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2.転生

「…………っ」


次にまぶたを叩いたのは、暴力の痛みではなく、突き抜けるような青空の眩しさだった。


(........空だ。)


前世の、あの狭い天井じゃない。

視界を埋め尽くすのは、どこまでも透明で、吸い込まれそうなほど高い青。

頬をなでる風は、若葉と土が混じり合った柔らかな匂いがした。


「気持ちいいなぁ。ここは」


自分が死んでしまったこと、そしてたぶん生まれ変わったこと、それよりもまず、全身で太陽の光を浴びたかった。初めて浴びる太陽の光は暖かくて、まぶしくて、不自由だった僕の過去を白く塗りつぶしてくれるようだった。


「おやぁ。えらい大物さんがこんなところで日向ぼっこかい。」


さらり、と草をかき分ける音が聞こえた。

見上げるとそこには一人の老人が立っていた。


老人は僕を一目見ると当然のように僕をひょいと抱き上げた。


前世で僕を殴り、縛り付けた「親」の震えるような怒気とは正反対の、日向のような温かさ。


「私はカーム・アイテール。君の名前は……そうだね、ルミナスにしよう。独りが寂しければ、私の苗字を名乗るといい。……今日からよろしくね、ルミナス」


「ルミナス......」


カームが僕に対してそういう声は、驚くほど穏やかだった。

会って間もない僕に向かって名前を付けてくれ、温かく呼びかけてくれ、おっとりと笑いかけてくれた。ただそれだけのことなのに一度も与えられることのなかった「当たり前のやさしさ」が、僕にしみこんでいった。


「.............え?なんで涙が...........」


自分でも知らないうちに涙が頬を伝った。

前世では泣けば叩かれた。だから泣き方なんて忘れらはずだったのに。

カームの胸に顔を埋めると涙で顔がぐしゃぐしゃになって、止まらなくなった。


「おやあ。お腹が空いたかな? それとも、少し怖かったかい? 大丈夫だよ、大丈夫だ。……よしよし、たくさん泣くといいよ」


カームは僕がどれだけ泣いても、初対面の僕に対して困った顔ひとつせず、ただ大きな手で背中をゆっくりと叩き続けてくれた。


(ああ、僕は……僕はもう、自由なんだ)


温かい腕の中で、僕は初めて、だれにも怒られることなく、自分自身のために泣いた。


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