していなかった。


 俺たちは、振動マカダムローラ――ゴロゴロの上に乗ったままだ。


 右側の運転席に俺。左側の運転席にリーファ。中央にはユキ、ニナ、ミーシャ、トト。


 ユキの膝には、『撮影主任』のたすきを掛け、首から超小型カメラを下げたこびゃっこが座っている。


 ガランはマウンテンバイクへ跨ったまま、片足を道路へつけていた。ドランは両手でハンドルを握り、俺たちの下にある黄色い重機を見上げている。


「……ガラン」


 俺は右手を上げた。


「おかえり」


「あ、ああ。ただいま」


 普段なら落ち着いて答えるガランが、明らかに反応を遅らせた。ドランは、道路脇に停めてあるグイグイへ目を向ける。


「ヒカル」


「何だ?」


「あの黄色い鉄の塊は何じゃ?」


「ブルドーザーだ。地面を押して削ったり、土や砕石を均したりする」


「前の板で、地面を押すのか?」


「そうだ。愛称はグイグイ」


「地面をグイグイ押すからか!」


「ユキたちが分かりやすい名前を付けた」


 ドランが今度は、俺たちの乗るゴロゴロを見る。


「では、これは?」


「砕石や地面を締め固める機械。振動マカダムローラだ」


「地面ぶるぶるの様にか?」


「ああ。これはローラーが転がり広範囲の砕石の隙間を詰めて、沈みにくくする」


「愛称は?」


「ゴロゴロ」


「そのままじゃ!」


「分かりやすいだろ」


 ユキが胸を張る。


「グイグイして、ゴロゴロした」


「なるほど。説明だけなら、確かに分かりやすいのう」


「納得するんだな」


 ドランはゴロゴロの前輪へ触れようとして、一度手を止めた。


「動かんか?」


「大丈夫だ。エンジンは停止。駐車ブレーキを掛けてある。キーは俺が持っている」


「ならば大丈夫じゃな」


 ドランはしゃがみ込み、前後の鉄輪、運転席、振動機構らしき部分を覗き込む。


「こんな鉄の塊を、1人で動かしておるのか」


「ああ。ただし、グイグイとゴロゴロを同時には動かさない。片方を離れる時は、必ず停止、駐車ブレーキ、作業装置を地面へ下ろして、キーを抜く」


「ヒカルらしいのう」


「壊したら高いし、人を巻き込んだら取り返しがつかないからな」


 ガランは、完成した道路の向こうへ視線を移した。道路の先には、鋼橋がある。橋面にはアスファルト舗装はしていない。滑り止め模様の付いた鋼製の路面覆工板が並び、その両側をガードレールが囲んでいる。


 ドランも橋へ気づいた。


「……橋がある」


「ああ」


「小川の上に、鉄の橋があるぞ」


「見ての通りだ」


「わしがおらぬ間に架けたのか!」


「畑を作った成り行きでな」


「わしも工事をしたかった!」


「怒るところがそこか。勝手に大工事をしたことじゃなく、自分を混ぜろって話か」


「当然じゃ! あれだけの鉄材を使った橋など、王都周辺でも簡単には見られん!」


 ドランはマウンテンバイクを止めて、橋へ向かって歩き出した。

 

 橋に着くと早速、滑り止め付きの路面覆工板へ手を触れ、板の継ぎ目、固定部、高欄、橋台を順番に確かめていく。


「主桁は?」


「H形鋼を3本」


「こんな真っ直ぐで巨大な鋼材は見たことがない。鍛冶師のボルガが見たら卒倒するな。床は、この鋼板か」


「ああ。表面に滑り止めが付いている。雨や泥で足元が滑りにくい」


「こんな均一な滑り止めが……橋台は?」


「採石を何層にも固めた」


「ガラン。これは凄いぞ!」


「見れば分かる」


「おぬし、もっと驚け!」


「もう十分驚いている」


 ガランは道路、橋、畑、その奥に見える職人区画を順番に見た。


「ヒカル」


「何だ?」


「俺達が湖畔を離れてから、何日経った?」


「丁度20日だな。そこを確認するほど混乱してるのか?」


「俺の記憶では、職人を招く話を始めて、ガレージと食堂を作る予定だった」


「合っている。まあいろいろあってな、予定が変更になった」


「畑は?」


「作った」


「柵は?」


「作った」


「橋は?」


「作った」


「道路は?」


「今、第一期200メートルが完成した」


「あの2階建ては?」


「職人宿だ。隣に風呂と男女別トイレもある」


 ガランはしばらく黙った。


「もう質問しない方がよい気がする」


「賢明だ。全部説明すると夕食まで終わらない」


 こびゃっこがユキの膝から立ち上がる。


「では、撮影主任たるびゃっこが、帰還者への取材を――」


「飛ぶな」


 俺は、こびゃっこのたすきの端を掴んだ。


「なぜ止めるのじゃ!」


「2人は今、湖畔へ戻ったら景色が別世界になっていて、頭が追いついていない。顔へカメラを突きつけるな」


「帰還直後の率直な感想は、記録価値が高いぞ」


「ドランの第一声は『橋がある』だったが」


「十分、歴史的じゃ」


「何の歴史だよ」


 ◇


 記念撮影を終え、全員をゴロゴロから順番に降ろした。重機の点検と記録を済ませて、ガランとドランの荷物を工事事務所へ運ぶ。


 2人のマウンテンバイクは事務所横へ置いた。タイヤ、ブレーキ、チェーン、荷物の固定状態を確認する。


「大きな故障はないな」


「何度か転んだがの」


 ドランが腰を押さえた。


「何度だ?」


「帰路では3回ほどじゃ」


「つまり行きは、その倍以上転んだということか」


「撮影しておけば、転んでおらぬ場面だけ残せたのう」


 こびゃっこが言う。


「記録を都合よく編集する奴を、撮影主任にはできないぞ」


「演出と言うのじゃ」


「事故報告で演出するな」


 工事事務所には、湖畔の全員が集まった。ガランとドランは、入口で靴の泥を落としてから中へ入る。


 2人は、もう一度足を止め室内を見回す。長机。パイプ椅子。大型ホワイトボード。小型冷蔵庫。俺の設計机とノートパソコン。プリンター。壁際の充電棚。そして、壁掛け式のテレビモニター。


「ここも変わったな」


「元の作業小屋だ。職人が来るから、事務所兼休憩所にした」


「この黒い板は何だ?」


「映像や図面を映すテレビモニターだ」


「えいぞう?」


「動く絵だな。昨日、日本の風景を皆で見た」


 こびゃっこが胸を張る。


「びゃっこが映写主任を務めた」


「リモコンに触らせてもらえなかったけどな」


「役職への不当な権限制限じゃ」


「お前へ権限リモコンを渡すと、神社映像の途中で、原宿のクレープへ飛ぶだろ」


「文化学習には、食文化も重要じゃ」


「食べたいだけだろ」


 報告を始める前に、ミーシャが飲み物と菓子を運んできた。


「旅で疲れていると思ったので、冷たい飲み物です」


 机の上へ並べられたのは、スポーツドリンクとチョコチップクッキーだった。ガランとドランだけでなく、もちろん子供たちの分もある。


「ちょこれーと」


 ユキの耳が立つ。


「皆んなの分もあります」


 ミーシャが言う。


「ミーシャ、えらい」


「どういらしまして」


「すっかり定着したな。その返事」


 トトもクッキーを見つめている。


「くろい、つぶ」


「チョコレートが入ってるの」


 ミーシャが説明する。ニナはすでに1枚手に取り、厚みと割れ方を確認している。


「食べ物まで構造から見るのか」


「中まで、チョコレート」


「検査結果は良好だな」


「見えない部分、大事」


 ドランはスポーツドリンクを一口飲み、目を見開いた。


「甘いが、さっぱりしておる」


「汗をかいた時の水分と塩分補給用だ」


「酒ではないのか」


「報告前から酒を出すわけないだろ」


「王都から戻った者への歓迎が、健康的すぎぬか?」


「お前の肝臓へ配慮してるんだ」


 ガランもクッキーを一口食べる。


「王都でもチョコレートを試したが、これはまた違うな」


「焼き菓子へ混ぜてある」


「王も興味を示していた」


「セイラム王が?」


「ああ。その話も後でする」


 ガランは、荷物から書類を取り出して長机へ並べた。


 王命書。大使任命書。近衛騎士団派遣通知。銀狐族特使派遣の予告書。


 職人7人の名簿。Aランクハンターチーム《蒼岩の盾》の依頼書。そして、魔石箱の受領証と輸送書類。


「まず、王国への報告は全て完了した」


 事務所の空気が引き締まる。


「セイラム王へ、ユキ、ヒカル、守護神使の存在を報告した。レイクサーペント討伐、国境砦からの脱出、奴隷首輪の破壊、アルノ、リリア、ミーシャ、トト、ニナを保護した経緯も説明した」


 ユキはチョコレートクッキーを両手で持ったまま、真剣に聞いている。


「おうさま、ユキ、しってる?」


「ああ。御神名がユキであることも伝えた」


「さま、つけた?」


「王への報告では付けた。だが本人が、さま付けを嫌うことも説明してある」


「なら、よし」


「王への報告で、最初にそこを確認する神も珍しいな」


「ユキはユキ」


「それは王国にも伝わった」


 ガランは、レイシス皇国への親書が正式に提出されたこと、辺境伯代理ベルトラン・オルデンの預かり証明も王国へ渡したことを説明した。


 使節任務そのものは完了。


 神務院が白狐神の神気や隷属術式へ干渉する力を狙っている可能性。狐族の少女シオンが神務院へ連行されていること。オリエント王国も、シオンの所在確認へ協力する方針だという。


「シオン」


 ユキが小さく呟く。白い指が、クッキーを握ったまま止まっている。


「むかえにいく」


「ああ」


 俺は、ユキの頭へ手を置いた。


「そのための情報と準備を集める」


 場所が分からないまま、ただ敵地へ飛び込むことはできない。


 神務院の位置。警備。隷属術式。移動手段。救出後の退路。負傷者が出た場合の治療。ユキの神力を、どこまで使わせていいのか等、考えることは多い。怒りはあるが、殺意ではなく段取りだ。


「王国は、湖畔の里をオリエント王国の領土や庇護下として扱わない方針を決めた」


 ガランが続ける。


「白き神獣の里とオリエント王国は、対等な友邦として協力する。正式な盟約については、王国側だけで決めず、特使を派遣してユキとヒカルの意思を確認する」


「そこまで考えてくれたのか」


「セイラム王自身が、庇護を押しつけてはならないと述べた」


 その言葉には、素直に安心した。ユキは、誰かに所有される存在ではない。湖畔も、王国の都合で領土にされる場所ではない。


「それと、東風の牙は正式に湖畔常駐となった」


 ロクの耳が立つ。


「正式になったんすね」


「ああ。そして俺は、オリエント王国大使へ任命された」


「ガランが大使?」


 リーファが目を丸くした。


「断れなかったの?」


「確認はした」


「断る気があったのね」


「多少は」


 こびゃっこがチョコレートクッキーをかじりながら言う。


「大使ガラン。空撮担当びゃっこ。なんでも担当ヒカル。湖畔の役職も増えたのう」


「お前の役職は自称だ」


 ◇


「王国から、湖畔へ魔石の支援がある」


 ガランが受領証を俺へ差し出した。


「魔石って本当か?」


「ああ。ただ、ヒカルにとってどれだけの価値かは分からないが」


「分からない?」


「王国の保管庫から、大箱へ詰められた大小の魔石だ。価値が高いことは分かるが、ヒカルが使う魔石のポイントがどれほどになるかは、俺には判断できない」


「そりゃそうか」


 ガランたちの世界では、魔石は大きさ、魔力、種類、用途によって価値が変わる。俺のスキルが、それを何ポイントへ換算するかまでは分からない。


「魔石箱はどこにある?」


「湖東側に王国軍の中継地点がある。そこへ、王国側の騎馬伝令隊が運んで来る。予定どおりなら、今日あたり到着しているはずだ」


「湖東側か」


「ああ。湖畔からなら、ヒカルの車両を使えば当日中に往復できる距離だと思う」


 以前、湖畔から湖東側まではバギーで移動した。距離は約250キロメートル。道の状態にもよるが、朝に出れば、荷物を受け取って当日中に戻れる可能性はある。


「バギー2台で行くっすか?」


 ロクが聞く。


「いや」


 俺は首を横に振った。


「バギーは湖畔の巡回用と非常時用に残す。2台とも持ち出すと、何かあった時に湖畔側の移動手段が減る」


「では?あの箱型の車か?」


「いや、あのコミューターバスでは、足回りが不安だ。黒いピックアップトラックを出す」


 ガランとドランが同時に俺を見る。


「レイクサーペントを倒した時に、乗っていたやつか?」


「ああ」


「あの時は、直ぐに収納したんだよな」


「そうだな。日常では使わないよう収納してあった」


 荷台には、M2ブローニング重機関銃が搭載されている。もちろん、普段の荷物運搬で武装を見せびらかすつもりはない。


「荷台の機関銃にはカバーを掛ける」


「きかんじゅう?」


 ドランが聞く。


「レイクサーペント討伐に使った大型の武器だ。今回は使わない」


「あの轟音で火を吹く武器じゃな。しかしなぜ、荷物を運ぶ車へ武器が載っておる」


「元の用途が特殊だからだ。説明すると長い」


 まさかサバゲー趣味のマニアが乗っていた中古車です。と説明しても理解できないだろう。


「ヒカルの世界は、荷車まで物騒じゃのう」


「俺の世界の普通の荷車には付いてない。誤解しないでくれ」


「誰が行く?」


 ガランが尋ねる。


「俺とガラン」


「わしは?」


「ドランは湖畔に残って休め。橋と重機の見学で、明日まで忙しいだろ」


「うむ。そうじゃった」


「即座に納得したな」


「鉄は逃げぬが、見られる時に見ねばならん」


「旅の疲れもある。今日は休んで、ロクたちへ王都の近況を話してくれ」


「仕方ないのう」


 ユキが俺の服を掴む。


「おっちゃん、いく?」


「明日の朝だ。中継地点へ行って、魔石が届いていれば回収する」


「よる、かえる?」


 ユキが不安そうな顔になる。考えて見ると、ユキと出会ってから初めての別行動となる。


「予定どおりなら、その日のうちに戻る」


「ユキも?」


「長距離だし、荷物の受け取りが目的だ。ユキは湖畔に残ってくれ」


「むう」


「バギーも残す。何かあったら、ロクとリーファが動ける」


「ユキ、るすばんかんとく?」


「ああ。留守番監督を頼む」


「わかった、ユキ、やる」


「また役職を増やしたのう」


「こびゃっこ。お前が言うな」


 ◇


 俺は魔石を受け取ること自体には、少し迷いがあった。


「ガラン」


「何だ?」


「その魔石、本当に受け取っていいのか?」


「どういう意味だ」


「王国から大量の魔石を受け取って、さらに近衛騎士団まで派遣される」


 俺は書類へ目を落とした。


「レイシス皇国から見れば、湖畔がオリエント王国の庇護下に入り、白狐神の力を王国が囲い込んだように見えるんじゃないか?」


 ガランの表情が引き締まる。


「それを危惧しているのか」


「ああ。対等な友邦だとこちらが説明しても、相手が同じように考えるとは限らない」


 神務院は、ユキの力を狙っている。オリエント王国に先を越されたと思えば、さらに強硬な手段へ出るかもしれない。レイシス皇国が、国同士の対立を煽る材料として使う可能性もある。


「受け取らない方が、余計な敵対を招かずに済むんじゃないか」


「それでは、誰の費用で人を迎える」


「俺たちで――」


「そこだ」


 ガランが俺の言葉を遮った。


「職人7人。《蒼岩の盾》4人。近衛騎士団20人。銀狐族の特使と随員も来る。そしてレイシスから逃げて来た奴隷も、今後保護するかもしれない」


「分かっている」


「住居、食事、水、風呂、トイレ、医療、警備設備。全てをヒカルの魔石だけで用意するのか」


「そのつもりだった」


「それでは王国が、人員だけを湖畔へ送りつけ、生活費を全てヒカルたちへ負担させることになる」


「そう言われると……」


「魔石は、ユキやヒカルを買うための代価ではない。王国から派遣する人員が活動するための費用も含む支援だ」


「派遣される近衛騎士団に使うのか」


「ああ」


 ガランは近衛騎士団派遣通知を指した。


「近衛20人の宿舎、風呂、トイレ、食事設備。王国の人間を受け入れるための施設へ王国の魔石を使う」


「それなら、一方的に俺たちが支援を受ける形にはならない」


「王国は人員と資源を出す。湖畔は土地、建設、指揮、生活環境を提供する。双方が負担する協力だ」


「王国派遣者のための費用を、王国側も負担するわけか」


「そうだ」


 受け取らないことが、公平とは限らない。俺は何でも自分で背負いがちだ。だが、王国が派遣する人間の住居や食費まで、全て俺のポイントで用意することが、本当に正しいわけではない。


「分かった。受け取らせてもう」


 俺は答えた。


「ただし、用途を分けて記録する」


「用途?」


「王国支援分として、使い道を別の台帳へ残す。近衛騎士団や特使の住居、風呂、トイレ、食事設備、防衛設備。湖畔全体の共同設備へ使う場合も、その理由を書く」


「王国へ説明できるようにするのか」


「この世界でも帳簿は付けるだろ。王国も国の財務として、堂々と記録を残せる」


「成る程。王国への配慮でもあるな」


「ああ。明日受け取ったら、俺がポイントへ変える。その時に開始量を記録する」


 ◇


「近衛騎士団は、約1か月後に派遣される。ここへの到着は来月の下旬位になるだろう」


 ガランが書類を開いた。


「総員20人。副団長が直接指揮を執る。湖畔へ到着後は、ヒカルの総指揮下へ入るよう王命が出ている」


「俺の?」


「王国軍として湖畔へ駐屯するのではない。人員を友邦へ貸し出す形式だ」


「近衛20人を、工事の応援みたいに貸し出すのか」


「警備が主だ」


「分かってる。ただ、20人が増えれば、今の設備では足りない」


 現在の職人宿は、当面8人から12人程度の受け入れを想定している。


 職人7人と《蒼岩の盾》4人なら、人数構成に応じて調整できる。


 しかし、近衛20人まで入れば明らかに不足する。


「近衛側は、宿営の準備を持参するだろう」


「天幕で寝るつもりなのか?」


「ああ。大型天幕、寝具、炊事道具、保存食、簡易柵。到着したら、自分たちで宿営地を作るつもりだ」


「そこへプレハブ宿舎を用意したら?」


「面食らうだろうな」


「風呂と水洗トイレも付ける」


「さらに驚く」


「軍隊の野営地へ、急に社員寮と銭湯を出すようなものだな」


「せんとう?」


 ユキが尋ねる。


「皆で入る大きなお風呂だ」


「にく、ある?」


「風呂に肉を求めるな」


「きしも、おふろ?」


「ああ。仕事が終わったら入れるようにする」


「ごはんは?」


「近衛には、炊事担当もいる」


 ガランが説明する。


「20人全員が戦闘だけを担当するわけではない。炊事、物資管理、衛生、馬や装備の管理を担当する者も含まれるはずだ」


「騎士が料理するの?」


 ミーシャが聞く。


「野営食や大鍋料理を作る。短時間で大人数へ配る訓練もしている」


「ミーシャ、ならいたい」


「本人が教えてくれるなら、教わってもいい。ただし、ミーシャが近衛20人の料理係になるわけじゃないぞ」


「うん。おしえてもらう」


 リリアも頷いた。


「大量調理の段取りは、大型食堂にも役立ちそうです」


「騎士団の食事、洗濯、掃除を、リリアやミーシャへ押しつけない。近衛側にも当番を作ってもらう」


「軍隊なら、共同生活の当番には慣れている」


「なら話は早いな」


 俺はホワイトボードへ、次に必要な設備を書いていく。


 一、近衛騎士団用宿泊棟。

 二、近衛騎士団用風呂。

 三、男女別水洗トイレ。

 四、給水設備と排水設備。

 五、食事と炊事設備。


 既存の職人区画は、同型の宿泊棟を最大6棟まで増設できるよう、最初から造成している。


 給排水の分岐も用意済みだ。


「宿泊棟は、既存職人宿と同じ2階建てを追加する案が早い」


「男女の人数は分かっているのか?」


 ドランが聞く。


「まだ分からない」


 ガランが答える。


「近衛には女性騎士もいる。今回の構成は未定だ」


「未定か。一応、職人棟は一階を男性、二階を女性と分けるつもりだが、騎士団棟は、人数が判明してから間仕切りで変えるようにしよう」


「風呂とトイレは?」


「トイレは男女別のものを設置するが、風呂場も男女別で二つ設置しよう」


「近衛の宿泊棟を、職人区画へ並べるのか」


「職人区画北東側へ置こうと思う。職人の宿営棟が南東側にあるが、間を一棟分空ける」


「見張り所は別に決めるべきだな」


「ああ。警備配置は近衛騎士団が来てから相談しよう。ガランのチームと後から来るハンターチームとの警備分担も必要だ」


 食事設備については、さらに大きく見直す必要がある。


「食堂タープを2セット追加する」


「近衛用か?」


「ああ。現在の食堂タープと厨房タープも使い方を変える」


 俺は現在の配置図をホワイトボードへ書く。


「今使っている厨房タープから、調理設備を新しい厨房へ移す。そのあと、現在の食堂タープと厨房タープは、両方とも食堂用にする」


「誰が使う?」


「既存の湖畔メンバーと、先に来る職人たち。それに《蒼岩の盾》だ」


「近衛は?」


「新しく追加する食堂タープ2セットを基本にする。必要に応じて全員で一緒に食べることもできる」


「食堂、いっぱい」


 ユキが言う。


「人が増えるからな」


「ごはん、ちがう?」


「同じ厨房で作るから、同じ料理になる。その方が経済的だしな」


「むれ、おなじで、ごはんもいっしょ」


「まだ群れと決まったわけじゃないが、理解は近い」


 新しい厨房は、工事事務所の右隣に置いた倉庫と同じ、8坪のユニットハウスを使う。


「新厨房は、約16畳の8坪ユニットハウスだ」


 俺は必要設備を書き出す。給水配管。排水配管。シンク。手洗い。調理台。プロパンガス設備。換気扇。給湯器。床排水。冷蔵庫。食品庫。


「水回りの配管付きユニットを選ぶ。厨房用として、掃除しやすい床と壁にする」


「大きな冷蔵庫も要りますね」


 リリアが言う。


「ああ。業務用冷蔵庫を入れる。人数が増えると、既に使っている家庭用では食材の保管が追いつかない」


「ぎょうむよう?」


 ミーシャが聞く。


「店や大きな厨房で使う、大きくて丈夫な冷蔵庫だ」


「ミーシャも使える?」


「大人と一緒にな。中の置き場所も決める」


 生肉。魚。野菜。乳製品。作り置き。飲料。熱中症対策用品。全部を同じ棚へ無造作に詰めるわけにはいかない。


「土付き野菜を洗う場所と、調理する場所を分ける」


「お肉と野菜の包丁も?」


「ああ。まな板も分ける。大量調理になるほど、衛生管理は重要だ」


「べんりだけじゃ、だめ?」


 ニナが言う。


「安全と清潔も必要だな」


 大型食堂そのものは、いずれ屋根付きのウッドデッキとして本格建設する。だが、人員到着までには、おそらく間に合わない。


 だから、まず新厨房ユニットと追加食堂タープで対応する。


「買って置くだけでは駄目だ」


 俺は全員へ説明する。


「厨房を誰が清掃するか。冷蔵庫の温度を誰が確認するか。ガス元栓。給水。排水。食材在庫。近衛や職人側にも担当を決めてもらう」


「そうだな。ミーシャやリリアだけに管理させない方がいいだろう」


 ガランが言う。


「ああ。ニナへ冷蔵庫や電気の管理まで押しつけるのもなしだ。使った側が責任を持つ」


「むれ、おなじでも、おしごと、わける?」


 ユキが言う。


「そうだ」


 ◇


「ヒカル。ユキやこびゃっこ殿についての報告の際、王国の成り立ちについて、今回俺達も初めて聞かされたんだが、その話をしておきたい。」


 ガランが言った。


「王国の成り立ち?」


「オリエント王国が、なぜ白狐神を大切にするのか。その理由が、王城の古記録に残っていた」


 ガランは、王都で聞いた話を語り始めた。


 ◇


 かつて東方の森林と山岳地帯では、人族、獣人、エルフ、ドワーフなど、複数の氏族と小国が争っていた。


 土地。水場。鉱山。狩り場。食料。病気。冬を越すための物資。足りない物が多く、違いは争いの理由になった。


「その時代、白狐神の里から各地へ使者が送られた」


 ガランが、こびゃっこを見る。


「空を飛ぶ白狐。時には白い髪の女性へ変幻し、医師、農業技術者、治水に詳しい者を各地へ案内した」


「こびゃっこが?」


 俺は思わず聞き返した。


「ああ」


 ガランは続ける。


「力で争いを止めるのではなく、食料を増やし、水路を整え、病気を減らした。冬を越せる集落が増え、争う理由が少しずつ減った」


 やがて複数の氏族が盟約を結び、それがオリエント王国の原型になった。


 初代王には銀狐族の族長が選ばれた。現在の亜人共存の国は、異なる者同士が協力しなければ生き残れなかった歴史から生まれた。


 その始まりに、白狐神の里と、こびゃっこがいた。


 俺は、こびゃっこを見る。白いぬいぐるみのような小さな体。チョコレートクッキーを抱え、口の周りに欠片を付けている。


「お前……」


「何じゃ?」


「本当に、ものすごいことをしていたんだな」


「今さら気づいたのかえ?」


「医療や農業や治水を各地へ広げて、国がまとまる土台を作ったんだろ」


「びゃっこ一人の力ではないぞ。しらゆきや宗一郎、里の者たち、それぞれの氏族の協力があってこそじゃ」


「それでも、お前が各地を飛び回っていたんだな」


「うむ。あの頃は必死じゃった」


 こびゃっこは、珍しく誇張せずに答えた。


「人は腹が減れば争う。水がなければ争う。病で家族を失えば、他者を恨むこともある。神の名を唱えるだけでは、暮らしは良くならぬ」


「……立派だな」


 俺は素直に感心した。


「こびゃっこを、こんなに尊敬の目で見る日が来るとは思わなかった」


「普段から尊敬せぬか!」


「普段のお前は、無線で自作曲を全18番歌おうとしたり、映写主任のたすきを夜中に作ったりしてるだろ」


「それとこれとは別じゃ」


「昔は本当に立派な神使だったんだと思ってる」


「今も立派じゃ!」


 ユキも、こびゃっこを両手で持ち上げる。


「こびゃっこ、えらい」


「そうじゃろう、そうじゃろう」


「でも、くっきーついてる」


「そこは見なくてよい」


 ミーシャが布巾で口元を拭いてやる。こびゃっこは胸を張り、俺たちは少しだけ尊敬の空気に包まれた。


 ガランが、次の書類を出すまでは。


「感動しているところを申し訳ない。王城には、こびゃっこ殿…守護神使様に関する別の記録も残っていた」


「別の?」


「かつて、守護神使様は『白夜』と名乗っていたそうだ」


 こびゃっこの耳が、ぴくりと動く。


「白夜?」


 ガランは、古い壁画を写した金属板を机へ置いた。


 空を飛ぶ白狐。白い衣の女性。そして、中央の城壁に大きく書かれた漢字。――白夜参上。


「……おい」


 俺は、こびゃっこを見る。こびゃっこは視線を逸らした。


「何じゃ?」


「王城の壁に、これを書いたのか?」


「昔の話じゃ」


「書いたんだな」


「若気の至りじゃ」


「さっきまでの感動を返せ!」


 俺は思わず声を上げた。


「今の今まで、国を作る手助けをした立派な神使として尊敬してたんだぞ! 何で次の資料が王城への落書きなんだよ!」


「落書きではない。来訪記念じゃ」


「観光地の柱へ名前を彫る迷惑客と同じ理屈だ!」


「現在も歴史的聖遺物として保存されているそうだ」


 ガランが言う。


「後世が消せなくなっただけだろ。悪戯書きが国宝みたいになってるじゃないか」


「びゃっこの筆跡には、歴史的価値があるのじゃ」


「反省が一周して自慢へ戻った!」


 ユキが金属板を覗き込む。


「びゃくや、こびゃっこ?」


「昔の名前じゃ」


「しらゆきが、つけた?」


「いや」


 こびゃっこは、少し間を置いた。


「しらゆきが名付けたのではない」


「じゃあ誰が付けたんだ?」


「びゃっこが、自分で名乗った」


「何を参考にして?」


「笠間で巫女をしておった頃、地元の娘たちと知り合っての」


「娘たち?」


「夜になると、改造した単車を連ねて走る、威勢のよい女子たちじゃ」


 俺は嫌な予感がした。


「……暴走族のレディースか?」


「そのように呼ばれておったかのう」


「お前、巫女時代に暴走族と知り合ってたのかよ!」


「祭りの後、神社近くで単車の調子が悪くなった娘を助けたのが縁じゃ」


「神使が何をしたんだ」


「少し神力で、エンジンが掛かるようにした」


「神力をバイクの故障へ使うな!」


「困っておったからの」


「そこだけ聞けば人助けだけど、その後が嫌な予感しかしない」


「頭の娘と意気投合して、喫茶店でクリームソーダを飲みながら語り合ったのじゃ」


「巫女とレディースの頭が、喫茶店で何を語るんだ」


「女の生き方。仲間。意地。仁義。恋かのう」


「昭和のヤンキー漫画か」


 こびゃっこは遠い目をした。


「その者たちのチーム名が、《白夜》であった」


 俺は頭を抱えた。


「お前の昔の神使名、レディース暴走族のチーム名から取ったのかよ!」


「響きが良かったのじゃ」


「先代白狐神の神聖な命名かと思った感動まで返せ!」


「しらゆきにも、格好よいと言われたぞ」


「由来を説明したのか?」


「しておらぬ」


「そりゃ格好よい名前だと思うだろ!」


 ドランが腹を抱えて笑っている。


「こびゃっこ殿の不良口調は、そこが始まりか!」


「時折『気合を入れるのじゃ』『夜露死苦よろしく』などと言っておった理由も、それか」


 ガランまで納得した顔だ。


「お前のヤンキー暴走族ネタの根っこ、そこだったのか」


「娘たちは良い者たちじゃったぞ。祭りでは迷子を助け、困った老人の荷物を運び、仲間を大切にしておった」


「そうだったかもしれんが、良い話で暴走行為を帳消しにするな」


「びゃっこは単車で暴走しておらぬ」


「でもチーム名を神使名にしたんだろ」


「名誉構成員のようなものじゃ」


「巫女兼神使兼レディース名誉構成員って、属性が渋滞してるぞ!」


「白夜参上は、王都の者へ、びゃっこが来たと知らせるためじゃ」


「普通に門から入って挨拶しろ!」


「夜中だったのじゃ」


「朝まで待て!」


「暇じゃった」


「理由が中学生まで落ちた!」


「若気の至りじゃ!」


「その時、何百歳だったんだよ!」


「神使の年齢を、人の尺度で測るでない!」


「都合が悪い時だけ神使時間へ逃げるな!」


 ニナが金属板の文字を見て、淡々と言う。


「人の壁に、勝手に書く。だめ」


「正論じゃが、千年以上前の話じゃぞ?」


「今も、だめ」


「…はい」


 こびゃっこが小さく返事をした。ユキも頷く。


「こびゃっこ、かべ、かかない」


「白狐神直々の禁止令かえ」


 こびゃっこは、前足を腰へ当てた。


「今度セイラム王へ会ったら、謝ればよいのじゃろ」


「ちゃんと謝れよ」


「『先祖の城へ書いた文字が四百年以上保存され、誠に大儀であった』と」


「どこが謝罪だ!」


 ◇


 職人についても報告を受けた。大工棟梁グレゴール。屋根職人ミネット。内装職人エリオット。鍛冶師ボルガ。土木と水路を専門とする狐族兄弟、カイルとレイル。石工バドルの合計7人。


 さらに護衛として、Aランクハンターチーム《蒼岩の盾》4人が同行する。


 職人たちは1週間後に王都を出発し、馬車と荷車で湖東側まで移動し、湖畔への到着はさらに2週間ほど先になる予定だ。


「職人宿は間に合ったな」


「ああ。寝具や収納はこれからだが、建物自体はある」


「我々が出た時には、何もなかったはずなんだが」


「帰ってくる人数が分からないから、先に1棟だけ作った」


「そして、すぐ近衛用の2棟目か」


「空室期間が短すぎる。宿泊施設としては高稼働率だな」


「家賃を取るのか?」


 ドランが聞く。


「給金を払う訳じゃないし、もちろん取らない。掃除と共同設備の管理は自分たちでやってもらう」


「当然じゃ」


 俺は、今後の優先順位をホワイトボードへ書き直した。


 1、職人宿の寝具、収納。

 2、職人7人と《蒼岩の盾》4人の受け入れ準備。

 3、近衛騎士団用宿泊棟、風呂、トイレ、給排水。

 4、8坪ユニットハウス厨房と業務用冷蔵庫。

 5、近衛用食堂タープ2セット。

 6、バギー他車両用大型ガレージ。

 7、南側道路第二期。


「グイグイとゴロゴロの家、あと?」


 ニナが聞く。


「人が来る日程が分かったから、宿舎と厨房を先にする」


「グイグイ、そと?」


「いや俺のスキルで収納しておく」


「ひと、さき」


「そうだ」


 ユキがホワイトボードを見上げる。


「きしの、おうち、つくる?」


「ああ」


「ユキ、かんとく」


「頼む」


「ニナ、きろく」


「うん」


「こびゃっこ、かべ、かかない」


「なぜ、びゃっこだけ工事と関係のない注意事項なのじゃ!」


「工事現場の壁が増えるから、重要だな」


「びゃっこを要注意人物へ分類するでない!」


「王城で前科があるだろ」


「歴史的芸術活動じゃ!」


「感動を返せって言ったよな!」


 ◇


 報告が終わる頃、外は薄暗くなっていた。職人区画のポールライトが、1基ずつ点灯する。ガランとドランは、事務所の窓から外を見た。


「灯りまで増えたな」


「ああ。ここの区画と職人区画の外周に8基。外階段には人感センサーライトがある」


「南門側から、この灯りが見えた」


 ガランが静かに言う。


「帰る場所が増えたと思った」


「ユキ、むれの、あかり、ふえた」


「そうだな」


「近衛騎士団の灯りも増えるのじゃな」


 こびゃっこが言う。


「そうだな」


「きしも、かえる?」


 ユキが尋ねる。


「湖畔で仕事をしている間は、宿舎が帰る場所になる」


「まってる、あかり?」


「ああ」


 ユキは満足そうに頷いた。


 明日は、ガランとピックアップトラックで湖東側の中継地点へ向かう。もちろん機関銃にはカバーを掛ける。魔石箱が予定どおり届いていれば、その場で受領し、当日中に湖畔へ戻る。


 バギーは2台とも残す。巡回、救急、非常時の移動手段を、魔石回収だけのために減らさない。


「こびゃっこは留守番だ」


 俺が言うと、こびゃっこの耳が立った。


「なぜじゃ!」


「空撮は必要ない」


「撮影主任に仕事をさせぬ気か!」


「湖畔でドランが橋を見て騒ぐ様子でも撮ってろ」


「わしを絵にするのじゃな!」


「橋の解説をするドランは、職人用教材になるかもしれない」


「それなら協力するぞ」


「乗るのかよ」


 ユキが、こびゃっこのたすきを指す。


「こびゃっこ、びゃくや?」


「今はこびゃっこじゃ」


「さつえいしゅにん?」


「そうじゃ」


「れでぃーす?」


 こびゃっこの動きが止まった。


「ユキ、その言葉は忘れてよい」


「びゃくや、さんじょう?」


「それも今はよい」


「かべ、かかない」


「もう分かったのじゃ!」


 こびゃっこが大きく息を吐く。


「ふう……」


「びゃっこのためいき?」


 ユキが尋ねる。


「黒歴史系じゃ」


「自分で黒歴史と認めてるじゃないか」


「若気の至りじゃ!」


「今も至りまくっているがな」


 事務所に笑い声が広がった。王国からの支援を受け取る。ただ受け取るのではない。何のために使うのかを決め、記録を残す。


 王国から来る者の住居。風呂。トイレ。厨房。食堂。湖畔だけに負担を押しつけず、王国だけに頼りもしない。双方が出せる物を出し、必要な場所を一緒に作る。それが、庇護されるのではなく、友邦になるということなのだろう。


 道ができた次は、人を迎える場所を整える。明日はまず、そのための魔石を受け取りに行く。予定どおり届いていれば、日が沈む前には、この湖畔へ戻れるはずだ。


 ◇


【第74話・収支報告】


異世界生活61日目

日付:五の月20日

オリエント王国歴952年


開始残高:279,006pt


今回の購入:


・なし


今回支出合計:0pt(0円)


現在残高:


279,006pt − 0pt = 279,006pt


円換算目安:


279,006pt × 100円 = 約27,900,600円相当


続く

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