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21.料理

「……ふわぁ、よく寝た。なんだか、すごくお腹が空いちゃったな」


窯の上でようやく目を覚ましたルミナスが、伸びをしながら呟いた。その瞬間、周囲で「主様の目覚め」を虎視眈々と待っていた三人の目が、獲物を狙う獣のごとく鋭く光る。


「主様! すぐに、我が故郷に伝わる最高級の肉料理を!」

「……主様、寝起きの胃には、私が丹精込めて煮込んだ滋養強壮のスープが最適です」



結局、誰が作るかで折り合いがつかず、ルミナスの「じゃあ、みんなで作ってよ。一番美味しいのを食べるから」という無邪気な提案により、料理対決が開幕した。


1. レイガルの「忠誠の肉料理」

レイガルは、しなやかな動作で巨大な包丁を振るい、新鮮なジビエを捌いていく。

(主様は、最近少しお疲れのようだ。ならば、体力がつく赤身の肉を、最高級の香草で……)

精悍な顔立ちをさらに険しくし、一太刀ごとに「ルミナス様への愛」……もとい「忠誠」を込めて肉を叩く。その音はもはや調理ではなく、鍛冶屋のそれだった。


2. ゼノスの「魔界風・至高のドルチェ」

「ふん、朝から肉など、主様の繊細な味覚には野蛮すぎる」

ゼノスは指先から魔火を出し、怪しく光る果実を煮詰めていた。数百年前にルミナスが「これ、美味しいね」と言った記憶だけを頼りに、魔界の禁断の果実を、現代の味覚に合わせて調律していく。


3. アルフレッドの「聖騎士の家庭的シチュー」

「……なぜ私が、捕虜なのに料理を……」

愚痴りながらも、アルフレッドは野菜を丁寧に刻んでいた。

(だが、この二人(化け物)の料理は、見た目からして殺意が高すぎる。カイン王子のためにも、せめて私がまともな『人間の食事』を作らねば……)

彼だけが唯一、この場で「常識的な美味しさ」を追求していた。



テーブルに並んだのは、三つの皿。

レイガルの「激熱・魔獣のステーキ(血のソース添え)」。

ゼノスの「深淵の果実と銀河のソース(食べると幻覚が見える)」。

アルフレッドの「白銀風・具だくさんホワイトシチュー」。


「どれも美味しそうだね。じゃあ、いただきます」


ルミナスがまず、アルフレッドのシチューを一口運ぶ。

「……ん、優しい味だ。なんだか安心するね」

「っ、……光栄です」

アルフレッドが少し顔を赤らめる。その瞬間、横からレイガルとゼノスの殺気がアルフレッドを貫いた。


次に、レイガルの肉。

「わあ、力が湧いてくる味だ。レイガルらしいね」

「……ありがたき幸せ……っ!」

レイガルが感極まって、膝をつきそうになる。


最後に、ゼノスのドルチェ。

「あ、これ。食べたことある味だ。懐かしいな」

「……覚えていてくださいましたか。我が魂が報われます」



「うーん、どれも甲乙つけがたいけど……」

ルミナスは、三人の期待に満ちた(あるいは殺気立った)視線を浴びながら、カインが持ってきた一切れの「普通のパン」を手に取った。


「カインが焼いてくれたこのパンを、アルフレッドのシチューに浸して、レイガルの肉を挟んで、ゼノスのソースをつけて食べるのが一番美味しいや!」


「「「…………!!」」」


三人の努力が、カインの「普通のパン」によって一つにまとめられてしまった。

「仲良く協力して作ったみたいで、すごく美味しいよ!」と笑うルミナスの前で、男たちは「協力などした覚えはない……」と内心で毒づきながらも、主の笑顔に免じて、一時休戦を余儀なくされるのだった。


「……次は、絶対に私一人の皿で、主様を満足させてみせる」


レイガルの独占欲は、胃袋の攻略という新たなステージへと突入していた。

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