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8.信頼

レイガルを城に迎えてから、数日が過ぎた。

僕は彼に「どこへ行ってもいいし、何をしてもいい」と伝えていた。けれど、彼は城を出て行くこともなく、かといって贅沢に浸るわけでもなく、静かに僕の動向を観察し続けていた。


ある日の夕暮れ。僕はバルコニーで沈みゆく夕日を眺めていた。

背後に気配を感じて振り返ると、そこには以前よりも肉付きが戻り、より一層精悍さを増したレイガルが立っていた。


「……レイガル。まだ、この城に飽きないのかい?」


僕が問いかけると、彼は僕の数歩手前で足を止め、その場に静かに膝を突いた。奴隷として無理やり跪かされていた時とは違う、彼自身の意志による動作だ。


「……ルミナス様。この数日、貴方の行いを見てきました。貴方は私から何も奪わず、何も求めなかった。……それどころか、私が忘れていた『自由』というものさえ、当然のように与えてくださった」


レイガルは顔を上げ、その鋭くも澄んだ瞳で僕を真っ直ぐに見据えた。


「私は今まで、誰かに利用されるためだけの道具でした。ですが、もし許されるのなら……この先は、私の意志で、貴方の傍にいたい。この命、貴方の盾として、あるいは剣として、捧げることをお許しいただけますか」


その言葉には、かつての疑念は微塵もなかった。

彼は、僕が「退屈しのぎ」で彼を助けたことも、圧倒的な魔法の力を持っていることもすべて理解した上で、それでも僕という個人を信じることに決めたのだ。


「……剣なんていらないよ。僕、自分である程度守れるしね」


僕は苦笑して彼に歩み寄り、その逞しい肩に手を置いた。


「でも、話し相手なら歓迎するよ。この城、一人でいるには広すぎるんだ」


レイガルは一瞬、呆気に取られたように目を見開いたが、やがてその精悍な顔に、初めて微かな、そして信頼の籠もった笑みを浮かべた。


「……承知いたしました。貴方が飽きるまで、どこまでも共に行きましょう。我が主」


こうして、僕の静かな領地に、初めての「家族」のような、けれどそれ以上に固い絆で結ばれた相棒が加わった。

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