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9.新しい武器

「レイガル、ちょっとこっちに来て」


ある朝、僕は中庭でレイガルを呼び止めた。

彼は相変わらず僕の数歩後ろを音もなく歩き、影のように控えている。その腰には、僕が森で彼を拾った時に持っていたボロボロのナイフが一本あるだけだった。


「はい、ルミナス様。何か御用でしょうか」


「君、その体格でそんな小さなナイフ一本じゃ、せっかくの力がもったいないでしょ? ……だから、これ」


僕は虚空に手をかざした。


僕の魔力が空中で結晶化し、眩い光の粒子となって渦巻く。その中心から、重厚な音を立てて「それ」が現れた。


それは、深い闇を溶かし込んだような漆黒の大剣だった。

刀身には青白い魔法回路が血管のように走り、柄には獣人の大きな手でも握りやすいよう、滑り止めの特殊な革が巻かれている。


「……っ、これは」


レイガルが息を呑む。

彼が震える手でその柄を握り、軽々と持ち上げた。普通の人間なら持ち上げることすら不可能な重量のはずだが、ガタイのいい彼が持つと、まるで体の一部であるかのように馴染んで見える。


「ただの大剣じゃないよ。君の魔力に反応して重さを変えるし、何より、絶対に折れない。……あと、これもお揃いで」


続けて僕は、彼の体に合わせた漆黒の軽装鎧を構築した。

動きを邪魔しないよう関節部分は柔軟でありながら、ドラゴンの鱗をも弾く硬度を持たせている。


「……このような至宝、私には過ぎたるものです。ルミナス様、これほどの力を、私のような者に……」


「いいんだよ。君は僕の『盾』になるって言っただろ? 盾が壊れたら、僕が困るんだ」


僕は彼の胸当てを軽く叩き、精悍な顔つきを見上げて笑った。


レイガルはしばらくの間、自分の掌と新しい武装を見つめていたが、やがて力強く大剣を背中の鞘に納めた。その瞳には、主から授かった信頼の重さに応えようとする、凄まじいまでの決意が宿っている。


「……この命、この武装と共に。貴方の敵を一人として、この先へは通しませぬ」


重厚な漆黒を纏った彼の姿は、もはや「奴隷」の面影など微塵もなく、誰が見ても恐れおののくような、気高き「黒騎士」そのものだった。

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