22.仲良く
食後の腹ごなしに、ルミナスは城の裏手に広がるクリスタルガーデンへと足を進めた。
背後には、もはや「ルミナス護衛(兼・監視)団」と化した三人が、相変わらず火花を散らしながらついてくる。
庭園の中央にある、巨大な魔力結晶が夕日に照らされて輝いている。
ルミナスはただ「綺麗だなあ、あの上に座ったらひんやりして気持ちよさそう」と思い、ふわふわと浮いて結晶の頂上に座り込んだ。
「……おお。見てみろ、あの神々しいお姿を」
ゼノスが、陶酔した表情で膝をつく。
「あの結晶は、かつて魔王陛下が世界の均衡を保つために設置した魔力の心臓。それをあのように軽々と支配されるとは……。やはりあの方は、我が主の魂を継ぐ御方に相応しい」
「……貴様の昔話はどうでもいい」
レイガルもまた、鋭い視線をルミナスの背中に注いでいた。
「主様があそこに座られたのは、この城全体の魔力回路を再構築し、我らへの加護を強めようとしてくださっているのだ。なんと深い慈悲……」
「いや、絶対違うだろ」
アルフレッドだけが、頭を抱えてツッコミを入れた。
「あいつ、ただ『椅子にちょうどいい』くらいの顔してるぞ!? お前ら、さっきからあいつの行動を深読みしすぎなんだ!」
頂上で足をぶらぶらさせているルミナスは、三人のヒソヒソ話を聞きながらあくびを噛み殺していた。
(……なんかみんな難しい顔して話してるなあ。魔王がどうとか、加護がどうとか。僕はただ、ここがひんやりしてて、眺めがいいから座ってるだけなんだけど……。まあ、みんながやる気になってるなら、それでいいか)
ルミナスにとって、ゼノスが自分を「かつての主」と重ねるのも、レイガルが自分を「救世主」として崇めるのも、よくわからない。
「ねえ、みんなー! そこから見る夕日、すごく綺麗だよ! アルフレッドもこっちおいでよ、重力魔法で浮かせてあげるから」
「断る! 私は掃除の続きがあるんだ! ……というか、気安く浮かそうとするな、心臓に悪い!」
アルフレッドが叫ぶと、レイガルとゼノスが同時に彼を睨みつけた。
「主様の誘いを断るとは……貴様、自分がどれほどの特等席を譲られたか分かっているのか?」
「……アルフレッド殿。貴様が登らないなら、私が主様の『足置き』としてあそこへ行くが、構わんか?」
「構うに決まってるだろ! レイガル、お前はもうちょっと私の事を大事にしろ!」
結局、ルミナスの「おいでよ」という一言のせいで、レイガルとゼノスによる「誰が主の隣(あるいは足元)に相応しいか」という登攀レースが始まってしまった。
「……だめだ。この城にいると、何が正義で何が異常か分からなくなる……」
アルフレッドは、結晶を素手で登り始めたレイガル(執念)と、影を使ってワープしようとするゼノス(チート)を見上げながら、深い、深い溜息をついた。
ルミナスは、そんな喧騒をBGMに、またウトウトと微睡み始める。




