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スキル四十(しじゅう)の手習いで神獣幼女を養います  作者: ELWOOD CRAFTWORKS


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第38話 白狐神とおひさまの板


 異世界生活13日目の朝。湖畔拠点は、昨日にも増して工事現場だった。


 風呂、トイレ、洗濯室、倉庫ができた。水も出る。だが、まだ仮設だ。仮設のまま放っておくと、雨風と俺の胃が悲鳴を上げる。


「今日は電源まわりと、屋根まわりだ」


 俺が言うと、ユキが青ライン入りヘルメットをかぶって胸を張った。


「でんげん、まわり」


「そう。風呂ユニットと洗濯室と倉庫の屋根に、ソーラーパネルをちゃんと固定する架台を作る」


「おひさまのいた?」


「ああ。おひさまの板だ」


 ニナは黄色ヘルメットに、赤いワゴン台車を引いている。昨日まではランタン係のワゴンだったが、今日は昨日工事で使った杭や水糸、余った材料を回収し積んでいた。


「ワゴン、かなり役に立つな」


「荷物、運ぶ。べんり」


「その通り」


 するとドランがじっとワゴンを見た。


「ヒカル。ワシにも何か運ぶ道具はないのか」


「あるぞ。そういえば、この世界に工事用の荷車はあるのか?」


「ある。だが小さな工事用は二輪でな、安定はするが狭いところで取り回しにくい」


「なるほど」


 俺は一輪車を購入して出した。工事現場で土や砕石を運ぶ、あの一輪車だ。


「これは一輪車。前に1つだけ車輪があって、狭い場所でも曲がりやすい」


 ドランの目が輝いた。


「おお……! これは小回りが利くな!」


「ただし、バランスが悪いとひっくり返る」


「面白い!」


「面白さで評価するな。安全第一だ」


 ユキが即座に指を差した。


「ドラン、ひっくりかえらない」


「分かっておる、監督!」


 完全に現場監督が機能している。俺の言葉より強い。肩書きはすごい。


 倉庫内には作業台を置いた。電動ドリル、インパクトドライバー、高速切断機、電動丸ノコ、ベビーサンダー、金切りノコ、クランプ、メジャー、水平器。工具が並ぶと、ニナとドランの呼吸が少し荒くなる。


「2人とも、落ち着け。ご褒美を前にした犬みたいな顔をするな」


「こ、これは犬のご褒美としては贅沢だろう」


「ニナ、ドワーフだけど、犬好き」


「斜め上の反論が来た」


 まず単管パイプの説明だ。


「これは単管パイプ。足場、柵、物干し、バリケード、屋根の骨組み、いろいろ使える」


 ドランが短い単管を持つ。


「軽いが丈夫だな」


「組み合わせるには、このクランプを使う。これは直交クランプ。直角に固定する。これは自在クランプ。角度を変えられる」


 ニナがじっと見ている。


「直角。角度。組む」


「そう。今日は練習用の短い単管で組んでみる」


 俺はドランとニナに作業ベルトを渡した。腰道具入れと工具差し付き。ドランには普通サイズのラチェットとペンチ。ニナには短いが実用的なラチェットと小型ペンチ。


 ニナは自分の工具を両手で持ったまま固まった。


「……ニナの?」


「ああ。ニナの工具だ。ただし勝手に使わない。俺かドランが見ている時だけ」


「ニナの、工具」


 声は小さい。だが背中から喜びが噴き出している。黄色ヘルメットが少し誇らしそうに見えた。いや、ヘルメットは誇らしがらない。たぶん。


「ラチェットは、こう回す。カチカチ音がするだろ」


 カチカチ。ニナの目が光った。


「音、いい」


「そこか」


「ボルト締まる。べんり」


「そこは正しい」


 練習が始まると、ニナは短い単管を組み合わせて、小さな四角い枠を作った。次に三角。次に謎の台。レゴブロック感覚である。


「ニナ、それは何だ?」


「小さい屋根」


「屋根か」


「こびゃっこ用」


 ユキが即座にこびゃっこを抱きしめた。


「こびゃっこの、いえつくる?」


「まだ練習だ」


「でも、かわいい」


「現場監督、工事予定を勝手に増やさない」


「むー」


 ドランはクランプを、かなり気に入った様だ。


「これは良い! 穴を開けずに固定できるのか!」


「そうだ。仮設に強い」


「まさに工事の魔法具だな!」


「魔法ではないけど、便利ではある」


 その時、ニナが単管を持ち上げて運び始めた。俺は慌てる。


「ニナ、それ重くないか?」


「だいじょうぶ」


「いや、無理するな」


 ドランが笑った。


「ヒカル、ドワーフを甘く見るな。子供でも力は強い。ニナくらいなら、人族の成人女性くらいの握力と持ち上げる力はあるぞ」


「本当か?」


 ニナは短い単管を、片手で軽々とワゴンに積んだ。


「持てる」


「……マジか」


「マジとは何だ?」


「俺の世界の驚き表現だ」


 ドランが胸を張る。


「ドワーフの子は、岩と鉄と一緒に育つからな」


「説明が雑に強い」


 午前中は、各屋根用ソーラーパネル架台の部材加工で終わった。電動工具で穴を開け、L型鋼材を切り、仮組みする。風呂ユニットと洗濯室用は小さめ、倉庫用は大型ポータブル電源3台分のパネルを載せる予定だ。


 ユキは真剣な顔で頷いた。


「おひさまのいた、ふえる」


「ああ。電気が増える」


「でんき、えらい?」


「かなり偉い」


「じゃあ、おひさまも、えらい」


「それは昔から偉い」


 昼前、俺はトイレに充電式ランタンを常備することにした。トイレにはまだ電気がない。夜に真っ暗な仮設トイレは、普通に怖い。俺でも嫌だ。


「ニナ、回収先が増える」


「どこ?」


「トイレのランタンも朝回収。充電して、夕方戻す」


 ニナは少し考え、頷いた。


「道順、増えた」


「大丈夫か?」


「べんりなワゴンある。大丈夫」


 いい顔で言う。完全に係の顔だ。


 午後はアンティーク街灯風のソーラー式ポールライトを増設した。食堂テント周辺、ユニットハウス群、水回り、倉庫エリアに数本ずつ。まだ本格的な街灯ではないが、夕方には湖畔に小さな灯りの道ができる。


 リリアがそれを見て、ぽつりと言った。


「夜に、道が見えるのですね」


「ああ。暗いと不安になるからな」


 ミーシャが小さく頷く。


「灯りがあると、帰る場所みたい」


「そうだな」


 ユキが胸を張った。


「ここ、むれのばしょ」


 その言葉に、誰も反論しなかった。



【収支報告】


異世界生活13日目・午前〜午後前半

日付:四の月2日・第二曜日

オリエント王国歴952年


開始残高:764,366 pt


今回の購入:

・ソーラーパネル架台用L型鋼材、単管パイプ、クランプ、固定金具、配線保護材 2,100 pt(約210,000円)

・倉庫内作業台、工具収納箱、電動工具追加部品、金切りノコ替刃、保護メガネ 1,250 pt(約125,000円)

・ドラン用一輪車、予備軍手、作業用ロープ 320 pt(約32,000円)

・ドラン用作業ベルト、工具差し、ラチェット、ペンチ 260 pt(約26,000円)

・ニナ用小型作業ベルト、短柄ラチェット、小型ペンチ、練習用短尺単管 230 pt(約23,000円)

・トイレ常備用充電式ランタン、予備充電ケーブル 180 pt(約18,000円)

・アンティーク街灯風ソーラー式ポールライト増設分 1,800 pt(約180,000円)


今回支出合計:6,140 pt(約614,000円)


現在残高:

764,366 pt − 6,140 pt = 758,226 pt


円換算目安:

758,226 pt × 100円 = 約75,822,600円相当


続く


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